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カクヨム 志乃原七海 1周年記念特別企画2

## エピソード: 激闘!花嫁の弾道

壬生さゆりによる第一射は、警備隊の隊列のわずか手前、濡れた石畳を打ち砕いた。彼女の「不殺」の信念はまだ保たれていたが、その銃声は戦闘開始の合図となった。

「撃て!ただし、致命傷を避けろ!生け捕りにするぞ!」

警備隊の指揮官が叫ぶと同時に、一斉に催涙ガス弾と低致死性のゴム弾が発射された。

さゆりは、本能的な動きで銃口を上に向け、ガス弾が届く前に教会の入り口の階段を駆け上がった。ドレスの裾が濡れた石段を這い、足元の水たまりが跳ねる。

**ドォン!** 催涙ガス弾が彼女の足元の石畳に着弾し、白い煙を上げ始めた。

「くっ…!」さゆりは咳き込みそうになるのを抑え、銃を構え直した。

彼女は、教会のアーチを背に、煙と雨の中に浮かび上がった。次の瞬間、彼女のアサルトライフルのマズル(銃口)から、地獄のような炎が噴き出した。

**バババババ!**

オレンジ色の爆炎と火花が、雨粒の中を突き破る。さゆりの放った弾丸は、正確に警備隊のシールドや、彼らが遮蔽物としているパトカーのタイヤを狙った。

**ドシュッ!**

彼女の狙いは驚くほど正確だった。警備隊員が構えていた強化プラスチック製のシールドが、高熱を帯びた弾丸によって打ち抜かれる。そして、前線にいた二人の隊員が、タイヤの爆発によって一瞬バランスを崩した。

さゆりはその隙を見逃さない。彼女は二歩踏み出し、階段の一番上、教会の入り口に立つ。彼女の背後にはステンドグラスの温かい光があるにもかかわらず、彼女自身が、雨と炎の中に立つ戦場の女神のように見えた。

「来るなら来い!私を止めたければ、踏み越えていくしかない!」

彼女の放った弾丸は、ただ威嚇するだけではなかった。それは、隊員たちの装備を破壊し、彼らの動きを封じるための緻密な計算に基づいていた。彼女は人命を奪うことを拒否しつつも、相手を無力化するスキルを持っていた。

警備隊員たちは動揺した。まさか、ウェディングドレスの女性が、これほどの戦闘能力を持っているとは予想していなかったからだ。さらに、彼らは上官からの「殺すな」という命令に縛られていたが、さゆりにはその制約がない。彼女は自由に、致命的でない範囲で攻撃を仕掛けてくる。

隊員の一人が側面から回り込み、閃光手榴弾を投げつけた。

**パァン!**

強烈な光と音が周囲を包む。さゆりは一瞬目を閉じたが、訓練された反応で教会の中へと後退した。しかし、彼女の視覚が回復するまでのわずかな間に、警備隊はさらに接近した。

「今だ!突入!」

三人の精鋭隊員が、催涙ガスの煙を突き破り、階段を駆け上がり始めた。彼らは低姿勢で、さゆりのライフルから放たれる可能性のある弾道を警戒している。

しかし、さゆりの戦略はまだ終わっていなかった。彼女は、教会内部のアーチの影に身を潜めながら、銃を下部のステップに向けて撃ち込んだ。

**ザバァン!**

数発の弾丸が、水たまりの真ん中を打ち抜き、大量の水しぶきを正面の隊員たちの顔面に浴びせかけた。視界を奪われた隊員たちがひるんだ瞬間、さゆりは再び火炎を噴射する。

「うあああ!」

銃弾は、彼らの脚部アーマーをかすめ、地面にめり込む。痛みと衝撃で隊員たちは階段から転げ落ちた。

雨、煙、銃声、そして飛び散る水。

さゆりはまだ立っていた。白いドレスは泥と雨で濡れそぼり、彼女の顔には緊張と闘志が刻まれていた。彼女の逃走は、単なる逃走ではなく、彼女自身の信念をかけた壮絶な抵抗戦へと昇華していた。

彼女は銃弾を装填し直す。

「まだ終わらない。私の完全犯罪は、ここで終わらせない!」

彼女の目の前には、依然として警備隊の隊列が立ち塞がっていたが、彼女のライフルは、その聖域への侵入を、断固として拒み続けていた。

2件のコメント

  • コメントありがとうございました。
    辛口が上限のようです。
  • 辛口ではなく、ダメ出しをしろ!これでメンタルへし折りますから笑
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