二桁ランクインの第76位!
「⚓エレーナ少佐クロニクル 第4~9章」
第5話(1) 身上明細書、2017年11月12日(日)
2028年、人民解放軍は台湾に侵攻した。/🐟フランク ✥ ロイド🐟 - カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/2912051604458666722/episodes/2912051604485140548 女将さんが「美香さんのアーカードは夜毎美女の血をすするドラキュラじゃなくて、雷雨の日に怪物を作り出すフランケンシュタイン博士なのかもね?」とニコニコして美香さんに言う。
美香さんはマンガの『マカロニほうれん荘』のトシちゃん(俺も古いなあ)みたいに口が菱形になって目をまん丸くして女将さんを見ている。美術館でも俺が絵画の説明をしているとこの表情をしていた。本人は気づいていないのだろうか?美人がこういう変顔をするのは面白い。今度ムンクの『叫び』の真似をお願いしてみようか?
美香さんが俺の方を向いて「フランケンシュタイン博士なんですか?私、『ヤング・フランケンシュタイン』のジーン・ワイルダー、好きです。でも、アーカードと違うかな?」「俺、美香さん的にアーカードに似てるのか?」「ハイ、似てます、似てます。でも、あの……」
「尾崎さんの国家機密って……言えないんですよね?」
「研究テーマ自体は機密でもなんでもない。リチウムイオンキャパシタと言って電気二重層キャパシタの負極材料の炭素系材料、そこにリチウムイオンを添加してエネルギー密度を向上させたものを開発している。そのキャパシタを連結してキャパシタバンクを構成させる。蓄電池の一種だが、電気自動車に使う蓄電池と違うのは、1)3.6GJ、1MWhの大容量を貯めて、2)0.05~0.1秒で放電させ、3)それを連続で100~200回繰り返せる耐久性を持たせて、4)40フィートコンテナに収まるようなコンパクトな大きさにする、という研究だ。
……
節子がカウンターから乗り出して、俺の目の前で両手をヒラヒラさせた。「おっさん、おっさん、わけのわかんない理科の授業をするんじゃないの!美香さんの顔をご覧よ。ムンクの『叫び』になってるぜ」
俺は美香さんの顔を見た。本当だ。ムンクの『叫び』のポーズだ。いいよなあ、この変顔。「おいおい、おっさん、もっとわかりやすく説明しないといけないだろ?ここに居る四人の中でおっさんの説明がわかるのは女将さんだけだよ」と言う。
「ええ?女将さん、今の説明がわかるんですか?」と美香さん。
「そうよ、美香さん。女将さんはね、大学の専攻が物理で、院卒なんだよ」と節子。
「天体物理を目指したのよ、私。でも、今はお父さんのあとを継いで居酒屋の女将さんをやっているけどね」女将さんがブリを捌きながら言う。
「女将さんは、私と順子ねえさんに店を任せて空いている時間を大学院に通って、博士課程の論文を書いているのよ」
「へぇ~、へぇ~、へぇ~、言葉が出ない……」下町の居酒屋の女将さんが天体物理学者というのは普通なんだろうか?と美香は思った。顔がまた『マカロニほうれん荘』のトシちゃんになっている。