第2話 真の力 〜鑑定、覚醒〜

 追放されてから三日。

 俺は街の外れにある、誰も寄り付かない低級ダンジョンに一人で潜っていた。


「【鑑定】」


 目の前のスライムを見る。


【スライム】

価値:核が10ブロン程度

備考:特になし


 相変わらずの情報量だ。

 だが、俺は諦めていなかった。


 前世の仕事で学んだことがある。

 どんなシステムにも、隠れた機能がある。マニュアルに載っていない、開発者も忘れているような機能が。


 俺は【鑑定】を使い続けた。

 石に、草に、モンスターに、壁に、空気に――ありとあらゆるものに。


 そして、気づいたことがある。


「……集中すると、見える情報が変わる?」


 スライムをじっと見つめ、【鑑定】を発動しながら深く集中する。

 すると――


【スライム(詳細)】

価値:核が10ブロン程度

種別:魔物/不定形

弱点:核(体の中心やや右寄り)

耐性:物理攻撃(斬撃以外)

攻撃パターン:体当たり、酸液

備考:火属性に弱い。核を破壊すれば即死


「……は?」


 情報量が桁違いに増えた。

 これだ。これが【鑑定】の真の力か。


 興奮を抑えながら、さらに集中度を上げてみる。


【スライム(完全解析)】

価値:核が10ブロン程度

真の価値:核に微量の魔力結晶が含まれる。精製すれば50ブロン相当

種別:魔物/不定形

弱点:核(体の中心から右に3センチ、深さ5センチの位置)

耐性:物理攻撃(斬撃以外)

攻撃パターン:体当たり(予備動作0.5秒)、酸液(射程2メートル、発射前に体が膨張)

行動原理:魔力を感知して襲撃。視覚なし

隠しドロップ:稀に「スライムの秘核」(確率0.1%)

備考:火属性に極めて弱い。体温36度以上の生物を優先的に狙う


「……なんだこれ」


 完全に攻略情報じゃないか。

 弱点の正確な位置、攻撃の予備動作、さらには隠しドロップまで。


 これが見えるなら――


「勝てる」


 俺は安物のナイフを構えた。

 スライムが体当たりの予備動作を始める。鑑定で見た通り、約0.5秒の溜めがある。


 その間に横に回り込み、体の右側にナイフを突き刺す。

 核の位置は、右に3センチ、深さ5センチ。


 ザクッ。


 手応えがあった。

 スライムがドロリと崩れ落ちる。


【経験値を獲得しました】

【スキル「鑑定」がLv.2になりました】


「レベル、上がった……!」


 上がらないんじゃなかった。

 真の使い方をしていなかっただけだ。


 俺は次々とスライムを狩り続けた。

 弱点を見切り、攻撃パターンを読み、一撃で仕留める。


 そして、ダンジョンの奥で。


「これは……」


 壁に埋め込まれた、古びた箱を見つけた。

 普通なら気づかないだろう。だが、俺の【鑑定】には見えた。


【隠し宝箱】

価値:中身による

中身:配信の魔道具、金貨50枚

罠:なし


「配信の魔道具……?」


 箱を開けると、手のひらサイズの水晶球が入っていた。


【配信の魔道具】

価値:希少(市場に流通していないため価格不明)

効果:使用者の視界と音声を、魔力を持つ者全員に配信できる

   視聴者は配信者に「応援」を送ることができる

   「応援」は魔力として配信者に還元される

制限:一日一回、最大3時間まで

備考:古代文明の遺産。現存数は極めて少ない


 配信……。

 動画配信のようなものか。


 それにしても、「魔力を持つ者全員に配信」とは。

 この世界の住人なら、ほぼ全員が見られるということか。


「……面白いかもしれない」


 俺は水晶球を握りしめた。


 追放された元社畜が、ダンジョン配信者になる。

 なかなか悪くないセカンドキャリアじゃないか。


 この時、俺はまだ知らなかった。

 この配信が、世界を揺るがすことになるとは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る