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トレモロ 2巻 1章 7話

みなワクワクした顔で虎徹がzoneから出るのを待った。
3dプリンターが起動した。みな期待に目が輝いた。
「シシッ!」スノーが鼻息を荒くした。

しばらくして虎徹が驚いた表情で出てきた。
「拙者、ギルドになった。世話になる。しかし中での体験はすごかった。」

「よろしくな!シシッ!」みなも「よろしく!」と元気に言った。

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虎徹は見るもの全てが珍しいらしく、船内を犬達と何度も回り、特にハニの車に興味を持った。

「あの車で月を走れると?」虎徹はハニに質問した。

「そうよ。カエサル、かっこいいでしょ?」ハニは誇らしげに言った。

「ねえ、みんなでアビリティのシュミレーションして遊ぼ。」ハニはウキウキしながら、みなをサイプレス号に集めた。

月に着くまでの4時間、モニター前に集まりアビリティがキマる度に拍手して盛り上がった。

ロックミュージックが船内に鳴り響き、クラウンとブラスト、スノーは宙族かと思いビクッとしたが、3dプリンターの終了のアラームだった。「ブッチの仕業だ。シシッ!」

虎徹のギルドスーツが完成した。虎徹は一つずつ丁寧に取り出した。鎧は筋肉の様な仁王胴、魚鱗のスーツ、袴、ブーツ、般若の下半面など全て墨の黒色だった。

「鞘まである!」クラウンはワクワクしっぱなしだ。
ロックが鳴り響く中、虎徹はギルドスーツに着替えた。

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ムーン・ステーションに到着した。
インフラが完全でない為、シャトルは停泊できても一般の小型の宇宙船だけでは停泊できないエリアだ。

5人と2匹はドックに降りた。
早速チョコのイカロスを使ってエレメント・ストーンの場所を発見した。
カエサルに乗り、ハニの運転でマップのポイントを目指した。

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荒野の透明のドームに到着した。
看板にはアンゴラ牧場、ウサギのキャラクターUSAが描かれていた。
みなで入場券を買ってドームに入った。
柵の中に2mの大きなアンゴラウサギがたくさんいた。

チョコからプリズムが出て、ピョーンピョーンと跳ねながら追いかけるハニ。
20分ほど歩くと、木々の上から白いふわふわが見えた。

高さ5m長さ30mのジャンボアンゴラウサギが寝そべっていた。足の裏が真っ平らで、息はしてるが全く動かない。

「デカー!」ブラストははしゃいだ。
「ヤバい!みんなで撮ろう。」ハニは記念にログに残した。

チョコがクンクンしながら進むと、ウサギの腹の横辺りでプリズムは消えた。

「え!ここ?」クラウンは頭を抱えた。

最初は音を立てたり「USAさーん!」と呼んだり、ディスプレイに人参を映して見せたり、色々試したが、ウサギはビクともしなかった。

話し合って、結局みなワッペンを合わせた。

「よしっ!オレから。ちょっとおどかすだけだからね。ショックウェーブ。」
バン!白い毛がふわっと揺れただけでビクともしなかった。

「シシッ!オレが行く。シェル!」スノーは横っ腹を全力で押したが腹の肉が少し寄っただけで、ビクともせず、時間切れになった。

ゴーストが飛び出して尻尾を振った。チャレンジしたそうだ。
スノーは半信半疑で「フリーズ。」と言った。

・・・。

時間切れになった。

「なんの時間だ!かわれ!」スノーがつっこむと、チョコも元気いっぱい飛び出した。

「はいはい、やりたいのね。どうぞ。」クラウンがチョコに言うと、可愛い仕草をしたり、ウサギの顔の前でくるくる回った。

「チョコちゃんもお下がり下さい。」ハニもつっこんだ。

ハニは構えた。「タクシス!」

黄緑のネオンカラーのオーラがウサギを包んだがビクともしなかった。「ううーん。こんなでかいの無理よ。」ハニは肩を落とした。

残った2人を見た。

クラウンは手と首を横に振って、慌てて言った。「僕は辞退するよ。」

虎徹はウサギをよく観察していた。
「参る!」刀を抜いた。
みなビックリしたが見事な刀さばきに見惚れてしまった。
「飛翔!」跳躍のアビリティを虎徹は使った。
虎徹はジャイアントアンゴラウサギの周りを華麗に飛び回り、ふわふわの毛を30秒で切り終えた。ジャイアントアンゴラウサギは角刈りになった。

ウサギは「ふうー。」息を吐くと伸びをして45mくらいになった。ブルブル!ウサギは立ち上がり、のそのそ歩いて行った。
白い毛が舞う中、虎徹は刀を鞘に納めた。

「おおー!」みな拍手した。チョコが光りだし、キラキラ黒く輝くエレメント・ストーンを発見した。

「みんなありがとう!」ハニは大喜びした。

ドームを出る時、オレンジのカヌン色の袈裟を来た僧侶が合掌して立っていた。虎徹は大きな袋を渡され、中を見ると刈り取ったジャンボアンゴラウサギの毛が入っていた。お互いに一礼をしてアンゴラ牧場を後にした。

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シャトルに帰り着くと「ブラスト!zone使ってもいい?」ハニは黒くキラキラ輝く石を握りしめて言った。

「もちろん!」ブラストは手を横に出し、どうぞのジェスチャーをした。

「ありがとう!」
ハニはポッド内にエレメントストーンを置いた。キネシスのアビリティがパワーアップして対象範囲が広がった。

モニターにはタクシスを使うハニのアバターがループしている。

「これでジャンボアンゴラウサギくらいなら持ち上げれそうね。」

ハニは笑顔でポッドの退室を押した。
サイプレス号はアースに向けて飛び立った。

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虎徹が帰還の知らせを送ると、天狗様からメッセージが届いた。
ー虎徹、仲良くやっとるか?メイコー・ステーションによっとくれ。所在は図にて。渡辺トキオー

4時間後。
メイコー・ステーションに到着した。
夜の港には黒船や戦艦が何隻も停泊していた。

夜なのに明るくド派手な街並みに目を奪われた。
名古屋城はライトアップされ屋根の先のシャチホコが金色に輝いていた。

天狗様から届いた図の案内に従って、メイコーストリートのワンデイパスを購入した。「NAKED Nightにようこそ!」アナウンスが流れた。ゲートをくぐり、夜の繁華街に出ると色んな種族や観光客、若者で溢れていた。

光る長方形の旗が並ぶ道を歩くと名古屋城に迷わず着いた。

大きな光るトラのホログラムが門の前をうろついている。天狗様はその虎を眺めながら待っていた。
「よー。もう帰って来たか。まだ月に生き物はおったか?」

「おっきいウサギがいました。ほら。」クラウン達はみなで撮ったログを数枚見せた。
「よー。涅槃ウサギじゃ。かかか。」
「よー。地球は青くなりすぎじゃな。」
背景に写ったアースを見て天狗様は少し悲しい顔をした。

兼定がいつのまにか、門に寄りかかって立っていた。
虎徹が気づいて駆け寄り、アンゴラ牧場でもらった大きな袋を見せた。

「高級アンゴラの毛だな。貴重品ぞ。」兼定は喜んだ。

「毛刈りしてないせいでバテていました。牧場の僧侶にもらった物ですが、兄さんへお土産です。」

「いいのか?有り難く。虎徹、ギルドの鎧姿も中々よ。」兼定は虎徹の肩を掴んだ。

「ありがとうございます!」虎徹は嬉しそうに一礼した。

天狗様がライトアップされた庭に行こうと歩き出した。
みながベンチに座ると天狗様は立ち上がって話し出した。

「みな、黙ってよー聞け。明日、秋の合戦の為の私掠免許が発行される。鬼どもはそれまで手出し無用の約束を破り、攻め込んで来た。わしは竜宮城を奪還して私掠免許を叩きつける。斥候の話では鬼の司令官は精鋭部隊をつれて竜宮城の海上部、天守閣におる。そこでじゃ、ギルドの皆様にお頼み申す。もちっと力を貸して下され。どうか光の道を歩いていけますように。」

天狗様は庭の芝生に座り頭を下げた。

慌てた兼定が天狗様の横に座った。
「なぜにギルドを重宝されるのです。私達で太刀打ちできますぞ。」

「よー。それもある。じゃがこの先の未来はどうか?これまで来日したギルドの者達を良く見たか?連合の勇志達に引けをとらん。どんどん陸地がすくのーなって、貴重な自然や海の中の平穏もなくなってしもて、わしは悲しい。まごろくに頼んでハニちゃんを呼んだのは、わしじゃ。わしは里山計画を見て未来に希望がもてたぞ。」

「明日の連合会議でHOMAREの今後をお決めになるそうですが、ギルドの参入ですか?」兼定が顔を近づけた。

「よー。その前に本音で話させてくれ。未来の長は虎徹じゃ。しかし、それはだいぶ先の話じゃ。それまでは兼定に託す。まごろくは現場が良いと前から聞いておる。」

虎徹と兼定は驚いた。

「明日は奪還に向けての作戦会議がメインじゃ。ギルドの皆様には奪還に加勢してもらいたい。どうじゃ?」

「私はやるわ。」ハニは即答した。

「よー。鬼に金棒じゃ。この場合の鬼はのー、、」

天狗様が話してる中、クラウン、ブラスト、スノーはお互いの顔を見て話し合った。「いけるか?」「う、うん。」「もちろん!」
「オレたちもやるよ!」
スノーは虎徹を見て言うと、虎徹は深くうなずいた。

天狗様は立ち上がり、兼定に手を差し出して立たせた。
「戦で犠牲を出しとうない。理想やと、どこか諦めて生きて来た。わしらも大胆に攻める時が来たか。やはり兼定の反応をみて、他の連中はもっと反発するやろなあ思た。わしが必ず説得する。それまで里山村で修行でもして、反撃に備えてくれ。作戦が決まったら連絡する。以上じゃ!兼定、秋の合戦が終わったら、HOMAREを託すぞ。よいな。」

「はっ!」兼定は複雑な顔でうつむいた。
虎徹も何も聞かされてなかったのだろう、うつろな顔になっていた。

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別れ際、虎徹も里山村で一緒に修行する様に天狗様に言われていた。

メイコーストリートに戻ると繁華街に繰り出そうと誘われたが、クラウンと虎徹は断った。苦手の様だ。

サイプレス号に戻り、静かに過ごした。
沈んだ顔の虎徹。
クラウンが団子を差し出した。

「うまいな。」
虎徹が少し笑った。
チョコは虎徹の足の上にのそのそ乗った。

「スノー殿はギルドとmcsを行ったり来たり、行き詰まってはおらぬのだろうか?」虎徹はチョコをなでながらクラウンに聞いた。

「スノーは二刀流で行くって言ってたよ。」クラウンは団子を食べた。

「流石!拙者も見習おう。クラウン殿もう一つ団子をくれ。」

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夜中にガサゴソ。チョコは起きてロビーに走って行った。
「チョコ〜!イエー。」
「ウエイ、ウエイ。」
「シシー!あれ?もう寝てんのか?」

騒がしいのが帰って来た。

「起きろ〜!クラウン!いいもん買って来たぞー。」ブラストはクラウンのほっぺをぐりぐり押した。
「虎徹ー!長オメデトー!シシッ!」スノーは虎徹の横に倒れた。
「んー、拙者はまだ、、グー。」
「もーなにー?明日でいいよー。」クラウンの意識は薄れ、眠りに落ちた。

ガバ!

再び意識が戻ると、みな雑魚寝していた。
仰向けになると横でハニが寝ていた。ラメの縁にブルーのレンズ、星のサングラスをかけていた。その横でブラストはピンク、スノーはパープルの同じサングラス姿にクラウンは笑った。
その声で虎徹も起きて笑った。

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虎徹とクラウンはロビーでヨガをしていると、ハニがいつもの感じに戻って現れ、一緒にヨガと瞑想をした。

いつまでも寝てるブラストとスノーをクラウンは起こしに行った。
「起きてー。ブラスト、袋開けていいー?」

クラウンは散乱したアンダーグラウンドのショップバッグをいくつか開けて着てみた。通りかかった虎徹を呼び止めた。「あ!虎徹さんも似合いそう。」

「ぬー!」ブラストが伸びをして目覚めた。
全身アンダーグラウンドに身を包んだクラウンと虎徹がこっちを見ている。
「似合ってるし。」ブラストがつぶやくと、なぜかプレゼントした感じになった。

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続く。

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