この短編集を書こうと思ったのは、
拍手の鳴らない場所にも、確かに人生があると思ったからです。
テレビの中の「情熱大陸」には、特別な才能を持った人が出てきます。
夢を語ったり、苦労を乗り越えたり、誰かに影響を与えたり。
そういう姿はたしかにまぶしくて、見ていると背筋が伸びるような気持ちになります。
でもこの世界の片隅には、名前も出ず、拍手も届かず、
それでも日々を選び、静かに「自分の火」を灯し続ける人たちがいます。
この短編集、架空『情熱大陸』は、そんな人たちのささやかな熱を、拾い上げて、言葉に置き換えたものです。
特別じゃないかもしれない。ドラマチックでもないかもしれない。
けれど、その生き方にはたしかに、「続けていくことの美しさ」があると思っています。
この話は“架空”の話です。
でも、どこかに――名前は違うけど、似たような日々を歩いている人が、きっといるんじゃないかと思っています。
もしこの本の中に、ふと「ああ、この気持ち、わかるかもしれない」と思える誰かがいたなら、
それはきっと、物語がほんの少し、誰かの心に届いた証です。
