• 現代ファンタジー

第2章・第30節公開しました|百夜の名残

「……あの頃は、夫がまだ生きていた」

 過去を話すEliasの目元は、わずかにほどけていた。
 先ほどまでの眼差しが嘘のように、優しかった。
 それが彼の素顔だった。

 薬指の金の指輪が、鈍く光を返していた。
 ——ずっと付けているのか。

 案の定、AdrianもEliasの手に光る指輪を見ていた。
 何か言いたげな顔だった。
 未練があるなら、Rowに気を持たせるな——そう責めているようにも見える。

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