新年度を迎え、新たな環境に身を置かれる方も多いのではないでしょうか。期待と不安が入り混じるこの時期、人によっては少し疲れを感じることもあるかもしれません。そんなときこそ、リラックスできる読書のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
春らしい作品を手に取りたくなるこの時期ですが、今回はあえて「ダーク&シリアス」をテーマに、数多くのご応募の中から厳選した4作品をご紹介いたします。ヤンデレ妹による究極の狂愛劇、記憶喪失の青年と謎の子供が出会い壊れた世界で希望を探す近未来の物語、死を繰り返す少年が神に挑む異世界SFミステリー、スラム生まれの少年と〝天国〟生まれのお嬢様の残酷な恋物語の4作品です。ぜひお楽しみください。

ピックアップ

ようこそ狂気で歪んだ悪夢の中へ…まあ、夢じゃないんですけど

  • ★★★ Excellent!!!

――それではSAN値チェックのお時間です。ダイスを振ってください――

胸糞耐性のない人は、焼き付く壮絶な情景描写に悶え苦しみ、そうでなくとも、言葉および語彙力を失うことになるだろう。

まず一読した者は、必ずと言っていいほどその躍動感に目を奪われる。速度? 勢い? いいや、「緩急」がこれまでかと効果的に表現されている。ゆったりとした動き一つとっても、それが「蠢く」ものなかのか「這いよる」ものなのかを、視覚、聴覚、嗅覚、触覚に訴えかけて、リアルな質感まで描く出される。

いわんや、戦闘シーンだ。サバイバルホラーとあるだけあって、凄まじいの一言。グロテスクなはずなのに、その鮮明な描写には恐ろしいほどに「美しさ」を感じてしまう。


そうなれば、待ち受けているのは、ヤンデレなどという軟なものではない。あるのは、救いようのない理不尽と、這いよる恐怖。狂気に歪みきったラブストーリーが展開される。次は、香澄(ヒロイン)の口から一体どんな言葉が飛び出してくるのか……次は一体どんなことをするのか……絶望しかないのは分かっているのに、繰り出される展開には主人公同様に心臓が早鐘つ。

読めば読むほど深まる謎と、嫉妬と憎悪と狂愛の世界。

レビューでは、言葉を足せば足すほど、作品の良さが損なわれてしまう。この程度しか表現できないのが本当に悔やまれる。


一話一話が重厚で、読了後の満腹感は相当なもの。
骨の髄まで味わえる、ダークファンタジー。

「最後まで読んでよかった」と心から思える作品です。

  • ★★★ Excellent!!!

「地獄にも花が咲くことを知ってる」。これはこの作品のキャッチコピーなのですが、ホントカッコいいですね。こんなの見てしまったら、思わず読んでしまいますよ。
作品の中身といえば、キャッチコピー以上に引力がありました。
そして読み終えて思ったのは、この作品には、このキャッチコピーしかないってことでした。

こちらの作品、「地獄」とある通り、読者のメンタルを削るほどのパワーを持っています。
殺し屋や殺人者などがたくさん出てきます。おぞましいシリアルキラーや、人の道から外れた人たち、常軌を逸した価値観を持つ人々、そんな怪物のような悪役が次々と現れます。主人公の一人がまず殺し屋で、主要登場人物はみんな仄暗い過去を持っています。
ですが、登場するキャラクターの背景や心理描写などが、本当に丁寧に描かれていて、好きなキャラクターや感情移入できるキャラクターを必ず見つけられると思います。特に主要人物たちは、話が進むほどにだんだんと、持っている信念を感じられるようになってきて、愛着がわいてくると思います。

基本的には、容赦ない展開の続く、血生臭く、シリアスで、重厚な物語です。
そしてそれ以上に、愛や命の尊さ、希望にまつわる物語でもあります。
一見、正反対の要素のようですが、自然に噛み合っていて、まるでもう一つの現実を見ているような気がするほどでした。

ボリュームのある物語ですが、だからこその面白さ、だからこそ得られる感情があります。
また、大枠のストーリーがありながらも、一つの章で切りよく事件が解決しますし、込められたテーマも章によって様々ですので、最後まで飽きることなく読むことができると思います。むしろ後半になるにつれて、「もっと続いてほしい」と思えてくるんじゃないかと思います。

魅力的な登場人物たち、群像劇としての面白さ、親しみやすい日常描写、迫力のアクション、謎めいた陰謀、明かされていく過去、都会的でクールな会話、とことん硬派ながら時に感傷的な文章、知能戦や泥臭い肉弾戦、荒廃した世界の細かな描写、などなど様々な魅力にあふれた作品です。

読んで間違いなしの傑作だと思います。ぜひ一度読んでみてください!

死がループする 謎が謎を呼ぶ 大切な人のために戦う異世界ミステリー!

  • ★★★ Excellent!!!

襲いくる死の恐怖
死は出会う人々の命を奪う
自身が死を迎えたとき
恐怖がまたループする

一つの謎が解けると、一つの謎が増えていく
限りなくループする世界に希望はあるのか?

一日一日を乗り越え、大切な人と出会う
友情と愛情に育まれる、心穏やかな日常
ループするたび友との初めてをやり直す

希望を見つけたとき
絶望へと変わる世界

少年はあらがう
大切な人たちのために、その勇気を奮い起こす

かけがえのない仲間とともに運命と立ち向かう!
それぞれの運命を切り開くことができるのか!?
主人公と仲間たちの熱い想いが未来の扉を開く!

死と謎が渦巻く、ミステリーなダークファンタジー!
秘められた謎を、最後の結末まで見届けてほしい!!!

天国と地獄の狭間に咲いた魂の愛

  • ★★★ Excellent!!!

 あなたはこれまで、雷に打たれると形容するに相応しい読書体験をしたことがどのくらいありますか?

 これは単なる恋愛譚ではない、魂を抉るような感情の奔流に溢れた文学作品です。舞台はスラム街という名の地獄。そこで出会った少年と少女の愛は、闇を照らす一筋の光。
 スラムに生きる少年デュランと、富裕層の少女アネモネの出会い。住む世界が異なる二人はそれでも互いに惹かれあい、初々しい愛を育みますが、不条理なほどに過酷な運命と現実の前に引き裂かれていきます。アネモネを守るために罪を犯し転落していくデュランと、引き離されてもなお彼を愛し続けるアネモネ。二人の人生、その生き様が読者の胸に強く強く響きます。

 たった10話の中に描かれる圧倒的な世界観と情景描写、そして登場人物たちの見事な感情描写。舞台となるスラム街の描写は非常に生々しく、貧困と暴力、そして絶望が容赦なく描かれます。その中にあってデュランとアネモネの愛はどこまでも一途で美しく、このコントラストが物語に深い切なさと感動を与えます。
 またこの物語には、様々な愛と罪の連鎖が描かれます。親から子へ、愛から憎しみへ、そしてまた新たな罪へと、連鎖は断ち切られることなく続いていきます。母親の愛はデュランに復讐という名の罪を植え付け、アネモネの愛は結果としてデュランを取り返しのつかない運命へと導きます。罪はとどまることなく、復讐の連鎖はさらに他の人物へと引き継がれていきます。

 この物語からは、作者が自らの魂を削って書いたことが痛いほど伝わってきます。「天国」と「地獄」の鮮烈な対比、登場人物たちのとめどない愛情と憎悪、そしてどこにも救いのない不条理。これらは全て、作者が自身の内面と深く向き合い、苦悩しながら紡ぎ出したもの。その魂の叫びは、読者の心を強く揺さぶり、忘れられない爪痕を残します(詳細は同作者のエッセイに書かれており、そちらを読むことで本作がより深く理解できます)。
 冒頭で雷に打たれると書きましたが、私にとって、この作品は間違いなくそのような体験をもたらしてくれました。

 人間の業、逃れられない運命、愛と罪、復讐と赦し。わずか8万5千字あまりの中にその神髄全てを描き切った名作。私がこの物語から得たものを、ぜひ皆さんにも感じていただきたいと思います。