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モグラの言い訳カルテ①


こんにちは。通院モグラです。

今回は拙作Edenにて出てくる医療シーンについて、恥ずかしながら自分の頭の中ではどういう患者さんを想定してどういう処置をやってたか、という妄想のお話です。
誰得な内容になりますが、ご興味のある方はぜひ本編と併せてお楽しみ頂けたら幸いです(宣伝)。

※あくまで創作であり、実際の医療現場で標準的な治療として選択されているものとは限りません。
※未熟な知識を繋ぎ合わせており医療的な正確性からは外れた描写を入れている場合がございます。

以上の注意事項をご了承頂けましたら、気長にお付き合いください。


第5-6話「開胸心マされてる兵士くん」

>>「――コードブルー! ERから外傷チーム、今すぐ応援を!」

第一報は「なんか爆発で吹っ飛ばされたっぽい、胸凹んで心停止してます」くらいの情報しか来ません。ERチームは第一報の時点で外傷チームに連絡しました。呼ばれたハンニバルは食べかけのおにぎりをもそもそ頬につめて蘇生室に向かいます。

>> 「胸腔穿刺用意! 気胸が進行してる!」
爆傷の風圧が胸部にきたのか、たしかに胸がぼこっと変形してます。最初にとりついた救命士が聴診と触診をしてます。胸の音が聞こえない、皮下気腫も触れる、多分気胸だと判断して「気胸が進行してる!」と叫んでます。心停止してるので胸骨圧迫継続しながら即挿管、人工呼吸器につないでます。


>>「止血! 右手、抑えて!」

右手に大きめの挫創があったようで誰かが圧迫止血してます。

この時ERチームの医官が即座に治療方針を見立てています。見ればわかる範囲で多発肋骨骨折はもちろん、胸部に強い衝撃がきて心停止となれば、緊張性気胸になったか、最悪大血管損傷でショックになって心停止したか、肺挫滅で低酸素血症になって心停止したか、まあ色々考えますが1番やばいのは大血管損傷なのでとりあえず左胸を開けて中を見てみるか、という判断でガバっと割ってます。

>>「誰か、鉗子! 違う、それじゃ細すぎる! バイタル落ちる!」

胸を割るとブシュッと音が立ちました。ああー気胸だったか、と思いつつ肋骨を広げて開けます。この時肋骨骨折のせいで開胸器が上手く噛み合わなかったか、太めの鉗子で肋骨を広げようとしてます。なんとか細い隙間から手を差し込んで直接心マしようとしますが、手が大きくて入らないし折れた肋骨が手に刺さらないようにするにはまだ広げないといけません。

そこへハンニバルが駆け込んできました。

>>「心マ再開! ハンドオーバーは私がする!」

手を突っ込みました。女医のハンニバルは手が小さいので隙間からぬるんと入ったようです。ついでに無理矢理開胸も広げてます。
幸い血はドバドバ出てきません、大血管は多分ざっくりやられてる訳ではなさそう。ハンニバルは心臓をみて触ります。心膜の中に血液貯留はなく、心臓自体はぴちぴちしてたので、やっぱり出血多量って感じじゃなさそう。心臓を手のひらですくって胸骨ではさむようにして直接心マします。気胸解除したので多分すぐ心臓自体は戻るはず。とかやってたら次の2分のサイクルで戻りました。

>>「ECMO(エクモ)準備! 動脈ライン確保して! 肺潰れてる、吸引継続!」

しかし心臓のすぐ側にある左肺がくしゃくしゃになってます。広範囲の肺挫滅。これでは呼吸器で酸素を送っても身体に酸素が回りません。
ここでECMOの出番です。これは人工心肺という機械と同類の機械で、この患者さんは心臓は戻ったので”心肺”ではなく"肺”だけ機械に代わりをしてもらおう、という発想でECMOが出てきました。

ハンニバルがそっちを接続するためにごそごそしてる間に、別の医師が超音波で腹部をみてます。お腹の中に液体が溜まっていれば、腹腔内からの出血を止めにいく必要がありますが、幸いエコーでは液体貯留はなかったようです。

そして待機してたレントゲンが胸と骨盤の撮影をその場でしてくれました。胸はハンニバルが左胸開けてるんで評価しようがないですが、右胸の中にはやはり気胸があるようです。骨盤は幸い正しい形をしてました。骨盤部は太い血管が走ってるので、ここが折れてると腹腔内で出血してる可能性が跳ね上がりますが、エコーの所見と併せても今回はその可能性は低いようです。

今の所の判断では緊張性気胸と肺挫滅からの低酸素血症による心停止だったようです。


>>「右肋骨確認、穿刺位置調整……通った、ドレーン固定!」

左がこんな状態ということは右肺も無事では済んでないでしょうが、どんな状態だとしてもやることは変わりません。人工呼吸器の圧で気胸が進行しないよう、右胸腔にドレーンを留置しておきます。誰か入れてくれてますね。肋骨折れてるからちょい難しかったかもですが、通常通りの位置からぬるんと入ってったようです。

>>「酸素飽和回復! 全身CT行くぞ、前空けろ!」

とりあえずこれで即死は免れたので、あとは出血源検索や骨折部位の同定のためCTにガラガラ行きます。しかし肺が使えてなくて低酸素の状態が続いていた事が予測されるので、脳が無事かはもうお祈りするしかありません。CTで溶けた脳を見るともう治療撤退しかなく、大の字になってハンニバルは寝るしかないですね。でもこの人はギリギリせーふだったようです。まあCT画像の評価なので追々意識障害は残るかもしれませんが、今考える事じゃないのでハンニバルは全身CTの画像チェックを念入りにします。

多分この辺でトリガー大佐からワンコール来てますが無視しましたね。トリガーも大体処置から手が離れてるだろうタイミングは分かってるので、邪魔にならないタイミングでやってますね。

CTでは幸い大量出血をきたす様な大きな血管損傷はなかったようです。ICUに上げてECMOが安定して回っていることを確認しつつ諸々調整して、ひとまずハンニバルのお仕事は一区切りです。
多分ここまでで2時間半くらい。地味にICU上げてからの諸々調整が1番時間かかるところかもしれません。

そして誰かに「さっき大佐からコール来てたよね?」て声かけられて「あっ、忘れてたやっべ!」って言って駆け出したと思われます。


ざっくりこんな感じで考えてました。
いかがでしたでしょうか。
ツッコミどころ多々あり専門用語も入れちゃってましたが、大体の雰囲気を感じ取って頂けたら幸いです。

あんまり専門的なところは得意ではないですが、質問、コメントやご感想を頂けたら嬉しいです。

それではここまでお付き合い頂きありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。

7件のコメント

  • うお、すごっ! 突っ込みどころか、すごい事しか分かりません!
  •  創作の中で、リアルな現場想定入れ込むの凄いですね。
     ドラマ性も欲しいし、説得力も欲しいし。
  • >>小田島匠 様

    いつもコメントありがとうございます!嬉しいです。
    脳内ではこのくらい考えてたんですけど、本編では全く必要のない説明だったのでスピード感だけ伝わればいいな、と削りに削った結果、会話のやり取りだけ残りました。
    これが没ネタの供養というやつでしょうか(笑)
    別シーンのやつも色々あるのでまた供養してみようと思います!
  • >>shiso_ 様

    コメントありがとうございます〜!
    こんなところまで目を通して頂き恐縮です。

    医療処置に関しては、主要キャラから脇役の台詞まで「何故そのタイミングでその発言したか」や、処置によって発生する患者さんの容態の「変化」など、ちゃんと整合性が取れるように意識してみたつもりです…!
    とはいえざっくりとした流れしか決めてませんが、リアル感とか説得感に繋がっていたら嬉しいです。
  • こんばんは。
    すごい、事細かに考えられてのセリフのタイミングなど、リアリティがあっていいなぁと思いました( *´꒳`*)
    また今後もゆっくりですが追わせて頂きますね!
  • >>はる❀先生

    こんばんは!こんなところまで読んで頂いて…!大変嬉しいです。ありがとうございます。
    医療シーンを読み物として面白く、説明になりすぎない程度に読み手の方に「なんとなくわかる」形でお見せしつつ、医療的な破綻がない形にするにはどうしたら…!と悩みに悩んで削りに削った部分でした(笑)
    こうしてコメント頂けただけでも望外の嬉しさです…気が向いたときにお立ち寄り頂けたらとても有難いです。
    今後ともよろしくお願いいたします!
  • >>はる❀先生

    こんばんは!こんなところまで読んで頂いて…!大変嬉しいです。ありがとうございます。
    医療シーンを読み物として面白く、説明になりすぎない程度に読み手の方に「なんとなくわかる」形でお見せしつつ、医療的な破綻がない形にするにはどうしたら…!と悩みに悩んで削りに削った部分でした(笑)
    こうしてコメント頂けただけでも望外の嬉しさです…気が向いたときにお立ち寄り頂けたらとても有難いです。
    今後ともよろしくお願いいたします!
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