第3話
翌日の帰り道、友達と別れ、いつもの曲がり角まで来た。
この先に神社がある。
昨日のことを思い出し、少し足がすくんだ。
回り道をして帰ろうとも思ったが、かなり時間がかかる。
僕は思い切って曲がり角を曲がった。
やっぱり、あの男の子はいた。
俯き加減で、口を動かしている。
ただ、昨日近づいたこともあってなのか、あの時ほどの恐怖心はなくなっていた。
僕は、また恐る恐るその子の側まで歩いて行った。
やはり、あの声がまた聞こえてくる。
「…ヨンロク、ダメ」
「…ヨンロク、ダメ」
どうやら、ずっと呟いているようだ。
僕は思い切って、その子に尋ねてみた。
「ヨンロクって何?」
一瞬、その男の子の口が止まった。
しかし、しばらくすると、口が動き出す。
「…ヨンロク、ダメ」
「…ヨンロク、ダメ」
どうやら答えてはくれないらしい。
「じゃあ、名前は?名前はあるの?」
もう一度、その男の子に尋ねてみる。
すると、男の子は口を動かすのをやめた。
そして、少しだけ顔を持ち上げる。
その動作に驚いて、後ずさりした。
ただ、男の子は大きく動くわけではなく、そのまま口を動かした。
口の形を見ると、どうやら「ヨンロク、ダメ」とは違うことを言っているようだった。
少し怯んだが、男の子の声に耳をすました。
「…ウ……タ」
語尾が微かに聞き取れた。
僕はさらに近づき、耳を傾ける。
「ショ……ウタ」
「あ、名前……。ショウタっていうんだ」
そう言ったあと、そのショウタは、また俯き、例の言葉を呟き出す。
僕は、その後もいくつか質問してみたが、それ以外の答えは帰ってこなかった。
話しかけている間、後ろから夕陽がさしてきて、どんどん僕の背中を包んでいった。
「もう陽が暮れそうだ。ショウタ、僕は帰るね。またね」
そう言って、神社を後にする。
振り返ると、ショウタは口をぱくぱくさせたまま、鳥居の前に佇んでいた。
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