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【生態観察記録・第六号】ミオリン

観察記録 - ミオリン

- 現在確認できている成熟株のおおよその特徴。
- 分類: 多年生の大型草本(暫定)
- 株の直径: 約100-130cm
- 高さ: 約80-100cm
- 葉の大きさ: 長さ約45-70cm、幅約20-30cm
- 葉の厚さ: 約7-10mm
- 主な生育環境: 湿度の高い森林内の陰地、腐植の溜まった岩の隙間や樹木の分岐部
- 色: 葉の表面は暗緑色から黒緑色、縁は淡い青緑色
- 確認地域: ミオリンの森

ミオリンの森に入ったとき、まず目についたのは、頭上から垂れ下がる暗い葉だった。

足元の岩陰にも同じ植物が生えている。近づいてみると、それぞれ別の株で、中心から伸びた葉が何枚も重なっていた。中央の葉は上を向いているが、外側の大きな葉は重そうに下へ曲がっている。

表面は黒に近い緑色で、光が当たってもあまり明るくならない。葉の縁だけが薄く青みを帯びていて、木陰に入ってもその色は消えなかった。何枚もの葉が重なる場所では、暗がりの中に細い輪郭だけが浮かんで見える。

葉を一枚持ち上げてみると、見た目以上に厚みがあった。表面には短い繊維が密集していて、触れると柔らかい布のような感触がある。指で押したところはゆっくり戻り、裏側には細かな窪みが散らばっていた。

足元に落ちていた裂けた葉片を拾うと、断面には大小の細かな空間が見えた。表面に近い部分は目が詰まっているのに、内側は柔らかい。水分もかなり含んでいるようで、採取袋に入れたあとも重さがあった。

森の奥へ進んだあたりで、腰の金具を爪ではじいてみた。

短い金属音は聞こえたが、いつものような響きが続かない。手元で襟を擦ると、指には布の抵抗が伝わるものの、耳にはほとんど音が届かなかった。

金具を手に持ち、腕を伸ばしてもう一度鳴らしてみた。指先には振動が残っているのに、聞こえた音は先ほどよりずっと小さい。葉の密集した場所では、何度試しても似たような具合だった。

少し前まで聞こえていた水の流れる音も、森の中ではほとんど分からなくなっていた。立ち止まって耳を澄ませても、遠くから返ってくる音がない。すぐ近くで何かが動いていても、気づくのは難しそうだった。

採取した葉の表面には細い繊維がびっしり生えており、内側にも複雑な隙間がある。これらが音を吸収しているのだろう。葉が少ない場所へ戻ると金具の音は幾分聞き取りやすくなったので、葉の重なり方も大きく関係していそうだ。

森を歩いている間、もう一つ気になったことがある。

風が止んでいるときにも、ミオリンの葉先がゆっくり動いていた。隣の葉は静かなままで、一枚だけが持ち上がり、時間をかけて元の位置へ戻っていく。

根元を調べても、何かが触れた跡は見つからなかった。葉柄の柔らかい部分には水分が多く、押すと形が変わる。葉の動きにもこの部分が関わっているのかもしれない。

以前回収した狩猟者の手控えには、ミオリンについて短い記述があった。

「音を食う葉。近いものは聞こえる。遠く、穏やかなものは聞こえない」

読み返してみると、妙に実感のこもった書き方だと思う。あの森を通った者なら、音が聞こえる距離をわざわざ書き残した理由も分かる。

帰り道、森の外縁に近づいたところで、足元の枯れ枝が折れる音を聞いた。

森の中でも何本か踏んでいたはずなのに、そのときは音を気にする余裕もなかった。

外へ出てから採取袋を開けると、持ち帰った葉片の縁が一部白く濁っていた。森の中では青みが残っていた部分だ。

乾燥による変化だと思うが、採取してからそれほど時間は経っていない。次は葉の縁を傷めずに持ち帰れるよう、容器を変えてみるつもりだ。

※ミオリンは『カイロ』本編に登場する植物です。

※掲載画像は、作中の植物をイメージしやすくするために生成AIを用いて制作した参考ビジュアルです。植物設定・生態・世界観・作品本文は作者自身が制作しています。

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