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『月灯りのグラス』という短編集について

この短編集を書こうと思ったのは、
ふとした夜に、誰かの心の中にだけ灯る場所があるのではないか――そう思ったからでした。

人生には、言葉にできない寂しさや、整理のつかない後悔があります。
それは他人から見れば些細なことかもしれません。
けれど、当人にとっては、静かに、確かに胸を締めつけるもの。

『月灯りのグラス』に登場するバーは、地図には載っていません。
決まった場所も、時間もない。
けれど、迷いのなかにいる誰かが、ほんの少し立ち止まったとき、どこからともなく現れます。

寡黙なマスターと一杯の酒(あるいはお茶)だけの、飾り気のない空間。
けれどそこでは、不思議と人は「本当のこと」を口にしてしまう。

この作品を通して描きたいのは、
「人は誰しも、心のどこかに夜を抱えて生きている」ということ。
そしてその夜の最中に、少しの光と、誰かの声があるだけで、
また歩き出せるかもしれない――そんなささやかな希望です。

読む人によって、響く話は異なるかもしれません。
でも、どこか一話でも、「ああ、わかる」と感じていただけたら、
この本のバー《月灯》は、きっとあなたの心にも、ひっそりと灯ると信じています。

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