第10話「背中合わせの二人」
魔界の境界線付近にある荒野は、すでに戦場と化していた。
空を覆うほどの矢と魔法弾が飛び交い、爆発音が絶え間なく響く。
魔王軍は奮戦していたが、人間軍の数は圧倒的だった。さらに、後方に控える巨大な魔導砲が不気味な光を放ち始めていた。
「チャージ完了まであと五分。全軍、時間を稼げ」
ベリアルは大剣を振るい、人間軍の先鋒部隊をなぎ払っていた。
その強さは圧倒的だが、多勢に無勢。四方八方から浴びせられる攻撃に、魔王の身体にも細かい傷が増えていく。
「くっ……小賢しい」
ベリアルが炎の魔法で敵を焼き払うが、次から次へと新しい兵が湧いてくる。
このままでは、ジリ貧だ。
そして、恐れていた瞬間が来た。
「魔導砲、発射準備完了」
人間軍の指揮官の声が響く。
巨大な砲口が、魔王軍の中心に向けられた。
「まずい……」
ベリアルは咄嗟に前に出た。
防壁魔法を展開し、身を挺して味方を守ろうとする。
だが、あの出力の砲撃をまともに受ければ、さすがの魔王でもただでは済まない。
砲口が眩く輝き、破壊の光が放たれようとした、その時。
「させないよッ」
上空から金色の流星が降ってきた。
凄まじい衝撃と共に、魔導砲の砲身が真っ二つに叩き斬られた。
土煙が舞い上がる中、その中心に一人の戦士が立っていた。
「レ、レオ……」
ベリアルが目を疑うように名を呼ぶ。
煙が晴れると、そこには聖剣を構えた勇者レオの姿があった。
全身から神々しいまでの魔力を放ち、その瞳は鋭く敵を見据えている。
「遅くなったな、旦那」
レオはニカッと笑って振り返った。
「なっ、なぜここに。首輪はどうした」
「愛の力で外したんだよ。細かいことは気にするな」
レオは冗談めかして言ったが、その手は震えていなかった。
完全に覚醒した勇者の力が、戦場の空気を一変させる。
「勇者レオだ。生きていたぞ」
人間軍から動揺の声が上がる。
「レオ……。なぜ人間であるお前が、我らに味方する」
人間の指揮官が叫んだ。かつての戦友かもしれない男だ。
レオは剣先を突きつけ、凛とした声で宣言した。
「俺は正義の味方だ。だからこそ、一方的な虐殺を行おうとするお前たちを止める」
「貴様、魔王に魂を売ったか」
「売ったんじゃない。捧げたんだよ、この心も身体もな」
レオの言葉に、ベリアルが呆気に取られ、そして豪快に笑い出した。
「ハハハッ。よく言った。さすがは余の番だ」
ベリアルはレオの隣に並び立ち、その肩を抱いた。
身長差のある二人だが、その魂の大きさは対等だった。
「行くぞ、レオ。我らの愛の力、見せつけてやろうではないか」
「ああ。背中は預けたぜ、ベリアル」
「承知した。お前の背中は、余が守り抜く」
二人は同時に駆け出した。
魔王の圧倒的な破壊力と、勇者の神速の剣技。
二つが合わさった時、それはもはや災害レベルの嵐となった。
レオが敵陣を切り裂き道を作る。
そこにベリアルが極大魔法を叩き込む。
完璧な連携。言葉を交わさずとも、互いの動きが手に取るようにわかる。
魔力供給で繋がったパスが、戦闘においても驚異的なシナジーを生んでいたのだ。
人間軍は為す術もなく崩れ去っていく。
最強のカップルの誕生を、世界が目撃した瞬間だった。
「これぞ、愛の勝利というやつだな」
ベリアルが敵将を吹き飛ばしながら叫ぶ。
「恥ずかしいこと叫びながら戦うな」
レオがツッコミを入れつつ、襲い来る兵士を薙ぎ払う。
二人の戦いは、まるで舞踏のように美しく、そして鮮烈だった。
戦場という地獄の底で、二人の愛はより一層輝きを増していた。
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