全国の高校生作家によるフレッシュな作品が集う「カクヨム甲子園2021」。今年で開催5年目を迎え、例年どおり大きな盛り上がりを見せています。さらに、特別賞「カルビー賞」の受賞作は、作品の映像化・イラスト化も決定しています。
今回はショートストーリー篇と題して、ショートストーリー部門への応募作に寄せられたレビューを紹介します。文字数4,000字以下という限られた範囲で、高校生らしい豊かな表現力を発揮し、物語としてまとめる文章力を問われる本部門。読者からのレビューも多く、熱量を感じます。
レビューや作品を読んでみて、「自分も書いてみたい!」または「読者として応援したい!」という方は、比較的参加しやすいショートストーリー部門からチャレンジしてはいかがでしょう。一緒にカクヨム甲子園2021を盛り上げてくれる参加者をお待ちしております!
【感想】
物語は、退屈そうに歯車を見つめるところから始まっていく。
彼は全て計算で導き出すことが出来る。
つまり、生命の誕生は計算外の奇跡という事。しかし、その奇跡は、簡単に起きたわけでも、自ら起こすことが出来た出来たわけでもない。だが、彼は待ち望んでいたのだ、その時を。奇跡が起きた時は、信じられず何度も計算して確かめている。
生命の誕生を独特の感性、そして比喩で描かれているところが面白いと感じた。時は目に見ることは出来ない。宇宙という、時を感じることのできない世界で。変わらない日常が繰り返され、退屈であり変えることもできない。どんなに複雑化されても、計算できるものは不変的なもの。ただし、可変を求めているのではない。予測も計算も出来ない未知数のモノを求めていたのではないだろうか。それが彼の言う”真の乱数”なのではないだろうか。
分かりやすいのに分かり辛く。
なかなかうまく感想の述べられない物語だと感じた。
独創的で面白い作品だと思う。
幼なじみ同士の高校生の男女が、放課後の校舎裏で告白したりされたりするお話。
ド直球の青春恋愛劇です。甘酸っぱいというかもどかしいというか、もう見ていて何もかも焼き尽くされる感じ。とにかく思い切りがよくて、内容は完全に恋愛特化、それも告白のワンシーンのみ、というこの潔さ。書かれているのは思春期年代の不器用な恋そのもので、というか本当にそれ以外の要素がほぼ皆無で、つまり読んでる間ずっと甘酸っぱさに悶えのたうつことになります。なにこのノンストップ胸きゅんブルドーザー。力こそパワー。
お話の筋はもうほとんどここまでに書いた通りで、本当にただ告白する(される)だけの物語なのですが。とりあえず前提として大きいのが、事実上の両片思い状態である、という点。
主人公は男の子で、幼なじみの少女から校舎裏に呼び出され、そして一体なんの用かはもう大体見当がついている、という導入。もっとも主人公の視点による一人称体、つまり彼自身の主観から書かれたものであるため、正直「いやこれただの勘違いなのでは?」という疑いもなくはない(というかものすごくある)のですけれど、いずれにせよその青春の迸りっぷりに違いはありません。はちきれそうな想いのハラハラ感と、その受け答えのムズムズするような不器用さ。恋愛劇というのはある種の不安感あってこそ光るものですが、でも両片思い(暫定)でこんなに不安になれるのだから凄まじいです。
このふたりの幼さというか、思春期年代特有の青臭さがとても絶妙でした。なんだか生々しいような、このいかにもこなれていない感じ。特に好きなのが彼の交際に対する認識というか、本文から引用するなら「だって、俺に彼女ができるのだから。」の一文です。
大好きなあの子と付き合う、という行為(状態?)を、でも「俺に彼女ができる」という見方で認識してしまえるこの、なんでしょう、突っ走りっぷり? まあ残念といえばそうなんですけど、でも思春期なりたてってこういうとこあるよね実際というような、この漏れ出る子供らしさの露骨っぷりがもう、もう! こんなのずるい……うわーってなってジタバタしてしまう……。
いやもう、すごいです。たどたどしいというかなんというか、見ているこっちの顔の方が赤くしてしまうくらいの青春っぷり。頬の熱が灼熱の太陽となって全てを焼き尽くすかのような、手心のない甘酢っぽモジモジ恋愛劇でした。
日々の仕事、生活のストレス。そんな中で癒しを求めて私たちは色々な趣味を、娯楽を楽しみ、余暇をつくる。
けれどもしも直接的に幸せや感動といった感情を買える自動販売機があったら……。
あなたはそれから、幸せを買いますか、買いませんか?
娯楽にすらコスパが求められる世の中、もしかしたらこういうものが本当にあったとしても、特に反発もなく割と普通に需要を満たしてくれるのかもしれません。
特別、目を引くような文章は無かった。なのに、この小説は俺の心を掴んで離さなかった。
登場人物たちの心情を述べた、一つ一つの情景の一幕。
まるでドラマのワンシーンを見ているような気分になる。
でも、最もこの小説を読んでいる時の気分を表すならば、この表現が適切だろうか。
朝読の時間、偶然手に取った文庫本を開いた時、なぜか夢中になって最後まで読んでしまった。
そんな、何気ない時間を過ごす時の、そういう情景がはっきりと目に浮かんだ。
レビューと言えるのかどうか、俺には分からない。レビューですらないのかもしれない。
でも、一言だけでも添えるならば。
この小説は、確かに面白かったということだ。
ゆったりとしたスクールライフが送れるに違いないと思い、ヒロインが入部した科学部。
意外にもなかなかハードな部活動っぷり。
個性的な先輩達や担当教諭のゴッド、濃いキャラに迎えられながら始まったサイエンスショーの準備。
科学部といえばスライム作り、でしょ?
これは今日も日本のどこかで繰り広げられている、リアルな高校生の日常に違いない、たぶん。
作者さまの知識とセンスが尋常じゃありません。
月が綺麗ですね。
これは言わずと知れた定番の台詞で、奥ゆかしいながらも愛を伝える文句として創作界隈では今なお人気の決め文句であります。
しかし、この作品ほどその意味を正しく理解しているものはそうはありません。この台詞は古風かつインテリで気品のあふれた「古き良き時代の日本人」が口にしてこそ生きるものなのです。そのキャラクターの「奥ゆかしさ」を一緒に表現できなければ借り物の舞台装置でしかないのです。
この作品はそういった伝統を重んじているのみならず、それを現代という舞台で活かすにはどうすべきかも良く練られているのです。
主人公のキャラクターは、どこかあざとさのある可愛らしさを意識しながらも決して出すぎはしません。真相を知る読者だけを深く感情移入させ……そう、読めば読むほど胸キュンさせてくれるのですよ。
暗すぎず、重すぎず、適度に切なくそれでいて美しい。
まさに冬の空で輝く月のような恋愛小説でした。
心の底から綺麗だと思える恋愛をお探しの貴方へ、おススメです!