第8話 また会えたなら、〜礼里彩波の物語〜
泣き顔のまま、コンビニに行ってデジカメを取り出す。無理を言って、デジカメの写真を印刷してもらい、それを握って部屋に戻る。手帳をバックから出して、急いで書き込む。後数刻の命。やるべきことをやらないと。
8/15⑪蒼夜と別れ。ごめんね、明日の見送り行けなくてほんとにごめん。おばあちゃんとお姉ちゃんには他の私が会ってくれるから、私は蒼夜だけでいいって思ってた。でも、ほんとにごめんなさい。お願いします。12番目の私。海を越えて東京に行って。開成第1高校の1年3組の岸本蒼夜に、私の代わりに会いに行ってください。多分、あなたも彼を好きになる。だって私なんだもん。
そう書いて写真を張る。手帳から空白の1ページをちぎって、蒼夜に手紙を書く。一か八か。最後の日に親戚の家のポストを見るかなんて分からない。てか多分見ないけど、もし奇跡的見たなら。そう思って、謝罪と、単純な言葉で好きという思いを告げる。
蒼夜のおかげで幸せな1ヶ月だった。16年の人生の何十倍も。おばあちゃん、お姉ちゃん、蒼陽姉に会えなかったこと、そんなこといつの間にかどうでも良くなってた。
私は気づいてなかった。そうこうしている間に時計の針は0時を指していたこと。これに気づいて日記に書けば次の私に繋がっていたこと。でも必死だった。
ノートをもう1枚ちぎって封筒を作ろうとしたけど上手くいかない。部屋を飛び出しコンビニで封筒を買う。岸本蒼夜の名前、礼里彩波の名前を入れて封をする。コンビニから蒼夜の家までは歩くには少し遠い。息を切らしながら走る。間に合えと願い続ける。
ハアハア。間に合った。ポストに手紙を入れる。消えるってどう消えるか分からないけど、文字通り消えるなら見られる訳にはいかないから、部屋に戻ろうと思ったのに、柄にもなく海が見たくなって、あの海岸に向かう。
なんだか空が明るいような。そう思った直後だ。太陽の陽が海から少し差し込む。
消えてない?あ、いや違う。夜明けの空とその色に染まる波に足を進める。少しずつ増える太陽の陽に包まれた体が暖かく柔らかく感覚を無くしてくのだけが分かっている。
夜明けの光はこんなに暖かいんだ、蒼夜を思い出す。
蒼夜大好きだよ。
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