読み進めるうちに、静まり返った練習室の空気や、鍵盤に置いた指の震えまでもが伝わってくるような臨場感に圧倒されました。特に印象的なのは、正解を求める演奏」ら対話する演奏への変化です。雨上がりの空の色が変わっていくような繊細な筆致で描かれており、読み終えた後は一本の美しい映画を観たような充足感に包まれます。壁の向こう側にいた孤独なピアニストが、隣にいる誰かのために音を紡ぎ出す。挫折を経験し、何かを嫌いになりかけたことのあるすべての人に届いてほしい、最高にドラマチックで温かい芸術ストーリーです。
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