援軍
◇………………………………………………………………………
そこからしばらく倒しては増援、倒しては増援が繰り返された。
時間が経つにつれ冒険者の数も増えてきたが、それでも魔物の増援の方が多く、討ち漏らしも増えてきた。モカ達をすり抜けた魔物達は、村の中へと散らばってゆく。
それに焦りが募るが、増え続ける魔物の対処に追われ、追いかけることなど出来はしない。村内にはまだまだ冒険者はいるはずなので、彼等に期待するしかなかった。
「くっ、いつまで続くのよっ!」
「わ、わたし達はまだ余裕はありますが、このままだと他の冒険者が持ちません!」
「ラテ、なんとかならない!?」
「もうちょっと堪えてください。そろそろ彼等の準備が整う頃だと思うのですが……。」
「彼等って!?」
斃しても斃しても減らない魔物に、流石のモカ達も僅かに疲労が見え始める。
無論、彼等は戦闘継続は可能だが、それ以外の冒険者達が厳しかった。すでに大きく息を切らしている者もおり、このままでは遠からず死人が出かねなかった。
何か、状況を変える一手が必要だった。
「――――お待たせしたっす。」
まるで流星の如く、無数の矢が降り注いだ。
「Gya!?」
「Gyuin!?」
「Gebu!?」
矢は次々と魔物を貫き、瞬く間に数を減らしてゆく。
魔物側に傾いていた天秤が一瞬にして冒険者側に大きく傾き、戦場に一時の猶予が生まれた。
「なに!?」
「あれは――――。」
矢の飛来した方を見ると、そこには十人ほどの冒険者の姿があった。
佇まいを見ただけで分かる。彼等は周囲にいる冒険者達とは格が違う。
クンストメル商会の冒険者達であった。
「すんませんっす。村人を避難させたりして時間がかかっちまいまして。」
その先頭に立っていたのはアルソン。
彼は弓を構えて、いつもの糸目で魔物達を睨みつけていた。
「貴方達、クンストメル商会の冒険者ね?」
「そうっすよ。君等は兄貴が雇った冒険者っすよね。」
勿論、マリエル達がグリムハットに雇われた場にこっそりと同席していたアルソンは彼女等のことを知っていたが、それをおくびにも出さずに問いかける。
「討ち漏らしが結構な数村の中に入っていったわ、それの対処は出来てる?」
「大丈夫っすよ。ここにいない冒険者に話を付けてきたっす。今のところ村人にも冒険者にも死人は出てないっすよ。」
「そう……よかった。じゃあ後は、この状況を打破しなきゃならないんだけど、何か案はあるかしら?」
「今村に攻めてきてるのは先遣隊みたいなもんっす。ボスを討伐しない限りは、事態は収束しないっす。」
「……なら、二手に分かれて片方が防衛、もう片方がボスの討伐に行くのはどう?」
「いや、想定以上に魔物の数が多いっす。一体一体は弱いといっても、これだけの数を相手にすると、どうしても手に余る部分が出てきかねないんで、ある程度減らさないと村人が危険っす。」
「このまま現状維持しかできないってこと?あんまり時間をかけてると、別の場所から魔物が村に入ってきかねないわよ?」
マリエルの言うことは正しい。
今はまだダンジョンの接触の初期段階なので、魔物の侵入も村の入り口からだけだが、時間が経てば外郭の崩壊が進み、あらゆるところから魔物が好き勝手に入ってくることになる。
「まぁ、この状況は自分らに責任があるっすからねぇ。
俺の切り札を切らせてもらうっす。」
そう言って、アルソンはマリエルに作戦を伝える。
それを聞いたマリエルは大いに顔を顰めるも、溜息と共にそれを了承するのだった。
◇………………………………………………………………………
「みんな聞いてほしいっす!」
冒険者達が魔物を斃し続けている最中、家屋の上に立ったアルソンが大きな声で語りかける。
「魔物が村に侵入している今、これ以上時間をかけるわけにはいかないっす。」
広場にいる冒険者達は、魔物と戦いながら、その声に耳を傾ける。
「だから、これから俺のルーンで魔物を一気にここに集めるっす。」
冒険者達が、ポカンとした表情を浮かべる。
瞬時に意味を理解できた者は少なかった。
「いや、その……?」
「今でも厳しいってのに、魔物を集める……?」
徐々に理解し始めた冒険者達は、その内容に顔を青ざめさせる。
実力の足りない彼等にしてみれば、それは処刑といっても過言ではなかった。
「これから今まで以上の魔物の大軍が押し寄せてくるわ!怪我をしている人は下がって村人達の護衛に回って頂戴!
戦闘のメインはクンストメル商会の冒険者が担当するから、無理しなくてもいいわ!」
そこにマリエルが救いの手を差し伸べる。
それは、プライドだけは一丁前の者が多い冒険者を下がらせる方便でもあった。
正直、これからの戦いに力不足の者を参加させてそのフォローをするくらいだったら、最初から下がってくれていた方が楽だったと言うのもある。
「わ、悪いな。」
「剣がちょっと欠けちまってよ。」
見た所、何処も怪我などしてなさそうな者達が走り去っていく。
残った者は村付き冒険者や、クンストメル商会の冒険者、モカ達を合わせても、三十人に満たなかった。
「それじゃ、始めて頂戴。」
「了解っす。」
陽気に答えたアルソンは、すっと力を抜きリラックスすると、己のルーンに意識を集中する。
彼の認識から周囲の喧騒が消え去ると同時に、腕に刻まれたルーンに淡い光が灯る。
そのまま彼は、世界に語り掛ける様に詠い出した。
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