第6話 ミラ登場 〜配信界のアイドル、ファン一号〜

 配信を始めて一ヶ月。

 俺の視聴者数は、平均で1万人を超えるようになっていた。


「今日も始めます。セイイチです」


『タナカさんきたー!』

『待ってました!』

『今日はどこのダンジョン?』


 コメントが一気に流れてくる。

 最初の頃は数人だったのに、今では開始直後から賑わっている。


「今日は上級ダンジョン『白銀の迷宮』に挑戦します」


『マジか!』

『あそこ、パーティでも難しいぞ』

『ソロで行くの?』


「ええ、ソロです。まあ、なんとかなるでしょう」


 根拠のない自信ではない。

 【鑑定】のレベルは10を超え、今では敵の行動パターンまで完全に把握できる。


 ダンジョンに入る。

 白い霜で覆われた迷宮。気温が低く、吐く息が白い。


「さて、最初のエンカウントですね。氷の狼が3体」


【氷狼】

弱点:腹部(心臓の位置が低い)、後ろ足の付け根

攻撃パターン:飛びかかり(予備動作0.4秒)、氷のブレス(予備動作1.2秒、射程5m)

連携行動:1体が囮になり、残り2体が側面から攻撃


「連携してきますが、パターンは決まっています」


 俺は淡々と狼を処理していく。

 飛びかかりを避け、腹部を一閃。3体を30秒で倒した。


『早すぎワロタ』

『上級ダンジョンの敵をこの速度で……』

『鑑定チートすぎない?』


 配信を続けていると、不思議なコメントが流れてきた。


『ミラちゃんが見てるってマジ?』

『ミラちゃんがファンだって言ってた!』

『配信界のアイドルがタナカのファン!?』


 ミラ?

 誰だろう、その名前には覚えがない。


 配信を終えて宿に戻ると、見慣れない少女が待っていた。


 銀髪のツインテール。大きな瞳。華奢な体つき。

 まるでアイドルのような容姿だ。


「あなたがタナカさんですね! 私、ミラです!」


「ああ、どうも……。ミラさん、ですか?」


「はい! 配信者のミラです! 視聴者数ランキング3位の!」


 3位。

 それはかなりの有名人だ。


「私、タナカさんの配信のファンなんです! 最初の配信から見てます!」


「それはどうも……」


「あの的確な解説! 淡々としてるのにカッコいい戦い方! 私、ずっと憧れてました!」


 すごいテンションだ。

 前世で言うところの、オタクがアイドルに会った時のような。


「それで、お願いがあるんです!」


「お願い?」


「コラボ配信しませんか!?」


「……コラボ?」


「はい! 私とタナカさんで一緒にダンジョンに潜るんです! 絶対盛り上がりますよ!」


 コラボ配信か。

 確かに、視聴者数は増えそうだ。


「別に構いませんが……俺、一人でダンジョン攻略するスタイルなので、合わないかもしれませんよ」


「大丈夫です! 私、サポートに回りますから! タナカさんの邪魔はしません!」


 目がキラキラしている。

 断りにくい雰囲気だ。


「……わかりました。一度だけ、試してみましょう」


「やったー! ありがとうございます!」


 ミラは飛び跳ねて喜んだ。


 正直、面倒事に巻き込まれた気がする。

 だが、配信者同士の繋がりも大切かもしれない。


 社畜時代、人脈の重要性は嫌というほど学んだ。

 この世界でも、それは変わらないだろう。


「じゃあ、明日の配信でコラボしましょう」


「はい! 楽しみにしてます!」


 ミラは満面の笑みで宿を出ていった。


 ……なんだか、賑やかになりそうだ。

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