第8話 フィーネの依頼 〜引きこもり公爵令嬢の願い〜
コラボ配信から数日後。
俺の元に、意外な依頼が舞い込んだ。
「ヴァンシュタイン公爵家から、お手紙です」
宿の主人が、豪華な封筒を持ってきた。
公爵家? この国の最高位の貴族だ。
封筒を開けると、丁寧な文字で書かれた手紙が入っていた。
『配信者タナカ様
突然のお手紙、失礼いたします。
私はヴァンシュタイン公爵家の息女、フィーネと申します。
実は、貴方様の配信を毎日欠かさず視聴しております。
その鮮やかなダンジョン攻略に、いつも感動しております。
つきましては、一つお願いがございます。
私のために、特定のダンジョンを攻略していただけないでしょうか。
報酬は、金貨1000枚をご用意しております。
詳細は、直接お会いしてお話ししたく存じます。
明日の正午、当家までお越しいただければ幸いです。
ヴァンシュタイン公爵家息女 フィーネ』
金貨1000枚。
今の俺の全財産の10倍以上だ。
正直、怪しい。
だが、公爵家の名前を騙るリスクは高い。本物の依頼の可能性が高いだろう。
翌日、俺はヴァンシュタイン公爵邸を訪れた。
門の前で名乗ると、すぐに中へ通された。
豪華な屋敷の中を歩き、一つの部屋の前で止まる。
「お嬢様、タナカ様がお見えです」
「入っていただいて」
扉が開く。
中は薄暗い部屋だった。カーテンが閉められ、わずかな光しか入っていない。
部屋の奥に、一人の少女がいた。
長い黒髪、白い肌、儚げな雰囲気。年齢は17、18歳くらいだろうか。
「初めまして、タナカ様。フィーネと申します」
「どうも。依頼の話を聞きに来ました」
「ええ、ありがとうございます。どうぞ、おかけになってください」
俺は椅子に座った。
フィーネは、じっと俺を見つめている。
「実は私、生まれつき体が弱くて……。外に出ることができないんです」
「それは、大変ですね」
「ええ。だから、貴方様の配信が私の唯一の楽しみなんです。まるで自分がダンジョンを冒険しているような気持ちになれるんです」
引きこもりの公爵令嬢。
配信が唯一の娯楽。
……なんだか、前世の自分を思い出す。
「それで、依頼というのは?」
「はい。『星降りの遺跡』というダンジョンがあるんです」
「知っています。封印されたダンジョンですね」
「ええ。でも、そこには私の母の形見があるんです」
フィーネの目が潤んだ。
「母は、私が5歳の時に亡くなりました。『星降りの遺跡』で、モンスターに襲われて……」
「……」
「母の持っていた『星の涙』というペンダント。それが、まだダンジョンの中にあるはずなんです。どうか、取り戻していただけませんか?」
形見のペンダント。
それを取り戻すための依頼か。
「封印されたダンジョンへの侵入は、違法では?」
「公爵家の権限で、一時的に封印を解除できます。1日だけですが……」
つまり、1日でダンジョンを攻略し、ペンダントを見つけ出せということか。
「【鑑定】で、ペンダントの位置はわかりますか?」
「おそらく。近くまで行けば」
俺は考える。
難易度は高いが、不可能ではない。
「わかりました。依頼を受けます」
「本当ですか!?」
フィーネの顔が輝いた。
さっきまでの儚げな雰囲気が嘘のように、目が生き生きとしている。
「ありがとうございます! タナカ様!」
「報酬は、成功報酬でいいですか?」
「もちろんです。失敗しても、手間賃として金貨100枚はお支払いします」
良心的な条件だ。
これなら、リスクを取る価値がある。
「それと……」
「はい?」
「もしよろしければ、配信していただけませんか? 私、タナカ様のダンジョン攻略を見るのが、本当に楽しみなんです」
配信の依頼。
これは、フィーネの本心だろう。
「わかりました。配信しながら攻略します」
「ありがとうございます!」
フィーネは心から喜んでいた。
引きこもりの公爵令嬢のために、封印されたダンジョンを攻略する。
なかなか面白い展開になってきた。
「では、明後日。封印解除の日に、お待ちしております」
「ええ。必ずペンダントを取り戻します」
俺は公爵邸を後にした。
次の配信は、特別なものになりそうだ。
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