CARCOSA

カルコサは、人の世界に完全には属していない。

この都市は、現実がかろうじて形を保つ境界に存在し、
法則が絶対性を失い、理性が静かに崩れ落ちていく場所だ。

不自然なほど白く、滑らかな建造物は、
時間という概念そのものを拒むかのように佇んでいる。
空には源のない病的な光が満ち、
その下を歩く者は皆、
自らの存在が何か眠れるものを揺り起こしてしまったかのような錯覚に囚われる。

カルコサにおいて、沈黙は決して空虚ではない。
それは――見ている。
そして、聞いている。

古き者たちは語った。
この都は統治されているのではなく、
“保たれている”のだと。
まるで、名もなき何かが世界の喉元を掴み、
崩壊を先延ばしにしているかのように。

長く滞在した者は、やがて同じ夢を見る。
あり得ぬ構造の塔。
黄色のヴェールに隠された玉座。
そして、どの空にも属さぬ“視線”。

カルコサは脅かさない。
ただ、待っている。

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