第2話

 小学三年生の僕には、人には見えないものが見えていた。

 

 そいつらは、手洗い場の下、教室の後ろにいた。

 特に喋ることもなく、宙を見ていたり、何かぶつぶつ呟いているものもいた。

 なるべく目を合わさないように、見えてないふりをして過ごしていた。


 登下校で必ず通る神社があった。

 百段ほどの階段が続く古い神社だ。


 ある日の帰り道、友達と別れ、一人で家まで帰っていた。

 その時、神社の入り口の鳥居に人影が見えた。

 

 目を凝らすと、六歳ぐらいの小さな男の子が鳥居の前に立っている。

 不思議に思って眺めていると、それはすぐに人じゃないものだとわかった。


 男の子は俯き、表情は見えなかった。

 僕は走って家に帰った。

 

 それから、その男の子は毎日そこに立っていた。

 身動き一つせず、俯き加減で立っている。


 しばらくすると、そこに立っていることが当たり前に感じられるようになっていた。


 ある日の下校時に、その男の子に近寄ってみた。

 遠くからはわからなかったが、口をぱくぱくしているのがわかった。

 男の子に耳を傾けてみると、微かに声が聞こえてきた。


「……ヨンロク、ダメ」

 

 その声を聞いた瞬間、背中に冷たいものが走った気がして、すぐさま逃げ出した。

 何度か後ろを確認しながら、止まることなく家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る