エピローグ

 魔王を倒して、はじめと結ばれて、なんだか全部を成し遂げたようなつもりでいたけど、これはあくまで誰も知らない魔法少女のハッピーエンド。世間的には、私はまだまだ道半ばの高校三年生だ。


「進路希望調査、期限は明日までだぞー」

「狼谷さん、八番テーブルの接客たのむわ」


 希望の進路に進むために勉強しなきゃいけないし、お金を稼ぐためにバイトもしなくちゃいけない。大きなことを成し遂げたとしても、私の物語にはまだまだ続きがあるのだ。


 ……なーんて。


「いちか! 今日は卓球で勝負しよ!」


 目をキラキラと輝かせたはじめの宣戦布告が、私の心に火をくべる。はじめがいる限り、私に燃え尽きている暇なんてない。はじめの存在が私の物語に絶えず輝きをくれるんだ。


「……ねぇいちか、手繋いでいい?」

「いいわよ」

「やった」


 体育館への移動中、はじめはあたりを見渡して誰もいないことを確認した後、私の手を取った。


「みんながいても気にしなくていいのに」

「みんなに秘密で付き合ってるって、青春っぽくていいじゃん」

「そういうもの?」

「そーゆーものなのです」


 はじめの温度を感じながら、彼女の言う青春の風を感じる。確かにたくさんの人がいる学校での逢瀬は刺激的だ。みんなに慕われる生徒会長でも、先生が誇れる優等生でもない。ただの狼谷一花として最愛の人の隣に居られる。そんな瞬間が、たまらなく愛おしい。


「はじめ、大好き」


 青春の風に背中を押され、はじめの頬にキスをする。するとはじめは一気に朱色に染まり、不意打ちを訴えるような視線で私を見つめた。


「も、もう。誰かが見てたらどーするの」

「いいじゃない。青春っぽくて」


 はじめのこういう姿を見ると、ずっと私に好き好きと言い続けていた理由がなんとなくわかる気がする。好きと伝えると胸がポカポカする。その言葉に愛する人が応えてくれると、飛び上がりそうなほど嬉しくなる。幸せと幸せが共鳴して、私の一番がキラキラと輝くのだ。


 どんなに大きなことを成し遂げても、生きている限り物語は続く。けれど、その物語に退屈な瞬間なんてない。この幸せを、私の一番を守るために私は強くなり続ける。私は今も昔もこの先も、一番のために戦い続けるのだ。


「おい一花! 大変だ!」


 後ろからトラ子の声が聞こえてきて、はじめと揃ってびくりと肩を震わせる。トラ子とすずめは私たちが付き合っていることを知っているけど、キスの瞬間を見られるのは恥ずかしすぎる。ただ、振り返った先に居た二人の焦った顔を見るに、キスの瞬間は見られてなさそうだ。


「緊急事態。上方注意」

「上?」


 すずめに促されて空を見ると、青い空に虹色の亀裂が走っていた。魔界域出現の前兆。まったく、折角はじめといちゃついていたというのに。空気の読めない連中だ。


「結構大きいわね。あのサイズは久々じゃないかしら」

「へーきへーき! 二人なら無敵だもん!」


 はじめは慣れた手つきでステッキ取り出す。私も負ける心配なんて全くしていないけど、はじめの隣なら僅かな不安も入り込む余地なんてない。だって、私たちは魔王だって倒したんだから。


「おいおい、私らも忘れんなって」

「不服。私たちも魔法少女」


 二人という言葉にトラ子とすずめが抗議する。確かに、ずっと一緒に戦ってきた二人を仲間外れにするわけにはいかないな。魔法少女としても、友人としても、二人はいつも私達を支えてくれた。でも、無敵の上っていったい何だろう。


「じゃあ、四人そろって最強だ!」

「よし、それでいくか!」

「名案、承認」


 私の疑問をはじめが勢いで解決する。無敵の上が最強とは限らないけれど、トラ子とすずめも気に入ったのならそれでいいか。


「はいはい、細かいことはいいから、さっさとやるわよ」


 四人で並んだ瞬間、空の亀裂が一気に広がって魔界域が出現する。虹色の空と黒の景色。そして黒い巨大なドラゴン。魔王が居なくなってもシャドウが消えることはない。まだまだ私達は世界を守る魔法少女だ。


『フェアリーチェンジ!』


 これから先の未来でどんな困難が待っていようと、私は必ず乗り越える。強くなり続けて、一番であり続けるんだ。


「行こう! いちか!」


 私の一番を奪い去っていった、笑顔が眩しい天才の隣に居たいから。

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天才美少女に私の一番をぜんぶ奪われたんですけど!! SEN @arurun115

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