第4話 バズる 〜配信者「タナカ」、話題沸騰〜

 初配信から一週間。

 俺の配信は予想以上の反響を呼んでいた。


「タナカの配信、見た?」

「マジでヤバいよな。弱点の位置まで見えるとか」

「攻略サイトより詳しいじゃん」


 街を歩くと、そんな会話が聞こえてくる。

 どうやら、「タナカ」という名前が冒険者の間で広まっているらしい。


 今日も配信の時間だ。

 俺は中級ダンジョン「赤鉄の坑道」の前に立っていた。


「はい、今日も配信始めます。セイイチです」


『配信を開始しました。現在の視聴者数:892』


 初日の7倍以上。

 成長が早すぎて、正直驚いている。


「今日は中級ダンジョンに挑戦します。『赤鉄の坑道』、行ってみましょう」


 ダンジョンに入る。

 赤茶けた岩肌が続く坑道。かつて鉱山として使われていた場所らしい。


「さっそくゴブリンがいますね。【鑑定】」


【ゴブリン戦士】

弱点:首の後ろ(脊髄)、左脇腹(心臓寄り)

攻撃パターン:突進斬り(予備動作0.3秒)、横薙ぎ(予備動作0.5秒)

特記事項:集団で行動。1体を倒すと残りが激昂化


「集団戦ですね。まず遠くの個体から各個撃破していきます」


 俺は静かに近づき、最後尾のゴブリンの首を一突き。

 声を上げる間もなく倒れる。


 残りの3体が気づく前に、2体目も仕留める。


「あと2体。激昂化しても、弱点は変わりません」


 激昂化したゴブリンが突っ込んでくる。

 予備動作を見切り、カウンターで心臓を貫く。


 最後の1体も、同様に処理。


『視聴者数:1,456』


 コメントが流れてくる。


『処理が的確すぎる』

『これ本当に一人でやってるの?』

『鑑定スキル欲しすぎる』


「次、奥に行きましょう。あ、ここ」


 俺は壁の一部を指さす。


「隠し通路があります。【鑑定】で見えました」


 壁を押すと、ガゴンと音がして通路が現れた。


「この先に……お、当たりですね。レア鉱石があります」


『マジかよ』

『隠し通路の鉱石とか、普通気づかないだろ』


 俺は淡々と攻略を続けた。

 罠を見破り、隠し部屋を発見し、ボスの弱点を解説して撃破する。


『配信終了。総視聴者数:5,847 応援:312』


 視聴者数が5,000を超えた。

 応援の魔力も、初日の6倍以上。


 配信を終えて宿に戻ると、見知らぬ人が待っていた。


「あなたが配信者のタナカさんですか?」


 小柄な男だ。商人風の服装をしている。


「ええ、そうですが」


「私、配信ギルドの者です。あなたの配信が話題になっていまして……ぜひ、うちと専属契約を結びませんか?」


 配信ギルド。

 この世界にも、そういう組織があるのか。


「専属契約のメリットは?」


「高級ダンジョンへの優先入場権、装備のサポート、そして固定報酬。もちろん、配信の自由は保証します」


 悪くない条件だ。

 だが、俺は首を振った。


「すみません、今はまだ自由にやりたいので」


「そうですか……。では、気が変わったらいつでもご連絡ください」


 男は名刺を残して去っていった。


 専属契約は魅力的だが、縛られるのは嫌だ。

 前世で散々会社に縛られた。今度は自分の意思で動きたい。


 それに、まだ試したいことがある。


 【鑑定】の真の力を、もっと追求したい。

 この能力がどこまで伸びるのか、見極めたい。


「さて、明日の配信の準備でもするか」


 俺は部屋に戻った。

 元社畜のダンジョン配信者、その名は着実に広まりつつあった。

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