第16話 6階層の罠 〜闇に潜む影〜

「配信開始!今日は黒曜の塔6階層に挑戦します!」


 俺の配信画面には、既に5万人の視聴者が集まっていた。王都に来てから視聴者数は右肩上がりだ。


『田中さんキター!』

『待ってました!!』

『昨日の5階層突破、熱かった』

『今日も鑑定無双見せてくれ』


「みんな、ありがとう。今日はミラとの特別コラボ配信だ」


 隣には、配信界のアイドル・ミラがいた。彼女の金髪が松明の光に輝いている。


「みんな〜!ミラだよ〜!今日もタナカさんの隣にいれて幸せ〜!」


『ミラちゃん可愛い!』

『この二人の組み合わせ最高すぎる』

『付き合ってないの???』


「さて、6階層か。【鑑定】」


 俺は階層全体をスキャンする。しかし、おかしい。


「……罠が多すぎる」


 俺の言葉に、コメント欄が静まる。


「通常の10倍以上だ。しかも、明らかに人為的な配置だ」


「え、どういうこと?」ミラが不安そうに聞く。


「誰かが、俺たちをここで葬ろうとしている」


 その時だった。


 ガコン——。


 突然、床が抜けた。


「きゃああああ!」


「ミラ!」


 俺は咄嗟にミラの手を掴む。だが、落下の勢いは止まらない。


 二人で闇の中へと落ちていく。


『えええええ!?』

『何が起きた!?』

『田中さん!!』

『ミラちゃん大丈夫!?』


 数秒間の落下の後、俺たちは冷たい水面に叩きつけられた。


「げほっ、げほっ……ミラ、大丈夫か」


「う、うん……タナカさん、ここ……」


 辺りを見回す。地下水路のような場所だった。天井からは水滴が滴り落ち、微かな光が差し込んでいる。


「【鑑定】——まずい。ここは塔の隠しエリアだ。出口がない」


 配信はまだ続いている。だが、電波状況が悪い。


「みんな、聞こえるか。俺たちは罠にはまった。誰かが仕組んだ……」


 その時、水路の奥から足音が聞こえた。


「ふふ、やっと来たね。【無名の配信者】さん」


 闇の中から現れたのは、黒いローブの男だった。


「お前は……」


「自己紹介が遅れたね。僕は『シャドウ』。配信ギルドの、裏の処理係さ」


 配信ギルドの名前に、俺は目を見開く。昨日の刺客は、ギルドの差し金だったのか。


「新人のくせに、王都の配信ランキングを荒らされると困るんだよね。だから……消えてもらう」


 シャドウが手を振ると、水路の奥から無数の魔物が現れた。


「ミラ、下がれ」


「で、でも!」


「俺を信じろ」


 俺は剣を構える。数は多い。だが——


「【鑑定】——全部見えている」


 魔物の弱点、シャドウの動き、水流の変化。全てが俺の目には丸見えだ。


「いくぞ」


 俺は魔物の群れへと飛び込んだ。

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