第15話 王女の秘密 〜シャルロットとの出会い〜

 5階層のボスを倒し、俺たちは6階層への階段を上がった。


 アリアは約束通り、5階層で別れた。

「また会おうね、タナカ」と言い残して。


「ふう、やっと静かになりましたね」


 ミラが安堵の溜息をつく。


「アリアさん、悪い人じゃないと思いますけど……」


「リーナさんは優しいですね。私はちょっと苦手です」


 二人の会話を聞きながら、俺は6階層を進んでいた。


 その時だった。


「きゃっ!」


 前方から、悲鳴が聞こえた。

 女性の声だ。


「行くぞ!」


 俺たちは声のする方へ走った。


 そこには、ローブを着た少女がいた。

 金髪を三つ編みにした、17歳くらいの女の子。

 彼女の前には、巨大な蜘蛛型のモンスターがいた。


「【鑑定】」


【デスタランチュラ】

弱点:腹部の中央(心臓)、複眼の一つ(左から三番目)

攻撃パターン:毒糸射出(範囲攻撃)、牙攻撃、飛びかかり

特記事項:毒は麻痺効果あり


 少女を助けなければ。


「ミラ、風魔法で蜘蛛の注意を引け! リーナは少女の保護!」


「了解!」

「はい!」


「『ウィンドカッター』!」


 ミラの魔法が蜘蛛に命中。

 蜘蛛が俺たちの方を向いた。


 その隙に、リーナが少女を庇う位置に移動する。


「大丈夫ですか!?」


「は、はい……!」


 俺は蜘蛛に向かって突進した。

 弱点は腹部の中央。


 蜘蛛が牙を振りかざす。

 予備動作を見切り、横に跳ぶ。


 そして、腹部に剣を突き立てた。


 蜘蛛が断末魔の叫びを上げ、崩れ落ちる。


「……終わりだ」


『さすがタナカさん!』

『一撃で仕留めた!』

『あの女の子誰?』


 配信を見ている視聴者たちが騒いでいる。


 俺は少女の元へ歩み寄った。


「怪我はないか?」


「はい、おかげさまで……。ありがとうございます」


 少女が顔を上げる。

 その瞬間、俺は違和感を覚えた。


 この子、どこかで見たことがある気がする。


「【鑑定】」


 俺は反射的にスキルを発動してしまった。


【シャルロット・フォン・レイゼンブルク】

身分:王女(第三王女)、王都ダンジョン管理者

年齢:17歳

趣味:配信視聴(特にタナカの配信のファン)

秘密:お忍びでダンジョンに来ている。護衛なし

性格:好奇心旺盛、世間知らず、純粋


 王女!?

 しかも、俺の配信のファン!?


「あ、あの……どうかしましたか?」


 シャルロットが不安そうに俺を見る。


「いや……。一人でダンジョンに来るのは危険だぞ。護衛はどうした」


「え、えっと……その……」


 シャルロットがしどろもどろになる。


 お忍びで来ているから、護衛がいないのか。


「まあいい。俺たちと一緒に行くか? 途中まで送る」


「いいんですか!?」


 シャルロットの目が輝いた。


「あ、あの、お名前を聞いてもいいですか?」


「タナカだ。配信者の」


「タナカ……! やっぱり! 私、あなたの配信のファンなんです!」


 やはり知っていたか。


「いつも見てます! 鑑定スキルの解説がわかりやすくて、まるで自分がダンジョンを冒険しているような気持ちになれるんです!」


 シャルロットが興奮気味に話す。

 どこかフィーネと似ている。


「……ありがとう。じゃあ、行くか」


「はい!」


 こうして、俺たちのパーティに王女が加わった。


 もちろん、彼女が王女だということは、ミラとリーナには伏せておいた。

 配信でも「シャル」という偽名で紹介した。


『シャルちゃん可愛い!』

『タナカさん、また女の子増えたwww』

『ハーレムパーティすぎる』


 コメント欄がまた盛り上がっている。


「タナカさん、この先に『封印の間』への入り口があるんです」


 シャルロットが小声で言った。


「封印の間?」


「はい。ダンジョンの最深部にある、古代文明の遺産が眠る場所です。私、そこに行きたくて……」


 古代文明の遺産。

 【鑑定】で見た情報と一致する。


「なぜそこに行きたい?」


「……秘密です。でも、いつかお話しします」


 シャルロットは微笑んだ。

 何か事情がありそうだ。


「わかった。とりあえず、今は攻略を続けよう」


「はい!」


 俺たちは6階層の奥へと進んでいった。


 王女との出会い。

 これが、後に大きな意味を持つことになるとは、この時の俺は知らなかった。

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