最近では大手人気ジャンルといっても過言ではない動画配信もの。昔はそれなりの機材が必要だった動画配信も今ではスマホがあれば簡単に始められるし、これだけ身近な存在になったのならば、当然小説の題材にもなりやすいだろう。というわけで今回はそんな動画を配信する人たちが主人公の物語をご紹介。今流行のダンジョン配信ものはもちろん、延々部屋の中でガチャを回すだけの話や、異世界からこっちの世界に配信することになった悪役令嬢の物語、軽い気持ちで心霊スポットに突撃した結果、大変なことになっちゃったホラーなど、色々なジャンルを取り揃えましたので、よろしくお願いいたします。
上位生命体によって選ばれた1000名が行う人類史上最大のレース。その内容は上位生命体から与えられた能力とアイテムを駆使して、それぞれに与えられた一つの惑星を開拓すること! この競争の勝者に与えられるのは地球の絶対的な支配権!!
そんな壮大な物語の背景とは裏腹に、本作の主人公、山田竜は監禁された白い部屋の中で、与えられた能力「ガチャ」を使って毎日ログボのガチャを引くだけである……だって運営が何も説明してくれないんだもん!
そしてこのガチャから出るアイテムがとにかく絶妙。『ホムンクルス1ダース』とか『神剣アイギス』とかそれなりに役に立ちそうなアイテムも出てくる一方で、『麻雀セット』や『ペルシア絨毯』など惑星開拓には絶対いらないものも平気で出てくる。しかし、自分の状況を全く理解していない山田は、他の参加者が順調に惑星開拓を進めていることも知らず、毎日のガチャに一喜一憂したり、ホムンクルスたちと麻雀をしたりして無為な日々を過ごすばかり。
このガチャに左右されるばかりの山田の日常が、こっそり世界中に配信されることで世の中に思わぬ影響を与えたり、話が進むにつれて過去にガチャから出て来た微妙なアイテムに意外な使い道が見つかったりするのが面白い。
果たして山田の惑星開拓は始まるのか!? そもそも外に出られるのか!?
(「僕らはみんなバズりたい! 配信系特集!」4選/文=柿崎憲)
近頃カクヨムでも流行りの現代ダンジョン配信もの。ダンジョンが突如出現した現代社会を舞台に、ダンジョン探索の様子を動画配信する主人公があれやこれやでバズったりするというのが王道のパターンである。
本作の主人公タカシもダンジョン探索中に、ある特殊なスキルを手に入れたことをきっかけに急速にバズるのだが、そのスキルが『オカン乱入』というもの。配信中に母親が急に出現するという完全なネタスキルだが、タカシにとってこのスキルは特別な物だった。だって彼の母親は5年前に亡くなっていたのだから……。
これによって、数年ぶりに母親と再会したタカシ。一発ネタみたいな作品だと思っていたのに、しんみりさせるじゃないの……。だがこのスキルはこれだけでは終わらない。なんとタカシの母は異世界に転生しており、向こうの世界で凄腕の僧兵になっていたのだ!
かくして時間限定ながら最強の母を召喚できるようになったタカシは、もの珍しさもあって一気に人気配信者の道を進んでいく。母親とのダンジョン探索というメインのストーリーは変化球気味だが、その一方で配信視聴者との気軽なやり取りを繰り広げたり、ダンジョンでの活躍を通じてタカシが学校で人気になる過程が描かれたりするなど、ダンジョン配信ものの美味しいところをきっちりおさえられているのも嬉しい。
(「僕らはみんなバズりたい! 配信系特集!」4選/文=柿崎憲)
自身の破滅が約束された乙女ゲームの悪役令嬢、カサンドラ・エクリプス。そんなある日、彼女の下に異世界からのメッセージが届く。
なんと突如彼女に芽生えた配信スキルによって彼女の生活は彼女視点の異世界、つまり我々にとっての現実世界で配信されるようになり、さらにリスナーからのメッセージを受け取れるようになったのだ!
これによって自身の運命を教えられたカサンドラはリスナーからアドバイスを受けて、待ち受ける破滅を避けようと奮闘する。しかし、このやり取りには文明レベルを大きく変えるアドバイスはできないという弱点があった。この問題を解決するのがスパチャ(日本円)!
未知の世界から配信される映像にはスパチャが飛び交い、それによってカサンドラは特殊なショップで様々な分野の入門書を取り寄せて自力で勉強し、それを見たリスナーが彼女を支援するべくスパチャを投げるという好循環! その様子はゲーム攻略に挑戦するVtuberとそれを応援するリスナーのようでいて大変微笑ましい。
またカサンドラの身の回りの問題を解決するだけではなく、最初はリスナーのことを神様のようなものだと思っていたカサンドラが、幾度もやり取りを交わすことで徐々にリスナーの立ち位置を理解して、双方の間に奇妙な友情が結ばれていくというのも凄く良い。悪役令嬢ものでありながら、動画配信というジャンルの魅力がしっかり詰め込まれた作品だ。
(「僕らはみんなバズりたい! 配信系特集!」4選/文=柿崎憲)
売れない作家のかたわら、病床の子供たちを楽しませるホスピタル・クラウンとして活動している橘風太は先輩の作家から仕事を紹介される。
それはある動画配信者の心霊スポット探索にスタッフとして同行すること。この動画配信者が幼馴染の黛希歌であったこともあり、気軽に引き受けた風太が現場のスタッフから聞かされたのは泥泪サマと呼ばれる都市伝説。決して珍しいものではなく、そこまで深刻に考えていなかった風太だが、だがこの撮影が何人もの死者を生む大事件の始まりだった……。
撮影の序盤は被害者遺族へのインタビューに始まり、自称霊能力者によるお祓いのパフォーマンスなど、映画のJホラーのような静かな不穏さがちらつくのだが、撮影陣が泥泪サマの実物までたどり着くと、物語の様相は大きく変わり、怪異が実態を持って風太たちに襲い掛かっていく。
この怪異に対抗すべく次々に胡散臭い霊能力者が登場しては逆に殺されていくのだが、泥泪サマの被害が拡大するにつれて、より高位の力を持った霊能力者たちが登場するという物語のインフレ具合が少年漫画や伝奇小説のようでいて不気味な反面少し楽しい。
また、日々子供たちを笑顔にする仕事をする風太をはじめ、ゴスロリ衣装に身を包んで怪奇スポットに体当たりする幼馴染、ガチの怪奇現象を前にしても撮影をやめないディレクターや、次々に登場しては散っていく不気味な霊能力者たち、やたら鬱陶しい自称人気配信者のTAKASHIなど、登場人物たちがやたらキャラが立っている点も評価したい。
(「僕らはみんなバズりたい! 配信系特集!」4選/文=柿崎憲)