💋「新編 江戸の夢魔の夜」、
https://x.gd/XvmBM 町医編
第1話 町医山崎清忠、見合い
https://x.gd/qoO6L 第2話 町医山崎清忠、初夜の床
https://x.gd/o7YMH 第3話 町医山崎清忠、ふみの再来
https://x.gd/HFEre 第4話 町医山崎清忠、追っ手の影
https://x.gd/qtSjr 第5話 町医山崎清忠、町医の幸せ
https://x.gd/yamwcA 舟の存在は、さくらの心に複雑な波を立てていた。舟は家族の一員として暮らしながらも、亜麻色の髪と蛇の刺青、妖しい微笑みが、どこか異界の香りを漂わせていた。さくらは江戸娘の明るさでそれを押し隠し、皆の前では笑顔を絶やさなかったが、夜一人で帳簿を締めるとき、胸に小さな棘が刺さるのを感じていた。
ある夜、ふみと二人で薬草を干している時、さくらはぽつりと漏らした。
「ふみさん……かか様がいるって、嬉しいよ。本当に。でもよ、時々思うんだ。あの人、夢魔だぜ? 旦那様の目が、かか様に向く時、ちょっとドキッとしてるの、私にはわかるよ。私みたいな普通の江戸娘じゃ、敵わねえのかなって……怖いよ、ふみさん」
声は小さく、いつもの元気さが影を潜めていた。ふみはさくらの手を握り、優しく微笑んだ。「さくら様、母様はもう祟る気はないわ。でも……確かに、母様の目は時折、昔の熱を宿すわね。でも、さくら様の明るさがなければ、母様もここにいられなかったわ」
さくらは目を伏せ、すぐに顔を上げて笑った。「ったく、私ってばバカだね! 嫉妬なんて、似合わねえよ。旦那様は私のものだぜ、みんなのものだけど、一番は私だ! かか様の妖しさだって、この家を熱くしてくれるんだから、ありがてえよ」
その言葉は強がり半分、本心半分だった。さくらは舟の妖艶さに脅威を感じながらも、それを家族の絆の一部として受け入れようとしていた。嫉妬は胸を焦がすが、舟が清次を抱く優しい姿や、難病を救う姿を見ると、感謝が勝った。さくらの心は、江戸の川のように広く、時に濁りながらも、すべてを包み込んで流していく。