無事GWも終わり7月後半まで祝日が存在しないという地獄のような季節に突入しましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。今年のGW、私の方は例年以上に外に出ない生活を送りましたが、あれですね、人間ずっと外に出ないと体内時計というやつは簡単に狂いますね。しかし生活リズムが破綻すれど仕事が待ってくれるわけではなく……。そんなわけで今回はいつも以上に淀んだ気持ちをフレッシュにしてくれる新作をご紹介です!(空元気)

ピックアップ

関わった者を絶対に逃がさない悪霊VS絶対に尻尾は巻けない極道!

  • ★★★ Excellent!!!

住む者を次々と不幸な目に追いこむ呪われた屋敷。そんな屋敷に借金の取り立てに向かったヤクザの下っ端がポルターガイストに巻き込まれたからさあ大変。その報告を聞いた経極組の若頭にして、古き良き硬派な極道・東郷兵市はどこか抜けている部下たちとともに屋敷へ向かう。屋敷で起きている真実を確認するため、そして借金を取り立てるために……!

ホラーものでたまに出て来る「本当に怖いのは人間だった」オチ。その理論を突き詰めていくのならば人間の中でもトップクラスに怖いヤクザは大体の怪奇現象より怖いのではないだろうか……? そんな理論が元となっているのかどうかはわからないが、本作のヤクザは強い。目の前で起きる怪奇現象にも一切怖気づくことはなく、部下が悪霊に憑依されても暴力でケジメをつけ、屋敷から無事脱出できても装備を整えて自分たちからカチコミに行く!

一見ギャグっぽい設定ではあるのだが、悪霊の正体を調査する流れは普通のホラー作品のようにちゃんと手順を踏んでおり結構正統派。一応この一作で完結しているが、ヤクザVSゾンビ、ヤクザVS呪いのビデオ……など、いくらでもスピンオフが作れそうな魅力的な設定の作品である。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

独自の世界で紡がれる大スケールの冒険譚

  • ★★★ Excellent!!!

様々な生物が絶滅の一途をたどり、人間と豚とキャベツの三種のみが残された遠未来。この世では豚を上手く管理した者が権力を握り王として君臨するように。しかしそんな人間の営みをあざ笑うがごとく、野豚の大群が人類最大の国家「豚王国」を飲み込もうとしていた……。

あまりにシュールすぎる設定で、あらすじだけ見ると出落ちのような雰囲気も漂ってくる本作品。しかし、本作の最大の魅力はこの設定に負けない強い個性を持つキャラクターたち。冒険古生物学者を名乗り、過去の動物に関するでたらめをまくし立てる吉田ロンドン。子供の頃からわがまま三昧で、気に入らない部下は即処刑し思いつきで法を作っては民を苦しめる、暴君・豚王。そんな豚王の一人娘であり、誰かと恋に落ちるたび父にその関係を引き裂かれ深い恨みを持つキャベツ姫。

アクの強い登場人物たちが思うままに行動するせいで、物語はラブロマンスあり、革命あり、幽霊騒動あり、と人間たちの間だけでも混迷を極めるのに、そこに自然災害レベルの野豚まで関わってくるから物語はまさにカオス。劇中で起きていることはわりとシリアスなはずなのだがコミカルな語り口もあってさくさく読めるし、生物がほとんど滅んだ世界ならではの独自の文明描写も楽しく、他に類を見ない世界を描き出した一作だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

魔法相続士とキュートな相棒の人探しミステリー

  • ★★★ Excellent!!!

この世で唯一レベル4以上の魔法相続を可能とする魔法相続士・津雲直人。しかし、貴重な力を持ちながらも彼は非常にへこんでいた。ときどきわけもわからず魔法の相続が失敗するのだ。おかげでネットには悪評を書きこまれ、仕事の数も減る一方。外見は犬なのになぜか人間の言葉を話す相棒のメルは彼を励ましてくれるが、失敗を解決するあては一向に見つからない。そんな中、行方不明になった父と姉を探してほしいという一見相続とは関係のない依頼が持ち込まれ……。

魔法相続という独自の設定を下敷きに、行方不明者の捜索というミステリー要素を含んだ風変りなファンタジー。一見魔法相続とは関係ない事件が思わぬ形で繋がっていき、ちゃんと魔法相続を問題解決への手段に生かしていくストーリー運びが上手い。

そして外見はどう見ても犬なのに自分はサルだと主張し、さらに魔女を自称する相棒のメルティオラが非常にキュートで可愛らしい。普段は好物のチョコレートのことばかり考えているマスコット的な存在なのだが、ときおり人間とは隔絶した倫理観を見せるというギャップもあったり、この強烈なキャラクター性が作品を何倍も面白くしてくれている。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)