第13話 ランキング1位 〜剣聖レオンとの邂逅〜

 地下への階段を降りていく。

 薄暗い通路が続き、やがて広い空間に出た。


 訓練場だ。

 石畳の床に、武器を収めた棚が並んでいる。

 そして、その中央に一人の男が立っていた。


 金髪碧眼。端正な顔立ち。

 白いマントを羽織り、腰には細身の剣を佩いている。


 俺は【鑑定】を発動した。


【レオン・ヴァルトシュタイン】

称号:剣聖、配信王、王国最強の剣士

年齢:24歳

強さ:S級冒険者最上位

弱点:左肩に古傷(3年前の魔獣戦で負傷、完治していない)

性格分析:プライドが高いが、根は真面目で正義感が強い

     弟を魔物に殺された過去があり、強さへの執着が異常

隠しステータス:孤独を感じている。本当の友人がいない

備考:配信ギルド暗部の行動は把握しているが、直接指示はしていない


 なるほど。

 暗部の行動は知っていたが、指示はしていない。

 つまり、黙認していたということか。


「来たか、タナカ」


 レオンが俺を見据える。

 その目には、明確な敵意があった。


「ああ。呼ばれたから来た」


「単刀直入に言う。お前が気に入らない」


「……理由を聞いてもいいか」


「お前は急に現れて、あっという間にランキングを駆け上がった。まるで、この世界のルールを無視しているかのようにな」


 レオンの声には、苛立ちが滲んでいた。


「俺は10年かけてこの地位を築いた。血を吐くような修練を重ね、命を懸けた戦いを繰り返してきた。それを、お前は数ヶ月で追い上げてきている」


「……」


「お前の【鑑定】は、確かにチートだ。だが、それだけで上に立てると思うな」


 レオンが一歩、前に出る。


「俺と戦え、タナカ。ここで、お前の実力を見せてもらう」


「断ったら?」


「王都ダンジョンの入場許可を取り消す。俺にはその権限がある」


 脅しか。

 だが、レオンの目は本気だった。


「……いいだろう。ただし、条件がある」


「言ってみろ」


「これを配信させてくれ」


 レオンの目が見開かれた。


「配信だと?」


「ああ。俺とお前の戦いを、世界中に見せる。それでいいか?」


 沈黙が流れる。

 レオンは俺をじっと見つめていた。


 やがて、彼は薄く笑った。


「面白い。いいだろう、配信しろ。俺の強さを、世界に見せつけてやる」


「……感謝する」


 俺は配信の魔道具を起動した。


『配信を開始しました。現在の視聴者数:0』


 だが、すぐに視聴者が集まり始める。


『タナカさんの配信だ!』

『え、レオン様がいる!?』

『タナカvsレオン!? マジ!?』


『視聴者数:5,000突破!』


 あっという間に視聴者が増えていく。


「さて、始めるか」


 レオンが剣を抜く。

 白銀の刃が、訓練場の明かりを反射して輝いた。


「ルールは簡単だ。どちらかが戦闘不能になるか、降参するまで」


「了解だ」


 俺も剣を構える。

 【鑑定】でレオンの情報を再確認する。


 弱点は左肩の古傷。

 だが、それを狙うのは難しいだろう。相手はS級冒険者最上位。俺より遥かに強い。


「行くぞ」


 レオンが踏み込んだ。

 その速度は、【鑑定】でも追いきれないほどだった。


 ギィン!


 辛うじて剣で受ける。

 だが、衝撃で体が吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」


『タナカさん!?』

『レオン様、速すぎる!』

『これがランキング1位の実力か……』


「どうした、その程度か」


 レオンが追撃してくる。

 連続斬り。一撃一撃が重く、速い。


 俺は必死に防御するが、押されていく。


(これが、王国最強の剣士……!)


 【鑑定】で攻撃パターンは見えている。

 だが、見えても体が追いつかない。


「終わりだ」


 レオンの剣が、俺の首筋に迫る。


 その瞬間、俺は賭けに出た。


「【鑑定・完全解析】!」


 視界が変わった。

 レオンの動きが、スローモーションのように見える。


 これは、【鑑定】の最高レベルの能力。

 対象の「次の行動」まで予測する。


 レオンの剣は、右から左へ薙ぐ。

 俺は体を沈め、その下をくぐり抜けた。


「なに!?」


 レオンの驚愕の声。

 俺はそのまま踏み込み、左肩に向けて剣を振るった。


 だが――


 ギィン!


 レオンは瞬時に体を捻り、俺の攻撃を弾いた。


「古傷を狙ったか。【鑑定】で見えたんだな」


「……ああ」


「だが、甘い。その程度の情報、俺自身が一番よく知っている」


 レオンが再び構える。

 その目には、先ほどまでの侮りが消えていた。


「認めよう、タナカ。お前は強い。だが、まだ俺には届かない」


「……そうかもしれない」


 俺は剣を下ろした。


「今日は、ここまでにしよう」


「降参か?」


「いや、延期だ。俺はまだ王都ダンジョンを攻略していない。その後に、改めて決着をつけたい」


 レオンは少し考え、頷いた。


「いいだろう。王都ダンジョンの10階層で待つ。一週間後だ。逃げるなよ」


「逃げない。必ず行く」


 俺たちは剣を納めた。


『視聴者数:50,000突破!』

『神配信だった……』

『タナカvsレオン、続きが楽しみ!』

『一週間後、絶対見る!』


 配信を終了する。

 レオンは背を向けて歩き出した。


「タナカ」


「なんだ」


「お前の【鑑定】、確かにチートだ。だが、それを使いこなすお前自身も、認めてやる」


 それだけ言って、レオンは去っていった。


 俺は一人、訓練場に残された。


「一週間か……」


 王都ダンジョン10階層。

 そこで、レオンとの決着をつける。


 俺は拳を握りしめた。

 負けるわけにはいかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る