第15話を公開しました。
今回も、派手な事件は起きていません。
誰かが暴走した訳でもなく、決定的な対立が発生した訳でもありません。
ですが個人的には、「これまでで最も危険な回の一つ」になったと思っています。
今回のテーマは、「合理化」と「自己証明」です。
綾乃は何度も「これは仕事だから」と自分へ言い聞かせます。
・技術系案件に適性があるから。
・会社の為だから。
・実績になるから。
どれも間違っていません。
問題は、全部正しい理由なのに、全部が理由ではないことです。
今回の綾乃は、前回より一歩進んでいます。
以前は、「照臣に会えるかもしれない」が心のどこかにありました。
しかし今回は、「照臣が来ない案件を選べば、自分は依存していないと証明できる」という発想へ変化しています。
ここが今回の怖いところでした。
照臣に会いたいからではない。
照臣に会えなくても選べるからだ。
そう説明しているのですが、その説明の中心にも照臣がいる。
一方の照臣も変化しています。
第14話の時点では、まだ「様子見」の段階でした。
ですが今回は、明確に警戒行動を取り始めています。
問い詰めない。
断罪もしない。
しかし、距離は取る。
そして、その為に紗季へ協力を求めます。
個人的に今回一番好きなのは、照臣と紗季の会話です。
照臣は真面目に、「肩へ手を置く」「必要なら手も繋ぐ」と言っています。
ただし本人は完全に危機管理の話をしています。
紗季は紗季で、「婚約者役を頼んでるのに危険物へ触る申請みたいな言い方をするな!」状態です。
作者としても書いていて笑いました。
ですが、この場面はギャグだけではありません。
綾乃視点から見ると全く別の意味になります。
照臣が距離を取る。
紗季がその距離を埋める。
綾乃には、それが非常に強く見えてしまう。
そして今回初めて、綾乃の中に「不公平感」が生まれます。
終盤の綾乃の思考も、今回の大きなポイントでした。
・自分なら急かさない。
・自分なら待つ。
・自分なら照臣の意思を尊重する。
という考え方です。
一見すると優しさです。
しかし、その「自分なら」という前提の中には、既に照臣が存在しています。
綾乃本人はまだ気付いていません。
だからこそ危うい。
また今回は、真澄と悠真の場面も重要でした。
真澄は過去に救えなかった人物を知っています。
しかし綾乃はその人物とは全く違う。
だから同じ兆候を待っていてはいけない。
けれど決めつけてもいけない。
その微妙な距離感を描きたかった回でもあります。
今回のサブタイトルは「婚約者の手」です。
作中では実際に手や腕が登場します。
ですが本質的には、誰が誰の隣に立つのか。
誰が誰を安心させるのか。
そして、その距離を誰がどう見ているのか。
そんな話だったと思います。
第14話では「二度目の偶然」でした。
第15話では、偶然そのものよりも、その偶然をそれぞれがどう解釈し始めたのかが描かれています。
そして気付けば、綾乃、照臣、紗季、真澄、悠真の全員が、少しずつ同じ問題を別の角度から見始めています。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。