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トレモロ 3巻 2章 8話



クラウンとヴァルは狂気の人々に掴まれたり、引っ張られたりして、もみくちゃになった。

クラウンもヴァルも必死で手を払ったり足で押さえて抵抗を続けた。チョコはクラウンを守ろうと、相手のズボンの裾を咥えてブンブン頭を振った。

「ゴースト行け!」スノー達は走り、ゴーストは瞬足で駆け、スノーは叫んだ。「フリーズ!」

狂気の人々はスローモーションになった。

ゴーストに追いついたスノーは、狂気の人々を跳ね飛ばし、仰向けになったクラウンを救いだした。

虎徹も狂気の人々を押し退け、その隙にブラストは壁際にしゃがんだヴァルを立たせた。

ハニは構えて言った。「いくよ!タクシス!ヴァル、サポートして!クラウン達はシャーマンを追って!」

ハニは狂気の人々を一つ目の部屋に押し返し、ヴァルはパワーでシャッターを閉めた。

ハニは踏ん張りながら、2つ目の部屋にも狂気の人々を少しずつ押し返す。

チョコは来た道を戻り、吠えながら走って行く。クラウン、ブラスト、スノー、虎徹、チョコ、ゴーストはシャーマンを追いかけた。

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イノセント刑事からコール。

「3階のシャッターが全て開いて、呪いにかかった者が大勢襲って来るぞ!煙を吸うな!ヘルメットを開けている者は閉じろ!ガスマスクモードだ!」

「3階に応援に向かいます!」ハニのコール。
ハニは3部屋目にも狂気の人々を押し込めた。ヴァルは扉を閉め、イノセント刑事達の元へ向かった。

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チョコは階段を地下に向かって駆け降りる。クラウンはマップを見ながら、シャーマンがスカラベから離れていくのを見て心臓が激しく鼓動した。焦りで転ばない様に、、逃したくない、、どこに逃げて行くのか、、チョコは中を通らずどんどん下に、、!?
クラウンは緊張が高まり少し震えた声でコールした。
「ヴァル、スカラベ内を無重力モードにして!」

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「OK〜スピリット!」ヴァルのコール。

ヴォォン。
宇宙船スカラベ内は無重力モードに切り替わった。

「良いわね!この方がやり易い!」ハニの目は輝いた。

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ヴァルとハニの調子の良い声を聞いてクラウンは落ち着きを取り戻し、虎徹に聞いた。

「虎徹さん、1階のロビーをパワーで一気に駆け抜けたいんだ。いい?」

「承知した!」虎徹は何をするか理解した。

2階のロフトに到着すると、スノーを中心にクラウン、ブラスト、犬達は一塊りになり、虎徹はスノーの背中に手を当てた。

「飛翔!」
虎徹は壁を蹴って、2階のロフトから地下の階段目掛けて、レーザービームの様に突っ切った。

「シシッ。追いつきそうだ!」スノーはマップを見ながら、サイプレス号のスタンバイを始めた。

ブラストのコール。
「シャトルで緊急発進します。外で待機してる皆さん、避けて下さい。」

警察官達は迅速に道を開けてくれ、美しく並んだ。

外に出たチョコはサイプレス号まで猛ダッシュし、みなも全力で駆け込んだ。

息を上げ、スノーは操縦席からシャーマンのマーキングポイントと照らし合わせて外を見たが目視では確認できなかった。

「シシッ。ステルスモードで逃げてるな。サイプレスの方が早い、追うぞ。」スノーは発進させた。

ブラストはサポートに入りながらスノーに言った。
「スノー、ブッチさんのアレ、使おうよ。」

「いいねー。シシッ。かますか!」スノーはマップを見ながらシャーマンのマーキングポイントまで全速力で近づく。

スノーはサイプレス号を護衛モードにし、絶縁弾を発射した。
ポン!ポン!ポン!
ビカビカと閃光が走り、逃げるシャーマンの小型船は停電した。ステルスモードが解除され姿を現した。

クラウンと虎徹は後方に走り、ドッキングの準備に入った。

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ードッキング完了しましたー
サイプレス号のアナウンスが流れると、スノーはシャーマンの乗った小型宇宙船の貨物入口にある緊急用の小窓を叩き割り、ハンドルを取り出して扉を開けた。

停電した薄暗い船内には香炉が転々とぶら下がっている。香が焚かれ、煙の筋がゆっくり流れている。

プリズムをまとったチョコは目の前の階段を上がり、2段残した所で振り返った。みな身を屈め、静かにその先を覗いた。

デッキの先でうめくアードウルフが見えた。
「む?討伐対象ではないようだ。」虎徹が囁く。

「どー見てもフツーじゃねー。」スノーはゆっくり立ちあがった。虎徹、ゴーストも続く。

折りたたみの椅子を引きずってアードウルフはうめきながら、ゆらゆら歩いて来る。

スノーが近づくと椅子を振り上げ襲いかかって来た。スノーは椅子を避け、タックルした。アードウルフを倒し、スノーは椅子を取り上げ、振り下ろした。背もたれの隙間にアードウルフを頭から被せ、椅子をはめ、3回転し、手を離した。

アードウルフが転がり、四つん這いになった所に、虎徹は思いきり腹の急所を蹴り上げた。アードウルフは泡を吹いて倒れた。スノーは屈んで、泡を吹くアードウルフの様子をみた。「血か?」アードウルフは腕や背中が血で濡れていた。

デッキの奥の大きな机の前で、シャーマンはぐったりしたアードウルフに器に入った液体を塗り付け、呪いの言葉を言うと、アードウルフは狂暴化した。

アードウルフは呪いをかけられ、何か言いながら向かってくる。「バケモノ、バケモノが、、ぐうう。」

みなも少しずつ前進する。
シャーマンの机の上が蝋燭の火で照らされ見えた。

机の上にはエンバーミングツールが散乱し、ウサギが一羽横たわっている。血しぶきや血まみれの布、そして小さな器に入ってるのは血の様だ。

シャーマンは次々とアードウルフに血を塗り、呪いの言葉をかけて、狂暴化させた。

スノーと虎徹は先頭に立った。アードウルフがスノーに殴りかかった。スノーは手をクロスガードしたまま壁まで押しやり、強くぶつけた。スノーはそのまま首に手を回し締め落としにかかった。

虎徹は殴りかかってくるアードウルフを避けたが、抱きつかれそのまま倒れこんだ。殴りかかるアードウルフの手を掴み、虎徹は片足をかけ三角絞めで落としにかかった。

クラウンとブラストは2人1組でアードウルフを交互に蹴り、クラウンは足元を狙ってスライディングし転ばせた。その上からスノーが体当たりし、そのまま締め落としにかかる。

近づいてくるギルドに慌てたシャーマンは次のアードウルフを狂暴化させる為、足元の檻からウサギを引っ張りあげ、出した。机の刃物を取ろうと伸ばす手に犬達は飛びかかった。

ゴーストの牙がシャーマンの腕に食い込み、シャーマンはウサギを離した。「あああ!」

ウサギは逃げ、机の下で怯えた。

ウサギを見たブラストは構えた手を下ろし、走りながら高く飛び上がりシャーマンの肩に飛び蹴りした。

よろけたシャーマンめがけてクラウンも走り、脇腹に飛び蹴りし、そのまま机の上に立って、シャーマンの首元を蹴った。

ブラストは立ち上がる時に、シャーマンの片足を勢いよく持ち上げ、シャーマンを机の上に倒した。

クラウンは刃物を拾い上げ、牛の頭蓋骨の仮面を掴み、剥がそうとブチブチと革紐を切った。

「いいぞ!クラウン!」ブラストは机の上で暴れるシャーマンの腕を背中に回し、馬なりで机に押し付けた。

ブチ!ブチ!
クラウンはシャーマンの仮面の革紐を頭頂部まで切り裂く。

「シシー!マスク剥がせ剥がせー!」スノーはアードウルフを締め落としながら、クラウンを応援した。

シャーマンの腕にゴーストが噛みつきぶら下がり、チョコは足首を噛んでぐいぐい引っ張った。

「ああああ!」シャーマンは痛みに絶叫した。

カラン!
牛の頭蓋骨の仮面が剥がれ落ちた。スタンリー兄弟と同じ顔が見えた。

クラウンはシャーマンの顎を押し上げ、スノーに向けて机の先に顔を反らせた。
「スノー!」

スノーは攻撃してくるアードウルフを片手で押さえつけながら、腰のベルトからスリープスタンプを抜き取り、背面に投げた。

「虎徹!」

虎徹はアードウルフを締め落とした瞬間、目の前に落ちてきたスリープスタンプをキャッチした。くないの様にシャーマンに向かって投げた。

スリープスタンプがシャーマンの額に命中し、眠りについた。

クラウンのコール。
「シャーマン確保しました!」

警察官達のコール。
「了解!確保完了!」
「やったー!捕まえたぞ!」
「これから護送シャトルで向かいます。」

イノセント刑事からのコール。
「こちらも制圧完了した。呪いにかかった人達を病院に搬送する。また後で落ち合おう。よく生かして捕まえてくれた!協力に感謝する!」

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3章に続く。

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