// 復活魔法が使えない理由の裏にあった、“魂二段構え”の話
どうもこんばんは。ようやく手が少しずつ空いてきて、また小説に手をつける余裕ができそうな……そうでもないような状態です。
昨日公開された【新装版】スィーフィード・レクイエム VOL.2 第2章に登場する、長めの魔導理論について――
ここでも取り上げてみようと思います。
※今回もそれなりにネタバレを含みます。
Vol.1およびVol.2第2章まで読み終えていない方はご注意ください。
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先日、「復活魔法が使えないパラドックスをどう解決するか?」という話をさらりとまとめました。
ざっくり言えば、「こうすれば破綻しないな」と落とし所を見つけた、という感じの内容です。
今日は、その延長線のような話になります。
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まず、今回の魔導理論の中核となる「魂の構造」は、非常にシンプルにいえば二本柱です。
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◼ スピリットウォール
魂を保つための精神的な“箱”のようなもの。
個体が死後も崩れず存在するには、この“魂の箱”が必要。
- 人間のスピリットウォールは非常に小さく脆い
- 魔族などは巨大かつ強靭な“魂の器”を持つ
- 崩壊すると魂は外に漏れ、拡散・消滅してしまう
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◼ スピリットソウル
個体の“核”となる魂そのもの。
スピリットウォールという箱に収まっていないと、形を保てない。
(=器を失った魂は消える)
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この「スピリットウォール × スピリットソウル」の二段構えによって、復活魔法が通用しない仕組みを整えた――
というのが、前回までの話になります。
より詳しく知りたい方は、以下のノートもあわせてどうぞ
[破綻しない設定を考える。第一回:復活魔法が通用しない理由のつくり方]
(
https://kakuyomu.jp/users/Mustang_TIS/news/16818792435635422009)---
/// ◆なぜ“魂の二段構え”に行き着いたのか
――発端は、ラフィールによるアークリーク召喚のシーンを構築していたときに遡ります。
Vol.1では、ラフィールが世界創世に関わる二大神の一柱・アークリークの召喚に成功します。
でも構想時すでに、簡単に召喚させるみたいな形は絶対にあり得ないと思っていました。
“ただ呼び出せてしまう”のでは、どうにも手応えがない。
神を召喚するなら、それに見合うだけの“代償”が必要なんじゃないか――と思いました。
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//// ◎命以外に何を差し出せるのか?
では、その“最大級の対価”とはなにか?
当然、「命」だろう、と。
じゃあラフィールを“死なせる”。
――でも、ここでひとつ考える必要があったんです。
> 「どうすれば、世界設定として“完全な死”を表現できるのか?」
> 「どうすれば、『復活できない死』を説明できるのか?」
当初は「魂が消えたら蘇生できない」で済ませようと思っていました。
でも、そこからさらに一歩踏み込みたくなった。
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//// ◎魂を“渡す”とはどういうことか?
魂を消すだけじゃダメなんです。
ラフィールの“中身”が空っぽになって、
その空いた“なにか”にアークリークが入ってくる必要がある。
そのとき、ふと思ったんですよ。
> 「魂を入れる器があるとしたら、そこに別の魂が乗っかる形になるんじゃないか?」
> 「じゃあ、“魂の容れ物”を作ろう。」
そこから生まれたのが、スピリットウォールとスピリットソウルの二段構えでした。
ソウル(本体)を渡す
↓
その“箱(ウォール)”ごと明け渡す
↓
そこにアークリークの魂が入る
という構造です。
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//// ◎魂の器構造が入ると、一気に整った
この設定が生まれたことで、ラフィールの死は「本当の死」になります。
そして、“魂を器ごと奪われた”からこそ、復活は不可能になる。
理屈が破綻せず、しかも物語の重さがちゃんと担保される。
書いていて、「あ、これはピースが全部はまったな」と思いました。
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こうして、ラフィールのアークリーク召喚という破格の出来事に、
ちゃんと設定として“理屈が追いついた”というわけです。
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/// ◆召喚魔法の定義を再構築したら、“魔法体系そのもの”が整理された話
さて、Vol.2の第2章でついにこの「魂構造理論」を登場させるタイミングがやってきました。
そこまで固めてきた理論を仕込めるわけだから、準備万端……と思いきや、ここで予想外の副産物が発生しました。
> 「あれ? ラフィールがアークリークに乗っ取られる(※正確には自ら明け渡した)のって……召喚じゃなくて憑依じゃね?」
という、根本的な疑問が頭をよぎったんです。
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//// ◎召喚のつもりだったのに、どう見ても憑依だった件
もともとのイメージでは「とにかくヤバい召喚」。
だから術者自身の身体を“器”にしてアークリークを降ろした。
その時点では、「異常性を演出する手段」として身体の明け渡しを選んだつもりだったんです。
でもいざ報告パートを書く段階で、冷静になってみると……
> 「これ、定義的には『召喚』じゃないだろ……?」
という状態に。
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//// ◎じゃあ逆に、憑依も“召喚の一種”にしてしまえばいい!
で、ここで逆転の発想が来ました。
> 「魂が収まる“器”が違うだけで、召喚と憑依は同構造では?」
> 「召喚された魂がどこに入るかによって、分類が違うだけじゃん!」
この気づきで、一気に魔法理論の枝葉が整理されました。
- 魔力の箱に魂を収めれば「召喚獣」
- 他人の身体に入れれば「憑依」
- 死体なら「ゾンビ」、人形なら「ゴーレム」
- 術者自身を器にしたら「禁忌召喚」
つまり、全部「召喚魔法の一形態」として再定義できるじゃないかと。
ここで出来上がった語りが、劇中のこの説明です
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> 「普通、召喚魔法というのは――魔力で“箱”を作り、それをスピリットウォールの代用にして魂を収めることで成り立つの。
> 魔力を依り代にして“精神体”を作って、そこに対象の魂を埋め込む。
> その“箱”のエネルギーが変質して姿を持つのが、召喚された存在の『形態』よ。
>
> でも、それを他の生物や人間の肉体に直接流し込めば『憑依』。
> 死体に入れれば『ゾンビ』。
> 造形物や人形に入れれば『ゴーレム』になるわ。
>
> 全部、魔力で形成されてるから、スピリットウォールより不安定で崩壊しやすいの。
> ……そのラフィールがやったのは、おそらく『憑依』の部類ね」
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設定としては完全に“後付けの整理”なんですけど、やってみたら面白かったし、
結果的に魔法体系の統一感まで生まれました。
こうして、魂構造×召喚体系のルールが、自分の中でガチッと固まったというわけです。
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//// ◎副産物から得た理解:構築とは、あとからでもできる
この経験を通して思ったのは、
**「先に設定していたこと」からも、「書いてて気づいた違和感」からも、構築はできる**ということ。
もちろん、あとから理屈を整えるときは注意も必要です。
思いつきで捻じ込もうとすると、手前の描写が破綻することもある。
でも、前提が整理できていれば、理屈が枝のように伸びてくれる。
仕様が固まってくると、物語が転がしやすくなり、キャラたちの選択にも厚みが生まれる。
この瞬間、あらためてそれを実感したので、ノートとして残しておくことにしました。