第14話を公開しました。
今回も派手な事件はありません。
誰かが暴走した訳でもなく、決定的な出来事が起きた訳でもありません。
ですが物語全体で見ると、「非常に重要な転換点になった回」だと思います。
今回のテーマは、「二度目の偶然は、本当に偶然なのか?」です。
第13話では、綾乃と照臣が技術系展示会で再会しました。
あれは十分に偶然で説明できます。
・技術系案件を増やした綾乃。
・技術系イベントへ足を運ぶ照臣。
分野が重なれば再会する可能性はあります。
だから照臣自身も、その時点では深く考えていませんでした。
しかし今回、綾乃は、以前から取引のある化粧品メーカー案件を断り、大学講演会の案件を選択します。
仕事として見ても説明はできます。
・技術系司会の実績になる。
・将来的な仕事の幅を広げられる。
・会社にとってもメリットがある。
そして厄介なのは、「その説明が全部正しい」事です。
綾乃は自分に嘘をついていません。
ただ、そこへ別の理由が混ざり始めています。
今回の綾乃は、かなり危うい状態です。
しかし本人は自覚していません。
むしろ、「これは仕事だから」という合理的な説明を繰り返しています。
その説明は間違っていない。
だからこそ危ない。
この辺りは、今回かなり意識して書いた部分です。
また、講演会の内容そのものも、実は今回のテーマと重なっています。
講演の中では、
・研究成果を実用化する話
・属人化の問題
・経験の継承
・結論だけでなく過程を残す重要性
が語られます。
照臣が興味を示したのも、技術そのものより、「人がどう扱い、どう引き継ぐか」という部分でした。
この辺りは、第4巻以降のクラストロン編にも繋がる考え方です。
一方の照臣は、今回から少し変化しています。
前回までは、「たまたまだろう」で済ませていました。
ですが今回は、綾乃の口から「今回は、鷹野さんに評価して戴く為に受けた仕事ではありません」という、聞かれていない否定が飛び出します。
そして照臣は初めて、「何かがおかしいかも知れない」と考え始めます。
個人的に好きなのは、その後の会員制クラブの場面です。
照臣は即断しません。
綾乃を悪人認定もしませんし、過去の経験から警戒をするだけです。
けれど、「まだ何もしていない」とも理解している。
だからこそ紗季との会話が成立します。
紗季もまた、照臣の警戒を笑い飛ばさない一方で、「自意識過剰の可能性も残る」と釘も刺します。
二人らしい遣り取りになったかなと思っています。
そして最後、真澄が登場します。
今の段階では、
・照臣は警報を感じている
・紗季は様子見
・悠真はまだ知らない
・真澄は違和感だけを抱いている
状態です。
真澄自身、過去に「止められなかった人」を知っています。
だからこそ、まだ名前の付かない違和感を覚えています。
今回のサブタイトルは「二度目の偶然」です。
一度目は偶然。二度目も偶然かもしれない。
ですが照臣も紗季も、そして真澄も、少しずつ同じ方向を見始めています。
問題は、綾乃だけがまだ「偶然だ」と思っている事かも知れません。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。