本日は9月1日。関東大震災から100年とのこと。遠い昔の話のように思えて、まだ100年しか経っていないのだな、という気がいたしました。この機会に、皆さまもおうちの防災設備を確かめてみてはいかがでしょうか。
さて、今回は酷暑にもいいかげん疲れてきたよ……という方に向けて、涼しげな、妖しいものたちにまつわる物語を持ってまいりました。
不気味な噂のある、絶海の孤島を探索しに訪れた大学院生の末路を描く、背筋の凍るような伝奇ホラー。あるいは、陰陽師&妖刀使いの二人組が妖怪退治をこなしていく大正怪異奇譚。あるいは、変人美少女ほたるさんが怪異に苦しむ少年を救おうと奮闘するホラー×ラブコメ。あるいは、レトロフューチャーな蒸気都市・東京でアヤカシ記者を営む主人公が奇怪な事件の謎解きを見せるアヤカシ活劇。
どれも一気に読みたくなるような魅力的な作品です。ぜひ、お楽しみください。
絶海の孤島を訪れた主人公とその友人が遭遇する怪異を描いた伝奇ホラー。
痛ましい描写はあるものの、あくまで静謐な恐怖のなかで物語は叙述されていく。
外部との通信もままならない状況で、乏しい物資をやりくりして生還をめざすサバイバル作品としても十分に楽しめるだろう。
物語が進むにつれて過去と現在が交差し、島をめぐる隠された歴史を紐解いていく歴史ミステリー要素も見逃せない。
時間と空間、そして彼我の境界線すら溶け崩れていくようなクライマックスは圧巻の一言。その果てに辿り着く結末は、仏教や民俗学にさほど興味がないという方でもかならず引き込まれるはずだ。
卓越した描写力とたしかな知識で描かれる異界への補陀落渡海、ぜひご堪能あれ。
妖怪退治屋『左団扇』に今日も今日とて閑古鳥。
ですが、経営者の二人に光るところがないわけではありません。
むしろ殺しても死なないような、しぶとい魅力の持ち主です。
どう考えても一癖ある洋装の陰陽師、亜緖。
真面目に見えて付き合いのいい妖刀使い、蘭丸。
舞い込む事件は、いずれ劣らぬ難物ばかり。
妖怪退治は言うに及ばず、人探しやらお家騒動、遂には人を斬れというのも。
妖しくも黒々と翳った陽の下、活き活きと躍動する妖怪変化。
陰陽道や妖刀も切れ味抜群。
そして、何よりその語り口。
物語世界を訥々と紡ぐその文体は、温かさすら感じさせて雰囲気たっぷり。
そして、二転三転、七転八倒。
およそ難物にふさわしく、事件は一筋縄で片付きません。
あるいはひねりを利かせ、あるいは機転で起死回生。
その先に待つものは、笑顔の未来か苦い末路か。
いずれ妖しい顛末の数々、化かされたと思ってご賞味あれ。
その先に残るものは、さていかに。
まるで数学の問題にあるような書き出しから始まるこの作品は、ラブコメのライトさを持ちつつも、ホラーとして独自の世界観(ルール)を展開し、その中で解決を図る。
恐らくヒロインの名前の由来であろう、不気味の谷とは、ロボットなどが人間に似るに従って、あるところで急に不気味に感じる現象のことである。
本作ヒロインのほたるさんも、可愛らしいキャラクターであり親しみやすさを感じるが、どこか尋常ならざる者の影をも感じる。
やがて、物語は順調に解決に向かって行くが、最後に思わぬ谷に突き落とされ、改めてこの作品がホラーであることを思い出させる。
そして思うのだ。
ほたるさんはどこまで知っていて何を考えているのだろうかと。
これはもう次の作品を待つより他にない。
とても面白かったです。
落ち着いて話を聞いてくれ。
一度しか言わない。
この話には、面倒見がいい記者のおっさんと、元気な記者見習いの女の子と、無口でミステリアスな(本当にミステリアス)青年と、そしてぶっきらぼうながら愛嬌のある憲兵の青年が出てくる。
忘れちゃいけない、もちろんキュートなアヤカシもだ。
まだある。
語り口がなにより軽快で、胃もたれも胸焼けもしないんだ。
うまい茶漬けのようにさらさらっと読める。
この分量で…と尻込みしているならまず一話を読むべきだ。気づけば最終話をあなたは笑顔で迎えているはずなのだから。
読んで。
ちなみに推しはシュテンちゃんです。