自主企画の枠でKADOKAWA児童書編集者主催で「人工知能×青春小説」を募集していますね。自分もこっそり応募作品を拝見しています。昨今、生成AIを使って講義のレポートを書かせたり、要約やファクトチェックをさせたりする行為が問題視されています。確かに不正や思考力の低下を懸念するのも無理はありません。ですが、私はこう考えます。科学の目的は、『知性の共有』であると。電卓が発明されたとき、人類は「計算力」を共有しました。インターネットが普及したとき、人類は「知識」を共有しました。自動翻訳によって、「語学力」ですら共有できるようになりました。これらの技術によって社会は衰退したのでしょうか? いいえ、社会は発展したでしょう。事実、電卓の普及によって暗算が苦手な人でも会計仕事ができるようになり、インターネットによって必要な情報やニュースをすぐに得られる時代が来ました。もしAIの力を借りることで、これまで議論に加われなかった人々が、賛成や反対の声を発信できるようになるとしたら。それは科学の成功だと、私は思います。もちろん、新しい技術は、新しい問題を生むでしょう。しかし、問題があるなら、みなで議論して解決策を見つければいいのです。それが科学の発展であり、そうして人類は発展してきたのですから。みなさんの人工知能への熱い思いのこもった作品をお待ちしています。

ピックアップ

剣と魔法と銀河帝国 お菓子がつなぐ三角貿易

  • ★★★ Excellent!!!

 フリーターの遠峰遥斗の住むアパートに突然現れた扉。それは、異世界へと通じるゲートだった。

 本作は、いわゆる現代の商品を異世界に持ち込んで一攫千金を狙う異世界貿易ものですが、特徴的なのは、剣と魔法のファンタジー世界「エリドリア」と、遥かな銀河を旅するSF世界「ガルノヴァ」という世界観のまったく異なる2つの世界を行き来できるという点です。

 エリドリアでは素朴な村娘のイリスと出会い、ガルノヴァでは姉御肌の宇宙船乗りのヴェラと手を組み、遥斗はそれぞれの世界で商売を展開します。日本のスーパーで当たり前に売られている駄菓子も、異世界では希少品。争うように買っていくお客の熱狂ぶりが可笑しいです。

 遥斗も、単なる金儲けだけでなく、ヒロインを救おうとしたり、子どもを喜ばせようとしたり、お人好しな一面が垣間見えて好感が持てます。

 物語はまだ最初の商売をやり遂げた序盤も序盤ですが、魔法と科学、異なる世界が結びついたとき、いったい何が起こるのか、先の展開がまったく読めません。遥斗が持ち込む現代の品々を皮切りに、今後登場する異世界の魔法アイテムや、ハイテクガジェットが巻き起こす大騒動に期待が高まります。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

底辺ニート経営者とクセ強美少女VTuber! 奇跡のアイドル物語

  • ★★★ Excellent!!!

 急逝した父親から、潰れかけのVTuber事務所を相続した底辺二ートの青年・甲斐勉。ひょんなことからVTuber志望の4人の少女と出会った甲斐は、彼女たちと事務所の再興をかけてVアイドルを目指すことに。

 主人公・甲斐がプロデュースを引き受けた少女たちは、いずれもクセの強い問題児ばかり。引っ込み思案であがり性なさくら、お嬢様で中二病な楓、関西弁で芸人気質な風華、そして無口でマイペースな美雪。可愛いけれどアイドルとしてはポンコツもいいところ。しかし、そんな一癖も二癖もあるキャラクターが逆にウケてしまうのが、VTuberという特殊な業界の面白さなんですよね。

 大失敗を繰り返しながらも、ゲーム実況をしてみたり、歌枠をしてみたり、苦手な事にも果敢に挑戦して、登録者数をじわじわ伸ばしていく少女たちの成長ぶりが微笑ましいです。

 さまざまな危機を乗り越え、趣味も性格もバラバラなメンバーたちが、いつの間にか同じアイドルを目指す「仲間」になっている光景に胸が熱くなります。

 現実では敬遠されがちな欠点も、裏返せば「自分らしさ」という武器になる。笑って、泣いて、夢を目指す、VTuber黄金時代の王道サクセスストーリーです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

この道の向こうへ! 仲良し女子高生たちの原付キャンプ旅

  • ★★★ Excellent!!!

 鎌倉で暮らす女子高生たちが、原付バイクに乗ってキャンプ旅に出かける。そんな賑やかで楽しい青春物語です。

 高校進学を機にバイク通学を始めた育美、晶、優子の幼なじみ三人組。普段から通い慣れた道や見慣れた風景も、原付バイクで走ると新しい景色が広がる。

 原付バイクに魅了された三人は、自分たちでキャンプ旅行を計画する。宿泊先のキャンプ場を探し、ルートを調べ、食事のメニューを考え、キャンプ道具を用意する──そんな地道な準備もまた、ワクワクしてくる楽しい時間なんですよね。

 道中の道の駅で御当地グルメ味わったり、見知らぬ人と交流を深めたり、キャンプ場でテントを設置し、食事を作り、焚き火を囲んで夜空を見上げて星を眺める。ときには温泉で心と身体を癒やし、ときには悪天候に遭って大変な思いをすることも。楽しいことも辛いことも、青春の思い出に刻んでいく彼女たちの若さが眩しい。

 地元や家族のもとを離れ、まったく知らない土地で未知の体験をする。ちょっとだけ大人の仲間入りをしたような、ほんの少し自分が成長した感覚を味わえるのも、旅の魅力のひとつでしょう。

 原付バイクに乗って、次はどこへ行こうか。読めば思わず旅に出てみたくなる、バイク愛と旅情に溢れた一作です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)