今年の夏は異様に暑くて、喫茶店へ自転車通勤しているわたくし半死半生です。
と、それはさておきまして。わたくしゴリゴリのオタクカルチャー好きで格闘技好きおじさんなのですが、実はもうひとつ好きなものがあるのです。それがストリートダンス!
普通のダンスもよく見ていますけれども、リアルアキバボーイズさんがフラッグシップを務めておられる近年のA(アニメ)-POPダンスカルチャーは本当に楽しいですね。ダンスジャンル問わずでいろいろな方がひとつところに集い、私も仕事中にずーっと聴いているアニソンに乗せてそれぞれが磨きに磨いた技を魅せてくださるのですから、ダンスも好きなオタクにとってこれ以上のものはありません。今宵もお酒がついつい進んじゃおうってもんですわ。
そんなわけで、今月はストリートダンスをテーマとした4作をご紹介させていただきますよー! お体ならず心を踊らせてくれる物語でどうぞレッツ・ダンスでございます!
スポーツとは無縁のゲーマーである春樹はふとした思いつきから渋谷へ向かい、とある喫茶店でなぜか倒れ込んできた美少女・清美と受け止めることとなった。それをきっかけにストリートダンスと出会った彼は師の導きと仲間たちとの切磋琢磨により、ダンサーとして成長していく。
ダンスと出会った春樹くん、彼のキャラとしての仕上がり具合がエピソードを展開するエンジンになっていることに注目! 例を挙げればゲーマーだけに作業(練習)は得意、でも視野の狭さが祟ってダンスに面白みが出せない点などです。
主人公に行動を強いる窮地をストーリーへ置くのが普通の構成ですけれども、この作品では春樹くんが自ら窮地へ嵌まることで不要な状況設定や説明を省き、彼のキャラクター性やアクションに集中した物語構成が成されています。このキャラクター小説としての完成度を高さ、すばらしいのひと言です!
ダンスにもっとも大切なものはなにか? それを追いかける主人公を描き抜く、熱くて厚い物語です。
(「ダンス! ダンス! ダンス!」4選/文=高橋 剛)
過去にやらかした大失敗を引きずり、引きこもってしまったことで2回めの高校1年生をやるはめに陥った星宮陽翔。後悔に苛まれて夜の町を闇雲に歩き回る中、彼はふたりのダンサーが演じるブレイクダンスと行き会い、魅了される。ブレイクダンスをやりたい、そして今度こそ本気で自分自身と向き合う。陽翔は決意し、一歩を踏み出した。
こちらはブレイクダンス特化型の物語となります。それだけに細かな用語などももりもり盛り込まれているわけですが、それを背景に置いたダンス描写、これがいいのですよ! 技の内容を読み手へ伝える姿勢もさることながら、それを演じるダンサーの「決めてやる!」という気持ちが匂い立つ描写。加えてダンサー同士が技を交わし、心情を高めていく表現。読んでいるこちらの気持ちもぐいぐい高まってくるのです。
ダンスを通して描かれる出会いも含め、「ダンスは独りでするものじゃない」ことをこの上ない熱量で教えてくれる本作、酷暑に疲弊した心にキメてください!
(「ダンス! ダンス! ダンス!」4選/文=高橋 剛)
那須塩原市のとある祭。そのステージへ上がるはずだった高校のダンス部を差し置き、姿を現した冴えない少年がいた。そしてアニメソングに乗ってキングタット——肘、手首、指をパズルさながら組み合わせていくダンススタイル——を演じ、人々を魅了した彼の名は二戸クリス。アニメソングダンスバトルに自分の活路を見出した、所謂オタクである。
アニメソングダンスバトルは日本発祥のダンスカルチャーです。クリスくんは自分を生かすものはこれだと思い定め、その路へ踏み入って行くわけですが。有り様がね、まさにオタクなのですよ。他人と関われないから独りで暴走して、常識に疎いから失敗して、それでも自分を認めて欲しいから全力で突っ込んでいく。正直、これほど「等身大」という言葉の似合う主人公はいません。オタクなら誰もが共感させられる最高のキャラクター、目が離せるものですか!
そんな彼がダンスの中、自分以外の誰かとなにを育んでいくものか? ぜひその目でお確かめを。
(「ダンス! ダンス! ダンス!」4選/文=高橋 剛)
須藤陸は大学へ進学し、念願だったダンス部への入部を果たした。が、素人の彼は体験入部の時点からできないことばかりで……しかし、彼の胸に燃え立つ情熱は弱まることがなかった。そして同じアニメ好きな女子と出会い、ブレイクダンスと出会い、師となるダンサーと出会い、ただの素人から本物のB-BOYへと成長していく。
ダンスというジャンルは知らない人にとって謎すぎる代物。でもこの物語には丹念な解説が置かれているのです。それも地の文章と台詞を併用してのくどさを感じさせない描写になっていて、著者さんの心尽くしが感じられるのが実によろしい!
だからこそダンス素人の陸くんが一歩ずつ成長していく過程が際立っているわけですが、心情描写がまた丹念なのですよ。とまどったり気後れするばかりな陸くんの弱い心が、本当に強くなりたいと転じる瞬間のカタルシス、本当にもうたまりません。
ストリートダンスがお好きな方へはもちろん、まだ知らない方へも強くおすすめしたい一作です。
(「ダンス! ダンス! ダンス!」4選/文=高橋 剛)