《M-Role 情動同期観測ログ(抜粋・注釈付き)》は、
胎識院(GCF)がまだ「完成していなかった頃」の記録をまとめたものです。
本編で描かれている胎識院は、
人工人格を M-Role(母体役被験者) を核として
安全に形成することを前提とした施設ですが、
このログに登場する M-Role は、
あくまで「感情の基準値を与える役割」として配置されています。
しかしログが進むにつれて、
彼女は“母親”であることをやめ、
環境そのものの一部へと変質していきます。
重要なのは、
この過程が当時の運用基準では
異常として扱われていなかったという点です。
注釈にもある通り、
多くの兆候は「軽微な変化」や
「心理的投影」として処理されました。
結果として残ったのは、
人格でも、記憶でもなく、
「安心が常在する環境」だけでした。
この事例は、
胎識院が
人格を作る装置である以前に、
人格を必要としない状態を作れてしまう装置
であることを、最初に示した記録でもあります。