• 現代ファンタジー
  • 異世界ファンタジー

処刑前夜の求婚(仮題) 第17話『王立文書館』挿絵

 旧王国法典の写本は、私の腰ほどの高さの、巨大な冊子だった。司書が、両手で、慎重に、閲覧机の上へ運んできて、羊皮紙の頁を、一枚ずつ、めくっていく。

「筆証は、第九巻、文書の真偽に関する章にございます」

 老人の指が、ある頁で、止まった。

 細かい、古い字が、びっしりと並んでいる。私は、机の脇に立って、その一節を、小さな声で、読み上げた。

 文書の真偽、ことに筆跡の真偽につき争いあるときは、その文書の筆者を最もよく知る者、または筆者自身をして、衆人の面前にて筆記し、その筆跡の経過を示さしむることを得。これを、筆証と称す。

 筆証の結果は、いかなる鑑定にも優先す。

 筆証を求める者は、争いの相手方の同意、または、司教の許可を得ざるべからず。

 息が、止まった。

「優先する」

 声が、掠れた。

「いかなる鑑定にも、優先する、と」

「そのように、書かれております」

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する