第4話 馬の尻尾亭

 馬を降りて徒歩で町に向かうブラッド。この町には一週間に一度程度の頻度で通っていた。薬草から作った薬を売って、食料品に変えたり日用品を買ったりしているからである。宿に泊まったり酒場に行く事はほとんどなかったが、場所はわかっていた。ブラッドは繁華街を歩きながら、小さめの酒場の扉をくぐる。「馬の尻尾亭」と呼ばれるその酒場は、建物はそれほど大きくないが階上を宿屋として商売をしている。誘拐犯の気持ちを考えたら、あまり目立たない宿に泊まるのではないかと考えた。


「マスターお久しぶり」


「お、ブラッドさん。こんばんは。今日は何か飲むかい?」


「エールをお願いします。」


出されたエールを軽く口に含み、マスターへ微笑みかける。


「今日は賑わってるようですね。」


「今日もだろ、今日も!」ガハハと笑うマスター。禿げあがった天辺がキラッと光る。


「ブラッドさん今日は泊って行くかい?」


「私は良いです。飲んだら帰りますよ」


「夜は魔物が出るかもよ?今日は新月だから足元見えないし。泊って行きなよ。」


 ブラッドはマスターと会話しながら奥のテーブルをちら見する。冒険者風の5人組が料理をつついている。小声でしゃべっており会話は聞こえない。しかし、その一人は眼帯をしている。マリアから聞いた特徴と一致する。そのうち一人が料理を小皿に分けて扉を出て行く。


「マスターごちそうさま。また来ますね。」


ブラッドは銅貨をカウンターに置いて立ち上がる。


(ブルーさんは別な場所に監禁されているのか?)


席をたつと馬の尻尾亭の外に出る。


(さっきの人はどこへ・・・?)


 通りを見回す。料理を持った女は建物を回って裏手の方に行く。そのまま宿併設の馬小屋の中へ入っていく。


(あそこが怪しいな)


ブラッドがそう思った瞬間、後ろから突然声をかけられた。


「おい、さっきから俺たちを見てなかったか?」


驚いて振り向くと、そこには先ほどの隻眼の男が立っていた。

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