東北道を北に走っていた。
そろそろ那須塩原を過ぎる頃だったと思う。
にわかに霧が出てきたので速度を落としたのだ。
少しして霧が晴れたのでそのままぼんやりと走っていた。
そのうちに、変なことに気づいた。
一時間くらい走っても景色が変わらない。
あれ、インターチェンジ見過ごしたか?
いまになってカーナビで現在位置を見る。
「うそーん」
南極の山脈の中を走っていた。
バカにしてるのか?
「ああ、GPSがバグってるのか」
そう納得することにして、正面に向き直るが……。
「どこなんだろうなぁ……」
自分がどの辺りを走っているのかが全くわからなかった。
さらに一時間くらい走った。
出口はない。
「いやもうどこでもいいから下りたい!」
恐怖とまではいかない不安でいっぱいだった。
すると、前方に出口の標識が見えてきた。
「おっしゃ、これで勝つる!」
その出口名は……。
『←美少女』
なんだこれ??
いや、下りたいけれど若干の自制心が邪魔した。
「うん、見送ろう」
ウィンカーを戻して直進した。
するとまた出口の掲示板が見えた。
『←きさらぎ』
いやいやいや、ムリムリ!
こんなヤバそうな所に下りる勇気はねぇよ!
安定のスルーだ。
するとまた出口の掲示板が見えた。
『←天国』
誘惑はある。
正直、心惹かれる。
でも、天国ってことは……。
たぶん、おそらく、きっと死ぬんだよね?
血の涙を流してスルーだ。
すると、また出口の掲示板が見えた。
『←異世界』
本命キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
いや、しかし最近の異世界は概ねヒドイ。
リバーシ、マヨネーズ特需も潰されていることも多い。
スローライフはできないし、悪役令嬢もすでに焼野原。
先行者受益は終わったのだ。
ため息をつきながらスルーだ。
すると、また出口の掲示板が見えた。
『←つらい現実』
行きたくない。
ぶっちゃけ行きたくない。
いや、戻 り た く ない。
スルーか?
スルーしようか?
そう思った俺が、ずっと向こうに見えた『標識』を見るや否や、ハンドルを左に切った。
キキキィィィー!
アスファルト、タイヤを切りつけながら、暗闇走り抜ける。
間一髪で、間に合った。
そうして気づけば、西那須野塩原インターチェンジを通過していた。
何だったんだろう……。
まあいいや。
早く帰って寝よう……。
◇◆◇
次の日。
出社すると、隣の席の限界オタが、美 少 女 になっていた。
「なん……だと?」
限界オタと知らなかったら、きっと俺は……。
いや、不毛な想像は捨ててしまおう。
呆然とする俺に、彼(いや彼女?)が説明する。
「ぐふふ、昨日の帰りに『美少女』で下りたらこうなったでござるよ」
こいつ……勇者だったのか。
俺も昨日のことを話すと限界オタクが疑問を口にした。
「ところで、まっすぐ行った先はどこでござったか?」
「それ聞く?」
「気になって夜しか眠れないでござる」
「ん? ああ、書いてあったのはな……」
『←実家暮らし(電気ガス水道なし)』
「……それは、つらいでござるな」
「わかってくれるか」
つらいのだ。
つらたんだ。
しかし何だ、俺の選択……たぶんあってたよね?
彼を見ていると……くっそ可愛いな!
俺は、若干の疑問がぬぐえないのだった。
