どの戦争でも大抵、新兵器が登場します。それは戦争の間隔がある程度長ければ、その間にも次々と新兵器は開発されるので、一たび戦争が起これば、必ず新兵器が登場するに決まっているからです。当たり前と言えば、当たり前の事なのです。
ですから、戦争は必ず新しい兵器が登場する=戦争は新兵器の実験場と言うには無理があります。当たり前の事をさも陰謀があるような物言いは間違っているように思います。
軍需メーカーだって、延々と何十年も同じ製品を作っている訳はありません。これは一般の製品と同じ事です。
特に兵器はオーダーメイドに近い側面があるので、1ロット生産して納入すると、次のロットの発注がない場合、生産停止となります。そのまま永遠に生産停止と言う事もあります。
一般的な製品のように、メーカーがある程度、長期間製造していて、店に行けばいつでも買えると言う慣例とは、兵器と言う製品は違いがあります。
ですから、軍需メーカーも各ロットの間に改良はしていますし、発注者側である軍側も、どうせ新規ロットを発注するならば、改良された製品を買います。ですので、細かい事を言えば、大抵、どの時点でも新しい兵器が戦場に出現する可能性が高い事になります。
戦争は兵器(旧兵器も含めて)の実験場かと言われれば、新兵器だけでなく、あらゆる兵器の実戦データは、兵器の改良につながります。
けれど、それはどんな工業製品でも同じ事なので、取り立てて兵器だけを実験場と呼ぶには疑問が生じます。
例えば、自動車などでは必ず交通事故が起こります。それは次の車の安全性能向上に役立てられるはずです。ですが、まさか自動車メーカーが、ドライバーと一般道路が実験に使われていると怒る人はいません。それよりも、事故が起きたなら、率先して改良されるべきだと考える人の方が多いのではないかと思います。
ですので、なぜ兵器のみ、軍需メーカーが改良の為に、戦争を起こしているような言われをするのかは理解に苦しみます。
ちなみに現在行われているウクライナ戦争では、ウクライナに供与されている兵器は、どちらかと言えば、現用品か、各国で旧式化した兵器が供与されている側面もあります。最新ロットの製品が供給されている物もありますが。
本当に新しいのは、パトリオットPAC‐3、それ以外では、一部の榴弾砲やJDAMをベースにした地対地ミサイルくらいではないでしょうか。後は、一度は過去の戦争で、使われた事のある兵器が多いような気がします。
蛇足ですが、昨年辺りからウクライナへ供与されたF‐16は、F- 16の中でもA型と古い型で、生産ブロックも一番古い物に属する機体です。これはベルギーやオランダなどで使われていた機体です。
確かに、生産された当時からすれば、大分、改修はされていますが、基本的には古い機体である事に違いはありません。
搭載する空対空ミサイルも、中射程の物こそAIM-120が供与されていますが、短距離空対空ミサイルはAIM‐9LかMで、圧倒的に優れるAIM‐9XやIRIS‐Tが供与されている気配はありません。
幸い、旧式ながら、電子妨害装置のALQ‐131が供与されているのは救いではあります。これは地対空ミサイルが多く配備されている戦場では、生残性向上に役立ちます。
もし戦場が実験場であるならば、比較的新しいF‐16C辺りをアメリカがババーンと供与しても良さそうなのですが、その気配は一ミリもありません。繰り返しになりますが、戦場がもし本当に実験場ならば、最新のF‐16Vが大盤振る舞いされても良いと思うのですがね……。もしロシア軍相手に有効ならば、売れる事請け合いなのですが。