第2話
第1章 就職祝い
①冗談
親に、
「就職祝い、何がほしい? 何でもいいよ?」
と聞かれた。
ボクは冗談のつもりで、
『家がほしい』
と言ってしまった。
そういう冗談でも、
親はいつも笑って流してくれる。
だから、深く考えていなかった。
けれど、その時は違った。
親の表情が、はっきりと変わった。
「まといが働く会社の近くに、
ちょうどマンションが建つらしいんだ」
「そこを分譲で買ってあげるよ」
一瞬、言葉が出なかった。
「今から問い合わせしよう。
内見も行こうよ。
部屋、埋まっちゃうかもしれないし」
冗談なのか、本気なのか。
ボクには、分からなかった。
ただ一つ分かったのは、
さっきまでの空気が、
もう戻らないということだけだった。
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