紅蓮の嚮後 〜桜の鎮魂歌〜 コメディ
その名も『グレきょ!』
Xmasですので、今回はサポーター様だけでなく
全ての皆さまに公開いたします!!
少しでも、クスッと笑っていただけたら
幸いです(*´︶`*)ノ🌸
第5話 Silent Night?いいえ、喫茶桜です。
閉店後の喫茶桜──
甘いシナモンと焼き菓子の香りが
もう客のいない空間にふわりと溶けている。
オーブンから取り出したばかりの
クッキーの熱気がまだ残っていて
冬の夜気と混ざり合った。
カウンターの中では
時也が黙々とココアを温めていた。
ミルクパンの中で
湯気を立てながら渦を巻くココアを
木べらで静かにかき混ぜる。
その仕草ひとつひとつが
いつもの営業中と変わらず丁寧で
閉店後さえ〝仕事〟の延長であるかのようだった。
そのすぐ傍ら。
ツリーの前では、ソーレンが腕を組み
鋭い目つきでモミの木を睨んでいる。
飾りつけの途中で止まったライトとオーナメントが
中途半端にぶら下がったまま
彼の不機嫌そうな表情を反射していた。
そして、そのツリーのさらに上。
脚立のてっぺんに立ったレイチェルが
銀色のモールを振り回している。
モールはきらきらと光を散らし
彼女の肩と髪に絡みつき──
もはや装飾しているのか
彼女が装飾の一部なのか
わからない状態になっていた。
「時也さーん!
せっかくのクリスマスなんだから
あの桜もクリスマス仕様にしない?」
脚立の上から身を乗り出し
レイチェルが嬉々として叫ぶ。
肩に巻きついたモールが
そのたびにしゃらんと音を立てて揺れた。
「僕が生まれ直した、あの桜を──ですか?」
時也は木べらを動かす手をそっと止め
鍋からたちのぼる湯気ごしに
窓の外へと視線を滑らせた。
窓硝子越しに見えるのは
夜空を覆うように枝を広げた巨桜。
冬だというのに
そこだけ季節を忘れたように満開の花が咲き誇り
雪の代わりに、星明かりを受けて
淡く光の粒を散らしている。
喫茶桜の看板よりも、街灯よりも
何よりも目を奪う光景だ。
「そうそう!
せっかく店内も可愛くなったんだから
窓から見える〝巨桜〟も!──ね?」
彼女は脚立の上でくるりと半回転し
店内の装飾を、誇らしげに一望する。
天井から吊るされた小さな星型のライト
テーブルに並んだキャンドル型のランプ。
数々のクリスマスカラーが鮮やかな装飾たち。
全部、自分と時也とソーレンが
わちゃわちゃ言い合いながら飾ってきたものだ。
その横で、ソーレンが鼻で笑った。
「おい⋯⋯あんなバカデケェのに
どうやって飾りつけろってんだよ」
窓の向こうの巨桜を見上げながら
眉間に深い皺を刻む。
枝一本が
そこらの街路樹一本分はありそうなサイズだ。
常識的に考えて
人間三人でどうこうできる話ではない。
「そりゃ、もちろん!ソーレンが飛んで♡」
レイチェルは即答だった。
躊躇いゼロ、間もゼロ。
親指をびっと立てて、満面の笑みを向ける。
「はぁ!?なんで俺なんだよ」
「だって重力操作でふわーって浮いて
ひょいひょいって飾れるじゃん?
ね?便利能力♡」
「便利って言うな。俺は脚立じゃねぇ」
吐き捨てるような声と同時に
ソーレンの腕組みはさらに固くなる。
本人としては〝兵器〟のつもりの能力を
完全に日曜大工ツール扱いされているのだから
機嫌が良いはずもない。
ぶすっとした横顔に、レイチェルはにやりと笑い
脚立の上から彼の頭上に
キラキラのモールをぽすっと乗せる。
「ほら、似合うよ?
クリスマスを飾る、空飛ぶもふもふ係!」
「その役職、今すぐ廃止しろ」
ソーレンが即答でばっさり切り捨てる。
その声の荒っぽさのわりに、頭に乗ったモールは
中途半端な位置で引っ掛かったまま落ちず
ふわふわと揺れていた。
二人のやり取りを見ていた時也は
思わず小さく笑みをこぼす。
鍋の火を落とし
湯気の立つココアをマグカップに注ぎ分けながら
ふと真面目な口調に戻って告げた。
「お客様も、きっと喜ばれますね。
では、ソーレンさん。よろしくお願いいたします」
さらりと言う声音には、悪意も揶揄いもない。
ただ〝客の笑顔の為〟と
ごく理性的に結論を述べたに過ぎない。
それが──余計にタチが悪い。
「おい。てめぇまで、当然みたいな顔で言うな」
ソーレンが思わず一歩、カウンター側へ詰め寄る。
時也は首を傾げ、マグを差し出しながら
いつも通りの穏やかな微笑みを崩さない。
「僕は、すみませんが──飛べませんので」
「知ってるわ!!」
盛大なツッコミが
がらんとした店内に気持ちよく響いた。
レイチェルは「ほらね〜?」と言わんばかりに
両手を腰に当てて満面の笑みで頷く。
「決まりだね、ソーレン!行ってらっしゃーい!」
「お前が案出した癖に自然に見送ってくんじゃねぇ」
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しかし──
ぶつぶつ文句を言いながらも
ソーレンは結局、仕事はきっちりこなす男だった。
巨桜の太い枝に片足を掛け
もう片方の足で幹を軽く蹴って高さを調整しながら
金と赤のオーナメントをひとつずつ吊るしていく。
靴底が樹皮を擦るたびに
ざり、と低い音が夜気に溶けた。
枝から枝へと飛び移るたび
その長身がしなやかにしなる。
コートの裾が夜風に翻り
重力をねじ伏せるような動きでふわりと宙を蹴る。
足元では、季節外れの満開の花弁が
彼の動きに応じてさわさわと震え
小さな雪崩のようにひらひらと舞い落ちる。
「ったくよ⋯⋯なんで俺が、毎度こう──」
ぶつぶつと零れる悪態は止まらない。
だが、その手つきだけは驚くほど几帳面だった。
一度、ふっと宙に浮かび上がり、巨桜全体を見渡す。
夜空を背景にした枝ぶりと
吊るしたばかりのオーナメントの配置を
素早く、冷静に目でなぞる。
(左側、ちょい重いな⋯⋯金の玉、右に回すか)
重心のバランスを計算するかのように
視線が左右へと走る。
悪態とは裏腹に、その瞳だけは職人めいて真剣だ。
赤いボール。
ガラスの星。
短いリボン。
螺旋を描くモール。
それらが一本一本の枝にしがみつき、夜空を背に
桜の枝々に光の実が静かに芽吹いていく。
少し離れて見れば、巨桜はすでに
半分ほどが〝聖夜〟の装いを纏い始めていた。
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──そのころ、喫茶桜の店内。
窓際の席では
レイチェルがマグカップを両手で包み
向かいに座る時也の様子をじっと観察していた。
「どしたの、時也さん?
さっきから、たまに震えてるけど⋯⋯寒い?」
彼女の視線の先で
時也はココアのカップを持ったまま
ぴくりと肩を揺らした。
マグカップからは
まだ温かな湯気が穏やかに立ち上っている。
なのに、その指先だけが
ふるっと小さく震えていた。
「いえ⋯⋯枝や幹にソーレンさんが触れるたび⋯⋯
擽ったくてですね⋯⋯」
眉尻を困ったように下げながらも
その声色には本当に擽ったそうな響きが混じる。
窓の向こうでは
ちょうどソーレンが幹に手を突いて体勢を変え
足で軽く幹を蹴るところだった。
「あ、そっか!魂であの桜と繋がってるんだもんね」
レイチェルはぽん、と手を打ち
テーブルに身を乗り出す。
「──時也さんの身体を
ちっちゃいソーレンが、よじ登ってる感じ?」
その例えに、時也は一瞬固まり
ゆっくりと視線を落とした。
耳の先が、ほんのり赤くなる。
「⋯⋯概ね、そんな感じですね」
口元に浮かんだ苦笑は、否定し切れない諦めと
妙な恥ずかしさが入り混じったものだった。
肩口の奥、骨の芯の方で
こそばゆい感覚が細かく弾ける。
それが背中から腰へ、脇腹から腕へと
忍び寄るように広がっていくたび
反射的に背筋がぴんと伸びる。
「今、どの辺り登ってるの?」
「えっと⋯⋯右肩くらい、でしょうか⋯⋯
レイチェルさん、その質問は少し恥ずかしいですね」
「楽しいから続けるね!」
「やめる気は、ないんですね⋯⋯」
小さくため息を漏らしながらも
時也の声はどこか観念したようだった。
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そんな店内の会話も知らず──
いや、知っていたとしても
態度は変えなかっただろうが──
桜の上のソーレンは、黙々と作業を続けていた。
「──っと。あ、やべ⋯⋯引っかかった」
位置を変えようとして、掴んだモールが
がっつり枝に噛み込む。
銀の鎖のようなそれは、枝にぐるぐると巻き付き
引くほどに締まっていく。
「ったく、誰だよこんな巻き方したの⋯⋯
って、俺か」
自分にツッコミを入れながら
ソーレンは片手でモールを引き
もう片方の手で枝を押さえ込む。
それでも、びくともしない。
「⋯⋯しゃあねぇ、ちょっと──ここだけ折るか」
短く呟き、指先に重力を込めて
枝の一点に力を集める。
パキリ、と乾いた音が夜気に弾け──
その瞬間
喫茶桜の店内から、硝子越しに
ごく小さな声が聞こえたような気がした。
「⋯⋯っ!」
驚いたような、息を呑むような、ひどく短い声。
「ん?」
ソーレンは片眉を上げ
折れた小枝を指先でくるくる回す。
視界の端で、喫茶の窓がぼんやりと光っている。
その中にいるであろう人物を想像し──
彼の口元に、ゆるやかな
しかし性格の悪さが滲む笑みが広がった。
「⋯⋯あぁ、そうだった。
おっと〜?手が滑って、幹を殴っちまったなぁ」
誰にともなく、わざとらしい声色で独り言を落とす。
そして今度は、握った拳を幹に当てた。
──もちろん〝軽く〟というのは
ソーレン基準でだ。
ゴン、と鈍い音が丘に響き
幹がどん、と低く震え、枝葉がざわりと一斉に鳴る。
花弁がふわりと舞い
オーナメントがちりん、と震えて小さく鳴った。
その直後、店内から
また短く息を切るような気配が届く。
「⋯⋯っ、あの⋯⋯今のは、少し強めでしたね⋯⋯」
マグカップを持つ指が、びくりと跳ねる。
時也は微妙な顔のまま
背もたれにゆっくりと寄りかかった。
「今の、どの辺にきたの!?
お腹?胸?背中?ねぇねぇ!」
「レイチェルさん
実況のように聞かないでください⋯⋯」
楽しそうなレイチェルの追撃を
困り顔で受け止める時也。
そのやり取りが、窓硝子を薄く震わせる笑い声と共に
外のソーレンの耳にも、うっすらと届いていた。
ソーレンは、窓越しには見えないその反応を
半分は想像で補いながら
唇の端をさらに吊り上げる。
「⋯⋯はは。
じゃあ、もうちょい丁寧に──飾り付けしてやるか」
低く愉快そうに笑いながら──
悪戯が、静かに本格的に始まった。
モールの端を指先で弄びながら
ソーレンは鼻で笑った。
「モールはゆっくり巻いてやらねぇと
また絡まっちまうからなぁ?」
あくまで〝仕事として当然〟という顔をしているが
その口の端には、どう見ても
悪戯を仕掛ける前の少年じみた笑みが浮かんでいた。
「ここら辺は──どうだ?」
巨桜の太い幹に片腕を回し
しなやかな体幹でバランスを取りながら
ふさふさとしたモールをわざとゆっくり動かす。
毛足の長い飾りが、ざり、さわ、と
木肌を擽るように滑り上がっていく。
枝から吊るされたオーナメントと
花弁の間を縫うように
銀色のモールが幹を這うたび──
巨桜全体が
ほんのわずかに身じろぎしたように震えた。
夜風が、花とモールと電飾をいっしょくたに揺らす。
けれど、その震えには
風だけではない、別の〝反応〟が混じっていた。
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──店内。
「──く、⋯⋯ふ、ふふ⋯⋯っ」
カウンター席で、時也の肩が、ぴくん、と跳ねた。
次の瞬間、押し殺すような笑い声が
喉の奥からどうしてもこぼれ出る。
両手で包んだマグカップの中のココアが
ぷるぷると小さく波紋を描く。
「時也さん的に、あのモールはどこを擽ってるの?」
レイチェルは椅子の上で
もはや前のめりと言っていいほど身を乗り出す。
窓の向こうで、ソーレンがモールを上下させるたび
タイミングよく時也の背筋がぴん、と跳ねるのが
完全にツボに入っているらしい。
「ひ、ひみつ⋯⋯です」
耳までほんのり赤くしながら
時也は視線をテーブルに落とした。
肩から背中にかけて
表現しがたい〝こそばゆい電流〟が
何度も細かく駆け抜けていく。
「ひみつって言われると、余計気になるんだよねぇ〜
背中?お腹?それとも──もっと下?」
(ソーレン⋯⋯願っちゃダメなのわかってるけど──
もっとやっちゃって!)
「やめてください、レイチェルさん⋯⋯
心の声がダダ漏れです」
「えっ、今のも聞こえてた?」
「ばっちり、聞こえましたよ⋯⋯」
時也はますます俯き、前髪の影に表情を隠す。
震える肩が
笑いなのか、擽ったさなのか、羞恥なのか──
本人でさえうまく判別できない。
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桜の幹の上では
ソーレンが横目で窓を盗み見ていた。
ガラス越しに、カウンター席の二つの影が
さっきからチラチラと動いている。
自分がモールを動かすたび
室内のシルエットがぴょこっと跳ねる──
その妙に綺麗な一致に
ソーレンは唇の端を吊り上げた。
「あー、効いてんな」
重力操作で風を殺し、バランスを微調整しながら
枝の上にしゃがみ込む。
モールの端を枝に仮留めし
肩に担いだ電飾ライトのコードを持ち直した。
「よし、じゃあ次は──こっち側だな」
幹を挟んで反対側へ移動しながら
枝から枝へと軽やかに渡り歩く。
コードが枝に掠めるようにして這い
ところどころで引っかかっては、また這い進む。
「っと、ここはちゃんと固定しねぇとな」
そう言って、コードを留めるふりをしながら──
ソーレンは、時折、幹を指先でなぞり上げた。
ゆっくりと、下から上へ〝撫で上げるように〟
「そら、もっと飾って──」
幹のカーブに沿って
まるで〝一番反応しそうな箇所〟を探るように
指が木肌を滑っていく。
「擽ってやんよ」
低く笑った、その瞬間──
「っっっっ⋯⋯!!」
店内の椅子が、ガタン、と派手な音を立てた。
カウンター席で、時也が思わず腰を浮かせていた。
マグカップの中のココアが
その衝撃で大きめの波紋を描く。
「時也さん!?今のはどこ!?どこいったの!?」
レイチェルは半分立ち上がり
食いつかんばかりの勢いで身を乗り出す。
「こ、コメントは控えさせていただきます⋯⋯!」
(背中から首にかけて一気に来ました⋯⋯っ!
ずるいですよ、ソーレンさん⋯⋯)
肩口を押さえながら震える時也を見て
レイチェルは机をばんばん叩いて笑い転げた。
「これもう、クリスマス飾りっていうか──
〝クリスマス責め〟じゃない?
新プレイだよ、新プレイ!」
「物騒な言い方はやめましょうか、レイチェルさん」
そう言いながらも
耳まで真っ赤に染まった時也の顔は
どう見ても〝被害者〟であり──
窓の向こうで
幹をなぞりながら悪戯を続けるソーレンの横顔は
どう見ても〝加害者〟のそれであった。
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「はは!
仕事しながら、今までの鬱憤を晴らせるたぁ
最高だな?」
桜の根元に降り立ったソーレンは
地面に並べられた飾りの箱を足先でつつきながら
どれを〝次の凶器〟にするか
吟味するように眺め回した。
赤いボール、星形オーナメント、リボン──
そして、ふさふさのモール。
「やっぱ⋯⋯モールが一番、だよなぁ?」
にやりと口角を上げ
ソーレンはモールの束を片手で掴むと
再びふわりと地を離れた。
重力を軽く反転させ
桜の高い枝に向かって手を伸ばした──
その時だった。
──ばさり!
夜風の音と見紛う一瞬の気配のあと
無数の枝が、生き物のように一斉にしなり
ソーレンの身体を捕らえた。
「──うおっ!?」
腕、脚、腰に
しなやかな木の鞭のような枝が絡みつき
あっという間に身動きを封じられる。
そのままぐいっと持ち上げられ
彼の身体は逆さ吊りになった。
夜空を背に、桜の枝先からぶら下がるその様は──
まるで、新しく追加された
〝特大サイズのオーナメント〟そのものだった。
「こ、の!クソ桜っ!!何しやがる──!!!」
「まったく、悪戯もほどほどにお願いします」
窓の鍵がかちゃりと鳴り、店内から顔を出した時也が
逆さ吊りのソーレンを穏やかな目で見上げた。
その声には、わずかに引きつった笑みと
確かな〝お仕置き〟の意思が滲んでいる。
「てめぇの仕業だろ!!!とっとと離しやがれ!!」
ソーレンが悪態をついている間にも
桜の枝は次々と動き始めた。
地面に置かれた箱へとしなり降り
オーナメントやライトを器用に掬い上げ──
そのまま自分の枝へと飾り付けていく。
赤い球がひょい、と一つ
金の星が、するりと枝に絡まり
電飾のコードが幹を這い上がる。
「最初から、こうすれば良かったですね」
窓辺に肘をつきながら
時也は感心したように頷いた。
「五月蠅い大きな飾りも──
あのまま飾っておきましょうか」
視線の先、桜の高い位置──
枝に縛られたまま
じたばたと暴れている、筋肉質な〝飾り〟が一つ。
「誰が〝大きな飾り〟だ!!
おい時也!!今すぐ下ろせや、ごらぁ!!」
逆さの状態で怒鳴るソーレンの声が
丘の上に響き渡る。
だが、窓の内側でその怒声を浴びている店長は
湯気の立つマグカップにそっと視線を落とし
静かにココアをひと口啜った。
「そうですね⋯⋯
お客様がいらっしゃる前には、検討しましょう」
「検討じゃねぇ!!今すぐ確定で下ろせ!!」
「ふふ。
素敵な〝クリスマスツリー〟になりましたね?
ソーレンさん」
レイチェルは窓際の席で
その光景を見ながら腹を抱えて笑っている。
「笑ってんじゃねぇ!!」
こうして──
喫茶桜のクリスマスイブ前夜。
丘の上の巨桜は、見事なまでに豪華で
そして少しだけ〝五月蝿い〟という
特別仕様のクリスマスツリーとなったのだった。
ここまでお読みくださり
ありがとうございます!!!
今後とも
紅蓮の嚮後 〜桜の鎮魂歌〜とともに
私ウツボも、よろしくお願いいたします(*´︶`*)ノ🌸
今日も素敵な一日を
皆さま、お過ごしくださいませ🎄🔔✨️
グレきょ!
第1話
聞き耳の向こう側は、だいたい誤解でできている
(全体公開)
https://kakuyomu.jp/users/Tail_of_Moray/news/822139839712963239第2話
店長さんは、甘えられたら断れない
https://kakuyomu.jp/users/Tail_of_Moray/news/822139839744230586第3話
深夜のお茶会は〇〇の味♡
https://kakuyomu.jp/users/Tail_of_Moray/news/822139840510999624第4話 罪過は芽吹き、刈り手は微笑む
https://kakuyomu.jp/users/Tail_of_Moray/news/822139841465234444