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「人でなしな神 可奈恵の報告書 4 神になる女」について

 わたしはYouTubeで犯罪解説の動画を聴くのが大好きです。ときには犯罪者に共感し、ときには犯罪者へ憤りを覚え、ときには犯罪を未然に防げなかった社会への疑問を感じることもあります。
 この物語を書こうと思ったきっかけは、毒物カレー事件についての解説動画です。林真澄さんの冤罪説が近年広まっているようです。興味本位な気分ではなく、わたしも本当に林真澄さんの解放を願い、何かできることはないかとまずは考えました。
 YouTubeの霊視系チャンネルも好んで聴いています。気に入っているものが二つあります。わたしはそういうチャンネルの言うことを信じます。事件を霊視する動画には特に強い関心があります。いくつか同じ事件を扱ったものを見比べると異なる結果が出るのも興味深いです。
 しかし林真澄さんに関しては、二つとも別の人物、しかも同じような人物が真犯人だと霊視もされています。わたしはそれも信じました。
 でも、ドキュメンタリーを書くつもりはありません。なぜなら、そこには正確性が求められるからです。自分には向きません。たくさんの書物を読んで調べなければなりません。
 なので、これまでYouTubeで関心を持った事件をいくつも組み合わせ、この話を創りました。
 ベースになるのはもちろん毒物カレー事件です。
 この物語を創るに当たって次に浮かんだのが、名張毒ぶどう酒殺人事件でした。あれも冤罪、真相不明とされています。
 そして、この話の構想を練っていたときに強く関心を持っていくつも動画を聴いていた事件が……何だったんだろう? ともかく「パラコート」という農薬を用いた事件――自動販売機の缶ジュースに混入させた未解決事件――もヒントにしました。
 また、「可奈恵シリーズ」の舞台を奈良県桜井市の南に隣接する「桜奈市」という架空の場所に設定したことを活かすため、桜奈市でも特に山間部である「加茂地区」という地域を創りました。
「加茂地区」の参考にさせてもらったのは、津山三十人殺しです。横溝正史先生作品のような陰惨さを出したかったのですが、わたしの意外と乾いた文体ではそのような雰囲気を出すことはできませんでした。まあいいや。
 津山事件を思い出したことから、この物語へも夜這いの風習を取り入れました。そのことがあとになって、この物語へ大きな影響を及ぼすことになるとは、実は着想の段階では考えていませんでした。
 霊視チャンネルで、毒物カレー事件の真犯人は、林真澄さんとは血縁関係のないかたと霊視されていることは、お伝えしておきます。誤解されませんように。
 ただ、林真澄さんの娘さんが実際に無理心中をしたという悲しい事実については知っておいてもらいたいと思います。
「神になる女」は、林真澄さんのご経験を元にはしていますが、わたしがご自身を存じ上げているわけではないので、ここまで高潔なかたかどうかもわかりません。
 ヒロインの性格形成の参考にしたのはむしろ、近年冤罪が認められた元死刑囚、袴田(はかまた)事件、袴田巌さんのようにも思います。今になって袴田事件も意識していたことを思い出しました。
 冤罪事件や加害者家族の保護についてなど、自分の手に余るような題材を詰め込んでしまったようにも思いますが、「知って欲しい」「考える端緒になって欲しい」。そういう思いで創ったものです。
 よろしくお願いします。

https://kakuyomu.jp/my/works/16818622177274133542/episodes/16818792440170755469

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