暑すぎて早く海で泳ぎたい担当です。
 今夜は七夕。夜空に想いを馳せる日にあやかって、緻密で壮大な世界観を持つ、夜空と星の物語を集めてみました。
 人類が月のコロニーへ移住した未来、地球に残された人々と『神の化身』の双子の話。あるいは、星座の力を操る「賢者」の輝術に当てられると具合が悪くなってしまう少女、スピカが主人公の幻想的なジュブナイル。月夜に大きな穴に落ちて異世界に迷い込んでしまうファンタジー、そして、夜の訪れない辺境の地球型惑星で、「夜粒」で朝と夜を作るすこしふしぎなお仕事の話。
 眠る前の読書のお供にどうぞ。

ピックアップ

風が凪ぎ余人の目に触れずとも静かに波打つ瑠璃色の美花が咲く風景よ永遠に

  • ★★★ Excellent!!!


 荒廃した地球を捨てて、人類は月のコロニーへ移住してしまった未来。瓦礫の山と砂漠の海となった地球には、しかし、いまだ取り残された人々が生活していた。

 作物は育たず、飲み水に苦労し、謎の死病が蔓延する末期の地球。彼らは、科学を失い、原始的な文明に帰し、神に祈りを捧げて生活していた。

 そんな地球を主な舞台とした物語。全5章からなる長編を複数の主人公たちの視点から語らせる壮大な抒情詩である。

 父に裏切られた半陰陽の少年。月のコロニーから追放された科学者。村から疎まれつつ薬草を育てる少女。

 彼らを中心に、荒廃した地球と、管理社会である月を舞台に、人と人との繋がりとは何であるのか?を、青く美しい一抹の花をキーワードに丁寧に紡いでゆく物語。

 時としてすれ違い、時として運命に導かれ、出会い、別れ、そして惹かれ合って行く人々。回を追うごと、彼らの気持ちに強く同感し、美しい文章に誘われ、気づくといつしか、この荒廃した地球が、いや荒廃した地球であったとしても、愛する人々が暮らすのであれば、そこは得難い自分たちの故郷であると気づかされる。


 とにかく小説としての完成度がすごい。
 魅力的なキャラクターと、練り込まれたプロット。ちりばめられた伏線と、胸を打つ台詞、そして宝石のような文章。

 空を巡る星の中には、惑うように時として逆行するものもある。が、彼らはわれわれと同じく、長大な円を描いて太陽の周りを巡るひとつの家族なのである。

 最初、しずかに語り始められる物語は、やがて満天の星空から突き刺さるように落ちてくる流星となってあなたの心を撃ち抜き、何度も何度も感動の涙を流させるだろう。

 本作は小説としての完成度も高い。読めば何度も泣ける。だが、それ以上に、『こんな物語を読みたい』と、そう思う人が、今この世界にはたくさんいるのではないだろうか?


 荒廃した地球がいつか風に揺れるルリヨモギギクで満たされる、そんな美しい風景が、いまのぼくにははっきりと見える。


 ──風が凪ぎ、余人の目に触れずとも、静かに波打つ瑠璃色の美花が咲く風景よ、永遠に。



星に願いを、瞳に意思を。つないだ手と手に温もりを。

  • ★★★ Excellent!!!

本作は星にまつわる言霊と、光の力を導く輝術、星座の賢者、幻想生物と銀河鉄道が織りなす叙情ファンタジーです。

星の光、星の力が輝術として密接に存在する世界で、主人公の少女スピカは、成長するにつれて輝術に触れると体調を崩してしまうようになった自分に戸惑いを覚えます。
義父のアルファルドは、優しいけれど過保護で、自分になにかを隠している。
ほんの小さなきっかけから、スピカの世界は、パノラマが明滅するように景色を変えて行きます。

13の大賢人、冬の訪れ、乙女の継承、そしてタルタロスの竜王……自分のルーツをたどる旅路に、スピカは、幼馴染の少年アヴィオールと共に踏み出します。
子供たちと大人たち、それぞれの想いがせめぎ合う星空のジュヴナイル、皆さまも銀河鉄道の切符を片手に御一緒いかがでしょうか。

青い月光と優しさが育む、繊細な愛の物語

  • ★★★ Excellent!!!

夢のなかでいずこかへ墜ちたユエ。気づいた場所は岩山で、青く光る水に浸かっていた。彼女をたすけたのは、身体に魔方陣を刻んだ謎の青年カエルレウムと、美女テリエル。聞いたことのない国、風俗でありながら、何故か二重放送風に言語の通じる世界で、ユエは通訳として生きていこうとするが……。
魔法と神様の加護が存在する世界で、人攫いや嫌味な神官らの起こす騒動にまきこまれつつも、自分の居場所をみつけていく女性の物語――。


”異世界落っこち系(?)”ファンタジーです。一人称主人公は二十代の女性ですが、どこか飄々とした性格で、異世界の観察に適した性格と感じます。
派手な魔法や戦闘描写などはありませんが、彼女をとりまく人間関係、青年カエル(レウム)との恋愛模様が、実に繊細に、丁寧に描かれています。衣服や食事、お茶の描写が素敵です。
優しく、繊細な恋愛ファンタジーがお好きな方に、お勧めします。

「夜」に逃げ込んで、「朝」に憧れて、「時間」を追い掛けて

  • ★★★ Excellent!!!

ミヒャエル・エンデの『モモ』を思い出した。
小学生の頃に読んで、「時間」というテーマに心を惹かれた。
正直に言うと、当時の私には難しくて十分に理解できなかった。
今でも、「時間」とは何かと問われても、うまく答えられない。

本作はSFと銘打たれてはいるけれど、とてもやわらかい。
辺境の小さな地球型惑星を舞台とする日常ドラマが主調で、
辺境ゆえのローテクノロジーぶりが、ほのぼのしている。
登場人物は等身大で、そのへんの居酒屋に紛れていそうだ。

その惑星は月と同じように自転と公転の速度が一致している。
常に同じ半面が太陽型恒星に相対し、日は昇りも沈みもしない。
だから、人間が「夜粒」を使って「朝」と「夜」を創るのだ。
主人公コヒナタは3年前から「夜」を管理する機関に勤めている。

毎日必ず同じ時間に同じルートを走り続ける生物、ジカン。
コヒナタが仕事に手間取る日に現れる、黒ずくめの「人夜」。
時代遅れな巨体マシンによって管理され増殖する「夜粒」。
そして100年後の未来に語り継がれる、朝と夜の誕生秘話。

のんびりとしたコヒナタの恋を見守りながら楽しむ、
すこしふしぎですこしファンタジーな物語の行方。
ジカンが来たら、私まで何だか嬉しくなった。
飄々としたミナトとお酒飲んだら楽しそうだな。