第12話 王都到着 〜煌めく都と配信者たちの聖地〜

 五日目の朝、俺たちはついに王都に到着した。


「すごい……!」


 ミラが感嘆の声を上げる。


 目の前に広がるのは、白亜の城壁に囲まれた巨大な都市。

 中央には王城がそびえ立ち、その周囲を無数の建物が取り囲んでいる。


 そして、城壁の外側には――


「あれが、王都ダンジョン……」


 巨大な塔が天を突いていた。

 高さは100メートル以上。黒い石で作られた、不気味な建造物だ。


 俺は【鑑定】を発動した。


【王都ダンジョン「黒曜の塔」】

階層:地下50階、地上10階

難易度:最高難度(S級冒険者推奨)

特記事項:10階層ごとにボスが存在

     最上階には「封印の間」がある

     古代文明の遺産が眠っている


 古代文明の遺産。

 フィーネの母が持っていた『星の涙』と、何か関係があるのだろうか。


「セイイチさん、どうしました?」


「いや、何でもない。行くぞ」


 俺たちは城門をくぐり、王都に入った。


 ◇◇◇


 王都の中は、想像以上に賑わっていた。


 大通りには露店が並び、人々が行き交っている。

 冒険者らしき者も多い。皆、王都ダンジョンを目指しているのだろう。


「タナカさん、まずは宿を探しましょう」


「そうだな。それから、配信者ギルドに顔を出す」


 配信者ギルドの本部は王都にある。

 警戒は必要だが、情報収集のためにも一度は行っておきたい。


 宿を探して歩いていると、前方で騒ぎが起きていた。


「おい、どけよ! 俺たちは『紅蓮の剣』だぞ!」


 がたいのいい男が、一人の少女に絡んでいる。

 少女は赤い髪をポニーテールにまとめた、活発そうな女の子だ。


「知らないわよ、そんなパーティ。私に絡まないでくれる?」


「なんだと!? お前、俺たちを舐めてんのか!」


 男が少女の腕を掴む。

 少女は眉をひそめた。


「離しなさい。三秒以内に離さないと、痛い目に遭うわよ」


「はっ、女一人で何ができ――」


 次の瞬間、男は宙を舞っていた。


 少女が男の腕を取り、投げ飛ばしたのだ。

 鮮やかな合気道のような動き。


「言ったでしょ。痛い目に遭うって」


「こ、この野郎……!」


 男の仲間たちが武器を抜く。

 俺は思わず前に出ようとしたが、少女が手で制した。


「大丈夫、私一人で十分よ」


 少女は素手のまま、男たちに向かっていく。

 そして、あっという間に全員を叩きのめした。


「ふん、雑魚ね」


 少女は髪を払い、俺たちの方を向いた。


「見てたの? 助けようとしてくれた?」


「ああ、まあ」


「ふーん。あんた、見たことない顔ね。新参の冒険者?」


「配信者だ。タナカという」


 少女の目が一瞬、大きく見開かれた。


「タナカ……!? あの、最近話題の配信者?」


「知ってるのか?」


「知ってるも何も、私も配信者よ! アリア、ランキング5位の『闘姫アリア』!」


 ランキング5位。

 かなりの実力者だ。


「へえ、あんたがタナカか。配信見たことあるわ。鑑定スキル、チートすぎない?」


「よく言われる」


「ふふ、面白い人ね。ねえ、今から暇? お茶でもどう?」


「いいが……」


 俺が返事をする前に、ミラが割って入ってきた。


「あの、私たちは急いでいるので……」


「あら、あんたもいたの。ミラちゃんよね? ランキング3位の」


「はい、そうですけど……」


 二人の間に、微妙な空気が流れる。

 ライバル意識だろうか。


「まあいいわ。また会いましょ、タナカ。あんたのこと、気に入ったわ」


 アリアは手を振って去っていった。


「……なんだったんだ、あれは」


「タナカさん、あの人に気をつけてください。アリアさん、男好きで有名なんです」


「そ、そうなのか……」


 ミラがムスッとした顔をしている。

 リーナも何か言いたそうだ。


「とにかく、宿を探そう。話はそれからだ」


「「はい……」」


 俺たちは再び歩き始めた。


 王都での生活が、賑やかなものになりそうな予感がした。


 ◇◇◇


 宿を確保した後、俺たちは配信者ギルドの本部を訪れた。


 巨大な建物だ。

 玄関には「配信者ギルド本部」と書かれた看板が掲げられている。


 中に入ると、受付の女性が笑顔で迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。ご用件は?」


「登録の確認と、王都ダンジョンの入場許可申請だ」


「かしこまりました。お名前を」


「タナカ・セイイチ」


 受付の女性の目が、一瞬鋭くなった。

 だが、すぐに笑顔に戻る。


「タナカ様ですね。少々お待ちください」


 女性が奥に消える。

 俺は周囲を警戒しながら待った。


 しばらくして、女性が戻ってきた。


「お待たせしました。王都ダンジョンの入場許可、問題なく発行できます。それと……」


 女性が声を潜める。


「レオン様が、タナカ様にお会いしたいとのことです」


 レオン。

 ついに、会う時が来たか。


「……わかった。どこに行けばいい?」


「地下の訓練場でお待ちです。ご案内します」


 俺はミラとリーナに目配せした。


「二人は宿で待っていてくれ」


「で、でも……」


「大丈夫だ。レオンは暗殺なんて姑息な手は使わない。そういうタイプじゃない」


 【鑑定】で見た情報を信じるなら、レオンは傲慢だが卑怯ではない。


「……わかりました。気をつけてくださいね」


「ああ」


 俺は受付の女性について、地下へと向かった。


 配信者ランキング1位、剣聖レオン。

 いよいよ、対面の時だ。

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