• 現代ドラマ

テイルデザイナーの活動報告 第18回「八月」

連載中だった「圏外区画午前四時」が先週に完結いたしました。如何だったでしょうか。私としては初めての作風だったと思います。

主人公は平凡な女子大生。どこにでもいるようなタイプとは少し言い難い、無気力でサボり気味な子。大学生活も佳境を迎えているけど、就職活動に気持ちが向かわない。

一応、将来の夢はある。周りの人たちと同じように、普通に生きてゆけたら良いなと思っている。周りの人たちが歩んでいるような、退屈でも平坦な道を歩みたいと思っている。

でも、思っているだけ。

思っているだけで、特に何もしていない。普通に生きてゆくことも、平坦な道を歩んでゆくことも、それらを為すためには相応の努力が必要だというのに。

エントリーシートは真っ白。面接対策の教本や書籍は購入するだけで読むことはない。就職関連のサイトはアカウントを作るだけでログインすらしていない。世の中で、普通に、あるいは平坦な道を歩んで生きるためには、働いてそれなりの収入を得ることが欠かせないことは分かっている。分かっているけど、心と体が動かない――そんな彼女の葛藤を私なりに凝縮したつもりでした。

しかし、原稿を書き上げた瞬間に思ったんです。このストーリーは葛藤というより、主人公の杜東まひるの叫びであると。

幸せが欲しい。

楽に生きる道しるべが欲しい。

自分を理解してくれる存在が欲しい。

苦しみを打ち消してくれるきっかけが欲しい。

欲しい。

欲しい。

欲しい。

そんな全六十話に渡って連なる叫びに対して、ストーリーの中においては答えが提示されません。夜捨の庭という空間で出会った人々はもちろん、まひるの家族や友人、大学の教授でさえ何ら答えを示さないのです。

書き終えた直後に「ちょっと虚しすぎやしないか?」と思いましたが、しばらく考えた後で「このままで良い」と頷くに至りました。

だって、その方が多くの人に寄り添える気がしますから。生きることが苦しくて苦しくてたまらない人の孤独感が少しでも和らぐような作品を創る、それが執筆活動における私の主義なのです。

さてさて。今年の八月は帰省やら屋台やら花火大会やらと満喫しましたが、同じ量で執筆にも力を入れることが出来たと思います。支えてくださった全ての皆様に心より御礼申し上げます。

ありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。

今週はここまで。
来週もたぶん書きます。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する