第10章
――それでも、世界は選ばねばならない――**
**【SIDE A】
王国中枢・王の決断
――外交の終わり――**
王城・謁見の間。
その日は、最初から“答え”が決まっている空気だった。
宗教使節団。
魔法国家の外交補佐官。
そして、王国貴族の一部。
全員が揃った席で、
王は、ゆっくりと口を開いた。
「――余は、問う」
「この国の民は、
誰のために生きている?」
沈黙。
宗教使節が、静かに言う。
「神のために」
魔法国家の補佐官が続く。
「世界の理のために」
そのとき。
王は、霧島アキラと、
エレナを見た。
「余は、
民のために生きている」
その言葉は、
宣言だった。
「よって――」
「魔法国家ルグ=アルマディアとの
現行外交は、
ここに終了とする」
広間が、ざわめく。
「宗教使節の活動は、
本日をもって制限される」
「王国の内政に対する
いかなる干渉も、
許可しない」
それは、
外交決裂だった。
補佐官の顔が、歪む。
「それは……
戦争を意味する」
王は、即答した。
「いいや」
「選択だ」
**【SIDE B】
黒幕貴族視点
――計画が、狂い始める――**
(……まずい)
王の言葉を聞いた瞬間、
貴族の一人は悟った。
思ったよりも、
王は覚悟を決めている。
(異邦人の影響か……)
視線の先。
霧島アキラ。
そして、その隣に立つ女――エレナ。
(……あの女だ)
剣を捨て、
言葉を選び、
民の前に立つ存在。
(象徴は、
消さねばならない)
だが。
計画を実行する前に、
“空”が、先に動いた。
**【SIDE C】
アキラ視点
――兆候――**
警告。
それは、
音ではなく、
“感覚”として来た。
都市上空を巡回していた
非武装ドローン群。
通常ではあり得ない
魔力干渉反応。
(……来る)
私は、
王城の窓から空を見る。
まだ、何も起きていない。
だが――
準備は整った
敵も、
味方も。
抑制解除条件、
第一段階。
「国家が、
選択する権利を奪われたとき」
(……近い)
**【SIDE D】
魔法国家・内部視点
――疑問を持つ者たち――**
大賢導院・下層会議。
若い賢導の一人が、
意を決して口を開いた。
「……本当に、
あれは異端なのですか?」
年長者が、睨む。
「何を言う」
「魔法を使わずに、
人を救っている」
「それを、
神は否定するのですか?」
空気が、凍る。
その場では、
答えは出なかった。
だが――
分裂の芽は、確かに生まれた。
**【SIDE B】
エレナ視点
――象徴であることの、孤独――**
外交決裂の報は、
瞬く間に王都を駆け巡った。
恐怖。
不安。
期待。
すべてが、
私に向けられる。
「エレナ様……
戦争になるのですか?」
私は、
立ち止まり、
その市民の目を見た。
「分かりません」
正直に、そう言った。
「でも――
選ばされた戦争ではなく、
選んだ未来であるように、
私は立ちます」
その言葉を聞いた人々が、
静かに頷いた。
(……これが、
王国の声)
重い。
だが、
逃げない。
**【SIDE C 続き】
アキラ視点
――抑制解除一歩手前――**
夜。
城壁外で、
魔力反応が、
“集束”を始めた。
敵は、
まだ攻撃していない。
だが――
準備している
私は、
初めて、
抑制解除コードに
指をかけた。
解除すれば、
すべて終わる。
戦争も、
思想も、
抵抗も。
だが――
(それでは、
彼女の言葉が死ぬ)
私は、
指を離した。
(……もう一歩、
待とう)
**【SIDE B 終】
エレナ視点
――それでも立つ――**
王城の塔。
私は、
王都の光を見下ろしていた。
この光は、
争いの種にもなった。
それでも。
闇に戻ることは、
できない。
「……アキラ様」
彼が、隣に立つ。
「私は、
逃げません」
「たとえ、
この先に
何があっても」
彼は、
短く頷いた。
「ええ」
「だからこそ、
私は――
まだ、世界を壊さない」
遠くで、
雷鳴が轟く。
それは、
戦争の始まりではない。
選択の猶予が、
尽きかけている音だった。
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