長期戦
◇………………………………………………………………………
「はぁっ!」
「Gyain!?」
モカの剣が飛び掛かってきた狼型のも魔物を斬り伏せる。
先日戦ったトスタウルフとは違い普通の野犬サイズ、モカ達にとっては大した脅威ではない。ラテもサノン達もサクサクと仕留めて数を減らしている。
しかし、自分達にとっては脅威足り得なくとも、村人達にとっては魔物は恐るべき相手だ。
「ひぃっ!?」
「――――せいっ!」
今まさに男性に襲い掛かろうとしていた魔物を斬り捨てる。
「あ、ありがとう。」
「ここは危険です。早く非難してください。」
「わ、わかった。」
よろよろと覚束ない足取りで走り去る背中を見送ることなく、次の敵に向かって走り出す。
一体二体と続け様に斬ってゆくも、モカの顔には焦燥が浮かぶ。
「減らない……っ!」
モカ達や村にいた冒険者達が倒した魔物の総数は間違いなく十や二十では利かない筈なのに、魔物の勢いが一向に衰えない。倒した端から次々と増援が追加されていっているようだ。
終わりの見えない戦いに、一筋の汗が頬を伝った。
◇………………………………………………………………………
「はぁ!とう!せぇい!!」
モカが奮戦する近くで、サノンもまた大立ち回りを演じていた。
拳が頭を砕き、蹴りが背骨を圧し折る。
走っては殴る蹴るを繰り返し、着々と魔物を斃していく。
「――――ふぅ。」
既に個人で十を超える魔物を屠ってはいるが、体力的にはまだまだ余裕はあった。しかし、いくらルーンの恩恵で常人とはかけ離れた身体能力を持っているとは言っても、人間である以上常に気を張り続けることは出来ない。
魔物を殴り飛ばしたサノンが一呼吸入れる。ほんの僅かに集中力が途切れたその瞬間――――。
「サノンッ!!」
「――――っ!?」
マリエルの声に反応して咄嗟に振り返る。
見えたのは、乱雑に並んだ牙の列だった。
(マズッ――――!?)
奇襲に気が付くのが遅れた。
躱すのは不可能。
マリエルの援護も間に合いそうにない。
「くぅっ!」
ならばせめて、ダメージを最小限に抑えようと、利き腕ではない方の腕を突き出し盾とする。
この程度の相手であれば致命傷になることはないだろう。
ぐっと力を込めて牙を迎える。
「――――させませんよ。」
「Gyabu!?」
しかし、その牙がサノンに届くことはなかった。
ラテの投擲した短剣が魔物の頭を穿ち、絶命せしめていたのだ。
「ありがと!」
「いえいえ。」
二パッと笑顔で礼を告げると、ラテも笑顔で返す。
「そーれっ。」
ラテは笑みを浮かべたまま短剣が繋がった鎖を引っ張る。
すると、短剣が突き刺さったままの魔物の死体も、それにつられて浮かび上がった。
魔物がくっ付いたまま鎖をビュンビュンと振り回すラテ。
それはさながらチェーンハンマーの様相だ。
「わ~お、パワフルゥ!」
並外れた巨体という訳ではないが、それでも大型犬程度はある魔物を軽々と振り回すラテはその磨き上げられたルーンにより、モカと同様、見た目からは推し量ることの出来ない怪力を有していた。
「Gya!?」
「Gabyu!?」
「Gibi!?」
振り回していた魔物の身体を武器として用い、周囲の魔物に次々と叩きつけて行く。
その即席武器は、鎖の長さと、魔物の重さ、そして遠心力も合わさって中々の威力となって魔物の息の根を止めていった。
「うん。なかなかいいですね。」
「Grr……。」
攻撃範囲外にいた魔物達は怯えたように後退る。その目には、ハッキリと恐怖が浮かんでいた。
次々と打ち取られていく仲間も勿論だが、何よりも、武器として使用された仲間の死骸が、打ち付けられる度に折れ、歪み、拉げていく様が彼等の恐怖を大いに煽った。
余りの凄惨さに、周囲の魔物の動きが制止する。
「とんでもないわね。」
「モ、モカ君にも負けないくらいの力持ちですね。」
マリエルとポムニットもまた、その凄まじい光景に一瞬攻撃する手が止まる。
「しっかし、次から次へとどんだけ湧いてくんのよ……!」
「ちょ、長期に渡って成長してきたダンジョンの規模から考えると、まだまだ続くかと。」
「うんざりするわ。」
スタミナはまだまだ問題ないが、こうも延々と魔物が湧いてくるとなると溜息を吐きたくなる。
「ま、まさか魔物の行動がこんなに早いなんて……。」
「魔物といっても動物だから、人間みたく深く考えたりしない分、行動も速いんじゃないかしらね。」
「で、でもこれだけ魔物多いとなると、他のところにも侵入している可能性があるんじゃ……。」
「冒険者はそれなりにいるから今のところ大丈夫だと思うけど、このまま増え続けると危ないわね。」
愚痴も様なものを溢しながら矢や魔法を放っていると――――。
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