第8話「魂の結合」

 大浴場での騒動を終え、二人は寝室に戻っていた。

 夜の帳が下り、部屋は暖炉の明かりだけに照らされている。

 レオは湯上がりの火照った身体をシーツに預け、少し緊張していた。

 毎晩の儀式が始まる。

 最初は屈辱と恐怖しかなかったが、今ではその時間が待ち遠しいとすら感じ始めている自分がいた。

 魔力供給。

 それは生存のために必要な行為だ。だが、それ以上の意味を持ち始めていることを、レオは否定できなくなっていた。


 「レオ、こっちへ来い」


 ベリアルがベッドの中央で手招きをする。

 レオは小さく頷き、おずおずとその懐へ潜り込んだ。

 巨大な腕がすぐにレオを抱き締める。

 石鹸の香りと、ベリアル自身の濃厚なフェロモンが混ざり合い、レオの脳髄を甘く痺れさせる。


 「今日はよく動いたな。魔力が減っているぞ」


 ベリアルがレオのうなじに鼻を寄せ、深く息を吸い込む。


 「……ああ。だから、補充してくれ」


 レオが上目遣いでねだると、ベリアルの身体が瞬時に反応するのがわかった。

 下腹部に当たる硬くて熱い質量に、レオの身体も呼応して疼き始める。


 「貪欲な子だ。いいだろう、望み通りにしてやる」


 ベリアルはレオの浴衣の帯を解き、肌を露わにした。

 鍛え上げられた褐色の肌に、暖炉の光が陰影を作る。その美しい肢体を、魔王はまるで至宝を扱うように愛でる。


 「ベリ、アル……んっ……」


 キスが落ちるたびに、レオの口から吐息が漏れる。

 今夜のベリアルは、いつにも増して情熱的だった。

 前戯もそこそこに、レオの両足を大きく開かせ、自身の腰を割り込ませる。

 準備はできている。レオの身体は、すでに彼を受け入れる態勢を整えていた。


 「入れるぞ」


 低い警告と共に、灼熱の侵入が始まる。


 「あぁっ……」


 レオはシーツを鷲掴みにし、背中を反らせた。

 何度経験しても、この圧倒的な充填感には慣れない。

 内臓が押し上げられ、身体の芯まで魔王に侵食される感覚。

 だが、痛みのすぐ後に訪れるのは、波のような快楽と魔力の奔流だ。


 「はっ、ぁ……深い、深すぎる……」


 「お前のここが、余を吸い付くして離さないからだ」


 ベリアルが動き始める。

 重く、激しい動き。

 身体が重なるたびに、ベリアルの膨大な魔力がレオの体内に炸裂する。


 「あ、あ、すごい……。魔力が、溢れる……」


 レオは涙を流しながら、ベリアルの首に腕を回した。

 もっと欲しい。もっと奥まで。もっと強く。


 「レオ、余を見ろ」


 ベリアルが動きを止めずに命令する。

 レオは霞む視界で魔王の顔を見上げた。

 真紅の瞳が、情欲と愛情で燃えている。


 「余はお前を愛している」


 突然の告白に、レオの思考が停止した。


 「……え?」


 「敵として出会い、身体から始まった関係だが……今ではお前なしの夜など考えられない。お前の強さも、脆さも、全てが愛おしい」


 ベリアルはレオの額に優しく口づけ、それから一気に最奥を突き上げた。

 思考が白く弾け、レオの口から激しい絶頂の叫びが上がる。

 その瞬間、二人の魔力が完全に溶け合い、魂が一つになるような感覚を覚えた。

 それは、言葉では表現できないほどの幸福感と安心感だった。


***


 しばらくして、嵐が去った後のような静寂が戻ってきた。

 レオは荒い息を整えながら、ベリアルの胸に顔を埋めた。

 心臓の音が重なって聞こえる。


 「……ずるいぞ、そんなタイミングで言うなんて」


 「本心だ。迷惑だったか?」


 「……迷惑なもんか。俺だって……」


 レオは言葉を濁し、さらに強く抱きついた。

 言葉にするのはまだ恥ずかしい。でも、この行動が何よりの答えだ。

 ベリアルは全てを察したように、優しくレオの背中を撫で続けた。

 この夜、二人の関係は「主従」から「番」へと、明確に変わったのだった。

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