あまり草花に興味のないわたくしですが、ふと目を奪われたオレンジ色の花があるのですよ。
下に向けてくるっと丸く反った花弁を開き、よく見ると点々がある花。最初は某アニメで話題になった彼岸花ってやつかーと思ったり、季節合ってないしやっぱりちがうかーと思い直したり。よくよく調べたら鬼百合だとわかったのですが、とにかく知識がないので正解へ辿り着くまで紆余曲折ありました。
知りたいことや知るべきことについて、それ自体を理解する必要はなく、調べるためのとっかかり(取っ手)を作っていこうというのが私の意見なのですけれども、やはりそれを作るにも相応のアンテナが要るのだよなーとあらためて思い知りましたねぇ。
趣味や興味を少しはみ出したところへも手を伸ばせれば、思わぬ知識やネタが拾えることがある。これを機に一層心掛けていきたく思います。
と、そんなこともありつつですが、思いきり目を奪われました新作レビュー、行ってみましょうー。
女子と間違われがちな中学生男子、水宮彩乃介は私立中学校の剣道部員。そして想い人である同じ剣道部員の少女、十名河小春と今日も今日とて競い合っていた。あたたかながら進展のない日々、このままではだめだと一大決心し、告白を決行する彩乃介だったが……相手を間違えてしまったことから事態は大きく転じていく!
注目していただきたいのは、剣道をうまく彩乃介くんの個性に絡めているところ! 彼は女子と間違われる華奢な体格で、逃げて引き込む戦術を得意としています。これが彼の有り様——武道的に言えば心技体のすべてが欠けた未熟さをこの上なく表現している。だからこそ告白から始まる「逃げられない勝負」へどのように当たっていくか、その期待感をいや増しているわけですね。そして間違いから課された試練へまっすぐな気持ちでぶつかっていく様が、この上なく輝くのですよ。
さて、彩乃介くんは試練を越えて想いを貫けるのか? 砂かぶりで見守りましょう。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)
社会人になってそれなりの時間を経て、「結婚」を意識するようになったアラサーの“私”。あれこれと思い悩んでいる中、同僚から街コンに行ってみないかと誘われることに。そして気乗りがしないまま当日を迎え、ひとつの答を見出すのだった。
結婚とはなんぞや? 気持ち的なものは置いておいても、したいからできるようなものじゃないのに、社会的にはしているほうが普通? という感じのものですよね。
本作ではそんな結婚と向き合う女性が描かれますが……重たい。腰の重さもさることながら、心がまたどんより重たくて。なぜこうも重いのか? 考えて、悩んで、彼女は自身がひとつの概念に囚われていたことに気づくのです。
主人公の心情描写が実にいいのですよ。漠然とした重さが解きほぐされて明確な形を得、示される答、これが主人公自身のみならず読者へも教えてくれるのです。綺麗でなくとも格好よくなくとも自分は自分という、当たり前の真実を。
小さな自信と自負を思い出させてくれる、ささやかだけれど強い物語です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)
平凡な女子高生、紺野 天(こんの そら)は、とあることから弱みを握られた同級生の星宮 雫(ほしみや しずく)から唐突に告げられる。彼が死んだ祖父から「他人が過去の分岐点において違う選択肢を選んだ場合のIFストーリーを見る力」を受け継いだことを。そして彼の力を実際に体験した天は——
星宮くんの奇人っぷりが冴え渡っていますね! ものすごくおかしいわけじゃないのに、言動の端々に奇が匂い立つ彼の姿、絶妙です。そして奇しき星宮くんをがっちり受け切り、ごりごりツッコむ天さんの強キャラぶりも実に爽快です。このふたりだからこそのリズム感による会話劇は、間違いなく本作の大きな魅力ですね。
そして星宮くんの能力ですよ。見た人の迷いを振り切らせるきっかけとして機能していながら、同時に星宮くんの能力者故の苦悩や天さんの只人故の迷いを重ねることでドラマを深掘りもしている。この構成の巧みさは目を奪われずにいられません。
楽しさに織り込まれたこのエモさ、ぜひご一読ください!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)
2016年に決行した3泊4日のおやきしか食べない長野旅。あれ以来一切口にせず過ごしてきたおやきを、今一度食す! しかもあのときと同じ3泊4日旅をし、新たなルールを加算して! 邑楽 じゅんは果たして、目標の50個を完食できるのか!?
主人公に物理的・心情的な縛りを課すのは物語を盛り上げる基本中の基本です。しかもそれがおやきしか食べちゃいけない旅というバラエティ感まんまんな代物ですよ。でも! 甘くないんですよねぇ。
ルールにある「旅中に1度でも食べたフレーバーは(野沢菜を除いて)もう食べられない」に早速足を引っぱられたり、何度でも食べていいはずの野沢菜に飽きてしまって落ち込んだり……邑楽さんの心が落ち込んでいく流れ、申し訳ないくらい楽しいのですね。エッセイは自分をどう曝け出すかが勝負ですが、まるで飾らない赤裸々っぷりがとてもおいしい!
締まらないエンディングが味わわせてくれるドキュメンタリーの真実、ぎゅっと噛み締めていただけましたら。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)